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少女と、翼をもつ者たち 2

 翼をもつ人たち。



 彼らはどうしてか、私の事を気にしているらしい。

 放っておくべきではないと、そんな風に見かけて思ったってどういう事なのだろう?



 私は正直、隠れてその様子を見ながらも自分がどのように動くべきなのか分からずにいた。翼をもつ人たちに対して興味は尽きないけれど、此処で何も考えずに飛び出して皆が大変なことになるのは避けたかった。



「……あの子の事だけを、そんなに気にしているのか」

「ああ。少なくとも俺は一目見て放っておくべきではないと、心がざわめいた。だから一目会ってみたいと思った。それだけだ」




 真っ直ぐに、その人はドングさんの事を見つめてそういう。正直、嘘を言っているようには思えなかった。



「ぐるっ(私たちと一緒だわ)」



 カミハが小さな声で鳴いた。



「一緒?」

「ぐるぐるぐるぐるる(私たちも、レルンダを放っておけないと思った)」

「うん」

「ぐるぐるぐるるるるる(だから一緒に居ることにした。レルンダはとってもいい子だったし)」

「……そっか」




 カミハの上に乗ったまま、カミハの言葉について思考する。



 ランさんは、私がグリフォンたちやシーフォと契約を結んだきっかけは私が神子だからかもしれないと考察しているといっていた。神子という存在は、万能ではないけれど周りに影響を与えるものなのだと。

 私と皆が接したきっかけは、神子だったからかもしれない。でもその後家族になれたのは、私たちが共に過ごしてきた大事な時間があるからだ。



 ――出会いのきっかけとなるような影響が、あの翼をもつ人たちにも起きているのだろうか。



 私に影響を与えている神様がどの神様なのか、それは正確には分からない事だけれども、こうしてグリフォンたちやシーフォ、そして翼をもつ人たちと影響を与えているっていう事は私は空を自由に駆けている者達への影響が強かったりするのだろうか。



 やっぱり嫌な予感は全然しない。出ていってもいい気がするけれども———……、どう動くべきかやっぱり反応に困ってしまう。私個人としてみれば、嫌な予感は全くしないのもあってこのまま出てしまっていいのではないかと思っている。ひとまず、ドングさんたちに任せようと思った。

 私は出ていいのだろうか。出たいけれど、勝手に出て迷惑はかけたくないとそんな思いがずっと頭の中をぐるぐるしていた。



「お前たちは……本当にあの子に会いたいだけなのだな」

「ああ。そういっているだろう」

「……その言葉が嘘のようには思えない。とはいえ、そのままあの子に会わせるわけにはいかない。拘束をさせてもらっても構わないか?」



 ドングさんのその言葉に、彼らは一瞬だけ固まった。だけど、「構わない」とドングさんと話していた男の人がばっさりといえば、その後ろに居た残りの九人の者たちも少しだけざわめいていたけれどその男の人の判断に従うことにしたのか拘束される事に同意した。あのドングさんと話していた男の人は、彼ら翼をもつ者たちの中でも発言力の強い人なのかもしれない。



 そしてドングさんたちが彼らを拘束する間、彼らは抵抗をしなかった。手を縛られ、座らされ、動けないようにされても彼らは抵抗をしなかった。そして拘束すると同時に、彼らの足元で倒れている民族の人たちの介抱も行っていた。皆、怪我もほとんどないみたいでほっとする。

 そこでようやく、ドングさんが私の事を呼んだ。呼ばれて私はカミハに乗ったまま、彼らの前へと姿を現す。



 ―――翼をもつ者たちは、何故か私の事を目に留めた瞬間、顔色を変えた。



 中には、拘束されているにも関わらず私の事をじっと見つめて、固まっている人もいる。そんな風に見つめられてちょっとびっくりする。



「やっぱり、気のせいではないか」



 ドングさんと話していた男の人は、私の事をじっと見据えたままそういった。

 気のせいではないと。私は男の人の次の言葉を待つ。




「……やはり、その少女を見ていると放っておいてはいけないという気分になる。遠くから見かけた時も思ったが、真正面から見ると余計にそういう気持ちになる」



 男の人のつぶやきに、他の者達も口々に言う。



「まさか、ビラーの言っている通りの気持ちになるとは……」

「空を舞えない種族相手に……でも、確かにこれは……」



 放ってはいけない、というそういう気持ちになる。ただ私の事を少しだけ気にかけてしまっている、という事なのだろうか。



「それで、放っておけないとするとお前たちはどうする気なんだ?」



 私は放っておけないとじっと見られてなんて言ったらいいか分からなかった。そうしている中でドングさんは彼らに向かって問いかける。



「……放っておくわけにはいかない。そんな風に思うから、その少女に関わらせてほしい」



 ビラーと呼ばれた男の人は、拘束されたままなのに力強い瞳をこちらに向けてただそれだけを告げた。



 ―――少女と、翼をもつ者たち 2

 (神子な少女は、翼をもつ者たちと対峙する。彼らは少女と関わる事を望んだ)




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