少女と、遺跡 4
美味しそうな匂いがして目を覚ます。
パチリと目を覚ました時、いつも見慣れない光景に一瞬、此処はどこだろうと考えてしまう。
それから頭がはっきりしてきて、ああ、此処は遺跡だと気づく。
何だか不思議な気持ちで目を覚まして、立ち上がる。
「レルンダ、目が覚めたんだな。おはよう」
「おはよう、ガイアス。思ったより、眠ってた」
「疲れたんだろ。慣れない場所に来たら疲れるからな」
ガイアスはそう言いながら私に顔を洗うようの水の入った桶を渡してくれる。
この水は近くの川から汲んできてくれたらしい。
顔を洗って、目がすっきりする。
「レルンダ、おはようございます。もう朝ごはんの準備はしてますから、食べましょう」
ランさんにそう声をかけられて、皆で朝食を食べる。出先で食べる朝食は何だか不思議な気持ちになった。簡単な食事を取った後は、それぞれ遺跡内を見て回る。
「ふふふふふふ」
「ラン……何を不気味に笑っているんだ」
「何をって、これから遺跡を探索できるのですよ!! 興奮せずにはいられませんわ」
ランさんは朝から元気だ。いつも通り――ううん、いつもよりも元気だと言えるだろう。
「何だかいつもより興奮しているわね」
「そうだね、フレネ。……何か気になることがある?」
声をかけてきたフレネは少しだけきょろきょろしていた。頭の上に乗ってあたりを見渡すフレネは、少し落ち着きがない。
「少しだけ気配がする気がするのだけど……、まだ分からないわ」
「そうなんだ……」
気配がする、などというフレネ。
この遺跡に何かがいるのだろうか。その感覚は、私が感じている不思議な感覚と一緒なのだろうか。
私はそんなことを思いながら、ランさんとニルシさんと一緒に遺跡を見て回る。
「……この建物って、教会だったのかな?」
「よくわかりましたね!! きっと教会だったのだと思いますよ。どの神様を祀っていたかまではわかりませんが、この場所は大きな教会だったのでしょうね。私が知らない神様を祀っている可能性もありますし、研究のし甲斐がありますよね。神像の欠片を見つけたのですが、あまり見た事ない形をしていますから、これは何の神様は示しているのだろうと楽しみなのです」
ほとんど残っていない建物は、どこか雰囲気が神聖だった。私がぽつりとつぶやいた言葉にランさんは大きく反応をした。
ランさんが言うには、この場所には周りに根付いている木々よりも高くそびえた教会があったのではないかと言っていた。私はそんな大きな建物がこの場所にあったというのが、想像が出来ない。
そんなに大きくそびえた建物が、長い年月を経てばこんなにも崩れ落ちるのかと不思議だ。
教会の跡地を見て回っていれば、ランさんが声をあげた。
「レルンダ、見てください!! 何か落ちていますわ」
「ランさん!! 駄目だよ」
ランさんは何かを見つけたようで、そちらに飛び出そうとする。慌ててその腕をつかんで止める。
「さ、流石に私も飛び出しませんよ!!」
「ほんと?」
「ええ。そうですよ。ちゃんと調べてから触りますとも」
そんな風に言っているが、本当にそうなのか……というのは目の前のランさんを見ているとちょっと不安になる。
「落ちているものってどれだ?」
「あれです!! あそこに何か小さなものが落ちているでしょう? 何か魔法具とか、過去の文明の生活用品なのか気になっているのです」
確かにランさんが指し示す方には、小さな入れ物のようなものが落ちている。
まずはフレネがそれが危険なものでないかを調べてくれた。フレネは精霊だから、魔力を帯びているものに対して敏感だ。
フレネが言うには、その入れ物はただの入れ物で、魔力は何もないらしい。
問題がないだろうということで、ランさんがその茶色の入れ物を手に取る。キラキラした目でそれを見るランさんは、楽しそうだ。
「これはなんでしょうね。コップとして使っていたのでしょうか。それとも別? でも飲み物を飲むものにしては小さいですよね。ああ、もう昔の記録が文章や絵として残っていたらいいのですけど……」
ランさんはそう言いながらそれをバックにしまい込んでいた。
この入れ物のようなものが何なのかもランさんが解き明かしていくのだろうなと思うと楽しみである。
その後、教会の跡地を見て回ると案外色んなものが落ちていた。元々この場所には沢山の物が溢れていたのだろう。ちょっと土を掘り起こすと色々出てくる。
それを見るたびにランさんは目を輝かせていた。
だけど流石にすべてを持ち帰るわけにもいかないので、一生懸命ランさんは厳選していた。
その後、少し東にフレネと進んだ。
そちらに向かえば、ちょっとした水たまり――小さな池みたいな場所があった。その池の周りには、大きめの石がいくつか転がっている。
そしてその中央には――、小さな木が水面から出ている。だけどその木は私の膝ぐらいの背しかなく、このまま朽ちていきそうだ。
それに心が惹かれた。
「――精霊の気配がするわ」
フレネのそんな言葉が耳に響いた。
――少女と、遺跡 4
(神子の少女は、遺跡を見て回り、小さな池を見つけた)




