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少女と、歌唱会 3

 歌唱会で、私の番になった。



 私はステージに上がる。

 皆が私の事を見ているのが何だか、恥ずかしい。恥ずかしいけれども、温かい気持ちになる。

 なんだろう、私は皆が好き。皆が好きだからこそ、こうやって前に立つ事は慣れないけれど私はこんなに嬉しい気持ちになっている。



「~~~♪」



 歌を紡ぐ。

 私が聞いて覚えた歌を。

 歌を歌う事は楽しい。何だか嬉しい気持ちになる。

 気づいたら私は歌を口ずさんでいる事がよくある。そう考えると、私の趣味と言えるものって歌なのかなって思う。



 もっといろんな歌を聞いてみたい。

 もっといろんな歌を覚えてみたい。

 もっと——沢山、歌を歌ってみたい。

 そんな気持ちが私の心にわいてくる。

 やりたい事がこうしてどんどん、湧いてくる事が私は嬉しかった。



 私が歌を歌い終えれば、皆が拍手をしてくれた。精霊樹も、喜んでいるように感じられた。

 精霊樹も、早く元気になったらいいな。精霊達が早く元気になって——、そしてエルフの人達と早く再会させてあげたい。

 歌い終えて、風になびく精霊樹を見ながらそんな風に思えた。




 私が終わった後に、獣人の大人の人たちが何人か歌った。その中にはシノルンさんもいた。シノミが歌っていたのと同じような歌を歌っていた。グリフォンをたたえる歌がいくつもあった。グリフォン達は恥ずかしがっているけれど私はグリフォン達をたたえる歌が結構好きだ。



 翼を持つ者達も歌を歌った。

 空を飛ぶからこその歌というか、空を崇拝するような歌や上空から見下ろした風景の歌、また恐らく彼らの神に向けての歌もだった。私を見ていると、神様を見ているような気分だと言っていた。彼らの神って、何なのだろう。



 歌を聞いている限り、とても強そうに聞こえた。

 歌を聞いていると、心が昂る。翼を持つ者達は飛べない人たちの事をあまりよく思っていない。でも私がやりたいと願った行事だからとこれには参加してくれた。

 もっと翼を持つ者達の事、もっと知れたらいいな。難しくても仲良くなれた方が私は嬉しい。だから、そのためにも知っていきたい。知っていけたら、もっと近づいていけるようなそんな気がするから。




 そして、最後の方でフィトちゃんが歌った。

 それは恐らく、真なる神の娘に向けられた歌。それを舞いながらフィトちゃんは歌う。真なる神の娘へ捧げるための奉納の舞なのだと。

 専用の、色とりどりの衣装を身にまとって、軽い足取りでステップを踏みながら舞う。その舞はとても美しかった。



 見惚れてしまうような美しい舞。



 それを私の事をまっすぐに見つめて舞うからちょっと恥ずかしい気持ちになった。多分、あの舞は私にも向けられている。私にも捧げられている。フィトちゃんの目からはそれが感じられた。



 それにしてもフィトちゃんは踊りが得意なのだなと感心した。私もあんな風に踊れるようになってみたいな。そう思うから、今度、習ってみよう。フィトちゃんと一緒に踊りが出来たらとても良い光景だと思う。



 フィトちゃんの舞は、神秘的で、美しい。

 誰かに捧げるための舞は、何とも美しいのだと思う。意味がある踊り。

 フィトちゃん達、民族の人達が長年ずっと踊ってきたもの。

 その舞には、翼を持つ者達も感心していて拍手していた。本当に凄いもの。




 その後も、何人か歌を歌って、歌唱会は終わる。






 私が一番、頭に残ったのはやっぱりフィトちゃんの歌と舞だった。フィトちゃんは自分には何の力もない、神の娘という名があるだけだと言っていたけれどもその歌声や舞は十分な力のように見えた。



 歌唱会が終わった後、皆で片付けをする。



 準備から開催、片づけまで通してこうして皆で同じ事をやれるのはいいなって思った。私はこういうのが皆で出来るのが凄く嬉しかった。



 それにこうして皆の歌を聞くことで、皆の事が少しでも多く知れたと思う。

 歌って、その人たちが生きてきた軌跡にも関わりがあるんだなと思えた。その人たちがどうやって生きてきたか、どんな感覚を持っていくのか、何を考えているのか、そういうのが合わさって歌となっている。

 本当に、歌は面白いと歌唱会を通して改めて思った。

 後片付けも疲れはしたけれど、皆と一緒にお話ししながら進められたのはとても嬉しかった。




「ランさん、ありがとう。楽しかった」

「ふふ、良かったですわ」




 ランさんにお礼を言ったら、ランさんは笑ってくれた。

 ランさんの優しい笑みを見るのが私は大好き。




「また、次もやりましょうね」

「本当?」

「ええ、とても楽しい催しだったから。皆も楽しんでたわ。私も……次の開催が楽しみだと思えるぐらい楽しめたもの」

「楽しみ!」




 次回へつながる話をランさんと出来て、私は嬉しい気持ちになった。

 次にもっとどんなふうにしたいとか思いつく限り、ランさんやドングさんに言ってみよう。そしたらきっと次に行われる物がもっと楽しい物になると思うから。



 ―――少女と、歌唱会 3

 (神子な少女は歌唱会を楽しみ、歌う事が好きだと思う。そして次回に思いを馳せる)



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