少女と、ミッガ王国から帰還した人々 2
「ヒックド様は王になっていました。あの方はやはり……獣人たちに対して思う所が強かったのでしょう。反乱を起こして、王になっていました」
戻ってきた人達は、私たちに話があるのだと言って、そんな報告をした。
真っ先に言われた言葉に、私が驚いたのも当然であると言えるだろう。
あの時の王子様が、王様になった。
それも詳しく聞いた所によると前王を……自分の父親を殺してつかみ取った王様の地位なんだという。
誰かを殺してつかみ取る何か――というのが私は想像が出来ない。だけれど、王様たちを殺して王様になったヒックド・ミッガという人に嫌な予感は感じない。
ガイアスたちは複雑な表情を浮かべている。アトスさんを奪った存在であり、ミッガ王国で異種族たちを助けようとしている人。
「王になったヒックド様は、武力行使で人々を奴隷に落とすという行為をやめています。そして不当な理由で奴隷に落ちたものたちを保護し、生活しやすいように動いています。実際にあの国で異種族が生きやすくはなっていると言えるでしょう」
獣人たちや民族たちを襲って奴隷に落とそうとしていたのはヒックド・ミッガという王子様――いや、もう王様になった人の国だ。それでもヒックド・ミッガが王様になったからこそ、今は逆の事をしている。
悪い人と良い人というくくりは難しい――と私は思った。
悪い人でも良い人になることがあって、一概に悪い人を悪い人とは言えないと思った。
「……捕らえられている獣人たちをこの場所に連れてくることも了承してくださいました。あの方は信用が出来ます。本人たちが了承をするのならば、此処に連れて行って構わないのだと」
その言葉に反応したのはニルシさんたち猫の獣人である。ニルシさんはずっと捕らえられ、大変な目にあっているであろう同じ村の人たちに会いたがっていた。
―—生きている人たちと、もう会えないかもしれないと思っていた人たちと出会うことが出来るかもしれない
それを感じてか、ニルシさんの表情が変わっている。
「……その言葉は信じていいものなのか。その王の言葉をそのまま受け取っていいのか」
「ニルシ……。そもそも俺達が此処にやってこれたのもその人のおかげなんだ。俺は信じるよ」
王国からここにやってきた猫の獣人は、ニルシさんの疑問にそう言った。
信じていいのか、本当にそれを言葉通りに受け取っていいのか。
私は信じてもいい、ううん、信じたいなと思った。嫌な予感がしないことも理由だけど、私よりも少しだけ年上なその人が、王にまでなって、それでいて獣人たちのために行動をしているというのを知ったら信じたいって思ったから。
それからミッガ王国の獣人たちを迎えに行くために、この村からミッガ王国に何人か向かうことになった。
誰がミッガ王国に向かうかに関しては、相談して決めることになるみたい。
ミッガ王国。
アトスさんを奪った国で、私たちがこの場所に来る原因になった国。
それでいて、獣人達を今は助けようとして、変わろうとしている国。
私は大きな街に行ったこともなく、ミッガ王国には足を踏み入れたこともない。
正直、危険が少ないというのならば行ってみたいなという思いが芽生えた。
この前遺跡に行ったからというのもあると思う。私は村の外に出て、ウェアと出会った。新しい場所に行けば、もっと新たな出会いがあるのではないか――何か、もっと知らない世界を知ることが出来るのではないかとそんな風に思ったから。
反対されるかもだけど……、ミッガ王国に行ってみたいとランさんやドングさんに相談してみよう。ニルシさんは行く気満々みたいだし、嫌な予感はしないから大丈夫じゃないかなと思うから。
そう思っていた私に、王国に行っていた商人のクエーさんが話しかけてくる。
「レルンダ、貴方の姉のアリスはもうすぐミッガ王国に来るかもしれないわ」
「姉が……?」
それは姉の話だった。
私が変わったように、姉も変化している。それはサッダさんからも聞いていた話だった。それにしてもフェアリートロフ王国から、ミッガ王国に姉もやってくるとはどういうことなのだろうか。
「アリスを保護しているニーナエフ殿下がヒックド様の元へ嫁ぐことが決まっているの。アリスも一緒にミッガ王国に来るのではないかと思うわ。ミッガ王国へ行った時に私たちはアリスを見ることは叶わなかったけれど、噂を集めてきたの。
アリスはとてもニーナエフ殿下を慕っているから、アリスもミッガ王国に来るのではないかとそういう話なの。それに偽神子と言われているアリスはニーナエフ殿下の側を離れるのはある意味危険だから」
王女様の元にいる姉は、王女様を慕い、ミッガ王国にお嫁さんに来る時に一緒に来る。
話した事もない姉が、クエーさんたちの向かったミッガ王国にやってくる。そう思うと、何だか姉が近くにいる感覚になった。
「レルンダはアリスに会いたい? レルンダは会おうと思えば、アリスに会えるわ」
「姉に……?」
「そうよ。だからよく考えてね。会いたくないなら会いたくないで構わないけれど、レルンダとアリスは姉妹だから」
―—クエーさんに私はそんなことを言われた。
――少女と、ミッガ王国から帰還した人々 2
(神子な少女は、ミッガ王国と姉の話を聞く)




