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【連載版】双子の姉が神子として引き取られて、私は捨てられたけど多分私が神子である。  作者: 池中織奈


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少女と、翼を持つ者たちの神様 1

 ビラーさんたちの集落で休んだ翌日、私たちはビラーさんのあとに続いて、山を登っている。



 集落に向かうまでの道よりも、斜面が急で、登るのが大変に感じられた。ふと振り返れば、随分高い所まで私は登ってきたのだと実感した。

 ビラーさんが先ほど集落を出る前に言っていたが、そのビラーさんたちの神様がいる周辺は危険な魔物などが出ないらしい。それもあって、神様の元へいってくれるのはビラーさんだけだ。それはビラーさんたちの神様に対する信頼の証でもあるだろう。神様が存在していれば、危険など起こるわけないと知っているからこそ、信頼しているからこそなのだ。



 それだけ周りの環境に影響力を与えて、魔力を整えてくれている存在。ビラーさんたちにとっての神様。

 大人数で押し掛けるのをよしとしていないのだろう。ビラーさんは本当なら私だけで神様の元へ行ってほしかったようだ。まぁ、オーシャシオさんたちは私を心配してくれているからついていくと言ったわけだけど。





「ぐるぐる……(威圧的な魔力……)」

「ぐるぐるぐるっ(なんか、凄い魔力がある……)」



 リルハとカミハは、山頂に近づくにつれて、何かを感じ取っているのか少し怖がっていた。



 ビラーさんが魔物はこの辺に出ないって言っていたし、魔物が直感的に感じられる何かがあるのだろう。そしてそれはおそらくビラーさんたちのいう神様なのだろう。



 フレネはフレネで、「凄く魔力の流れが本当に綺麗っ」と声をあげている。フレネは怯えがないわけではないようだが、それよりも綺麗な魔力の流れに興奮して仕方がないらしかった。他のエルフと契約している精霊はちょっとびくついていたりとか、少し様子がおかしいのだけど……。

 私は精霊ほど魔力の流れを見ることは出来ないし、グリフォンたち魔物ほど敏感に本能で何かを感じとることは出来ない。



 グリフォン達が怖がり、精霊たちが挙動不審になるようなもの――それが、私の進む先にいる。

 グリフォンたちが怖がるような存在だとすると、そのビラーさんたちの神様はもし敵対したら私たちでは太刀打ち出来ないような何かなのかもしれない。そんな風な思考が芽生えたけれど、不思議と恐怖はない。




 ビラーさんは神様の元へ行くのに緊張しているのか、ずっと無言だ。神様と頻繁に会えるわけではないのだろう。

 ガイアスたちもその神様が何なのだろうかと言う怖さを感じているのかあまりしゃべらなかった。

 私だけがわくわくした感情を抱いている。まぁ、フレネは興奮の方が強いから、緊張や怖れを感じている皆とは違うだろうけど。



 こういうわくわくした感情や、なぜか大丈夫だと感じる気持ち。それはきっと私が神子だから感じる気持ちなのだ。




 ――以前、ロマさんに言われた言葉を思い出した。

 私には分からない、と言われた言葉。

 私は心の奥底で確信しているからこそ、大丈夫だと実感しているからこそ不安を外に出さない時がある。大丈夫な予感がしているから。



 でもそれは私だけが確信をもって安心していることで、他の皆にとっては私の感じる安心感なんて存在しない。ただ緊張や不安や怖れが渦巻いている。

 大きくなって、いろんなことを知っていくにつれてそういうことを私は実感している。

 私はわくわくした感情の方が強いけど、周りはそうではないこと、それをきちんと踏まえて行動しないとなんだって思ってる。






「ごめんね、皆、こうして怖いかもしれないところに一緒に来てもらって」

「いや、そんな風に言わなくていい。俺たちはついてきたくてついてきたんだから」

「ぐるぐるるるる(怖いというのはあるけど、大丈夫)」

「ぐるぐるるるるっ(謝らなくていい)」

「ありがとう」




 足を進めていきながら、そんな会話を交わした。

 皆が優しくて、皆が大好きだって、そんな気持ちがあふれてくる。

 ここに付いてきてくれているガイアスたちだけではなくて、一緒に仲間として過ごしている村の皆が大好きだってまた実感したから、神様と会って、村に戻ったら”ありがとう”ってまた伝えようと思った。





 しばらく登って、ビラーさんは足を止めた。










「……この上に、俺たちの神はいる。くれぐれも無礼な真似はしてくれるな」




 それは山頂に差し掛かるような場所で、ようやくビラーさんが口にした言葉だった。

 なんとか、急な斜面を登って山の頂上に到着する。そこで私は――それを見た。

 登り切った先に、一匹の巨大な生き物がいた。巨大な生き物。こんな山頂にこんな存在が生きているなんて知らなかった。地上からではいると分からなかった存在。





「――お休みのところ、失礼します。少女を連れてきました」



 ビラーさんが声をかければ、体を丸めて寝そべっていたそれが首を動かす。



 ――その存在は、黒い鱗で覆われた体を持つ。

 ――その存在は、鋭い牙を持つ。

 ――その存在は、巨大な翼を持つ。




「ほぉ、やはり、神子か」



 その存在は巨大な口を開いて、私を見た。

 それは――ドラゴンと呼ばれる魔物だった。




 ――少女と、翼を持つ者たちの神様 1

 (神子な少女は、翼を持つ者たちの神様と出会う)




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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりドラさんでしたか
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