猫、出会う。
俺は一人のおかしな王子を知った。
その王子は——、俺達の村を襲う命令をした張本人。だけど……最近は、その王子が少し違和感のある動きをしている。俺は秘密裏にその王子について調べていた。
とはいっても俺には協力者は居ないため、一人で全てを調べている。
一人で、その王子の周囲を調べるのにも限界があったけれども俺は誰かに自分の思いを話す気はなかった。獣人達を集める事は出来ているけれど、その先が今の所、上手く想像が出来ない。ただ、下手に誰かに本音を口にして、俺がやろうとしている事がばれて皆が危険な目に遭うのはどうにかしたい。
……人間達から俺に対する信頼をあげられるように行動している。だから、俺を良い駒だと少なくとも思ってもらえるようにはなっているとは思う。
ただ、これは綱渡りの行動だ。
俺の獣人達を救いたいという思いが知られてしまったらどうなるか本当に分からないのだ。だから、一人で息を潜めて王子の事を探った。
――だけど、流石第七王子とはいえ、王族。
俺の存在はばれた。
上手くやっていたつもりだったけれども、その王子の側近に見つかった。
ただ、公にはされていないようだった。秘密裏に俺は捕えられ、第七王子の元まで連れていかれた。そのことが不思議だった。
第七王子、ヒックド・ミッガ。
美しい銀色の髪を持つ男。彼は、こちらを見据えている。
……俺たちの村を襲う指示を出した王子。だけど……、不思議と捕えた後は酷い扱いをしなかったという噂の王子。
「君は……」
ヒックド・ミッガは拘束された俺の前で言いよどむ。
捕まったからには色々とばれてしまって、皆に大変な目を遭わせてしまうのではないかと心がざわめく。だけど……、不安な素振りを目の前の存在に見せるわけにもいかない。
「君は……何を考えている?」
ヒックド・ミッガは俺に対してそんな風に問いかけた。
「何を、とは? 俺は俺のしたいようにしているだけだ」
俺はそう答えた。
このヒックド・ミッガという王子にも、その側近にも自分の思いは死んでも伝える気がなかった。この身が朽ちたとしても、俺が獣人を助けたいと思っているという事を知られるわけにはいかない。俺が例え死んだとしても、獣人たちが、皆が助かるようにしなければならないのだ。
「――二人にしてくれないか」
ヒックド・ミッガはそんな驚くような事を言った。
側近の男たちが躊躇う素振りを見せたというのに、その王子は「いいんだ」と強い口調で言って側近たちを下げさせた。
俺は拘束されているとはいえ、獣人だ。人間よりも強い力を持つ。それなのにそんな存在と二人っきりに自分からなろうとする事に意味が分からなかった。この男は何を考えているのだろうか。不思議な動きをしている王子。その王子は何を考えてか、俺と二人っきりになった。
「――そのまま、黙ってでいいから聞いてもらっていいか」
王子は言う。
「俺は、君たちを追い詰める命令を出した。それは事実だ。今まで俺は父である王に逆らう事を出来ないと思っていた。命令を絶対に聞かなければならないと思っていて、自分の意志なんてなかった。だけど、俺はとある人物に出会って俺は自分がどうしたいか考えたんだ」
なぜか、王子はそう語る。
「それで俺は……獣人達を救いたいと思った」
そしてそんな驚くべきことを言った。
そして続ける。
「君がもし……本当に噂のように自分勝手で、人間に魂を売ったような獣人ならば、俺はそのまま破滅する。だけど、俺には君がそういう人物には思えない。だからこそ、言う」
俺が、人間に魂を売ったようには見えないと王子は言う。
「俺は父親の命令に逆らって、獣人達を始末したと言って始末せずに、逃がすことにした。一部の獣人たちはまだ残っているけれど、神子の元へ逃がした。俺が見た、神子と思われる存在は狼の獣人と共に居たのだ。恐らく……神子は獣人の味方だろうから」
神子。その存在を俺は聞き知っている。その神子という存在がミッガ王国の隣国であるフェアリートロフ王国に神子が保護され、それもあって俺たちの村は襲われた。隣国が力をつける事を恐れて、奴隷と落とされるために襲われた。
だけど、本当の神子ではなかったとかでばたばたしている。
――そして、本物の神子が狼の獣人と一緒に居た?
そんな話は知らない。もしかしてこの王子はそれを見たけど報告せずにいた?
「――俺は、ばれてしまったら処分されるだろう。だけど俺は罪滅ぼしにもならないかもしれないけれども……自分の意志で獣人達を助ける事を決めた。だから、君が獣人の事を助けたいのならば協力し合えると思うんだ。教えて欲しいんだ。君が何を考えているか。君の悪いようにはしないから」
王子はそう言って、俺の目をまっすぐに見る。
迷いなどないような目で、偽りなど見えない目で。
俺はしばらく黙りこんだ。
「俺は——」
それからしばらくして俺はどうするべきか考えて……、——そして、口を開いた。
―――猫、出会う。
(その猫は、全てを一人で抱え込んでいた。味方を作らず、一人ぼっちで。そして自ら行動した先で、王子に捕まった。王子に出会って、猫は——。)
活動報告に見本誌の画像上げてます。興味のある方は見ていただければと思います。




