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少女と、飛び込んできた話。

「レルンダ、見てみて! 私結構色々出来るようになったのよ」




 そういって私の目の前で、蹴りなどを見せてくれるのはカユである。その隣ではシノミも、「私も頑張ったの」とおっとりした笑みを浮かべながら体を動かしている。



 二人とも魔法を使えないようだけど、その身体能力はやっぱりすごいと思う。獣人の皆は身体強化の魔法を使わなくたって私よりもずっと体力があって、こうやって体を動かすのが得意なのだ。

 私は神子といって、人よりは特別な存在なのかもしれないけどそれでも二人のように体を自由自在に動かす事は出来ないし、獣人の皆って凄いなとやっぱり思ってならない。



 特別とか、特別じゃないとかそれって人が勝手に決めている事だ。獣人の皆は私よりも凄い身体能力を持ち合わせているし、エルフの皆は魔法能力に優れている。皆それぞれ得意な事が違うだけで、人間の私も、獣人の皆も、エルフの皆もあんまり変わらないと思ってならない。



「凄い」

「レルンダやガイアスにだって負けないんだから! 二人ほど色々出来ないかもだけど、私も——、皆が安心できる場所を作りたいもの。そのために、どんな邪魔が入っても作れるぐらいに強くなりたい」

「うん、私も。だから争い事とか好きではないけど、この身体能力使ってレルンダちゃんやガイアス君と一緒に頑張れるようにしたいんだ」




 目標を叶えるために、カユもシノミも頑張っている。皆が目標に向かって頑張ろうとしてくれていることが嬉しい。そういうのを見ると、私も頑張ろうって思う。



 自分たちが安心して暮らせる場所を作りたいという目標が皆の目標になって、皆で頑張っていけるのは嬉しいと思う。でも、私たちは仲間でも他人でもある。だからこそロマさんのようになってしまった人が出来てしまった。考えると胸が痛む。目標となる場所を作るためにも、もっと私は甘さを捨てなければならない。



 私は、神子の力を理解して、その力を使ってでも目標を叶えたいと思ったのだから。



「レルンダ、どうしたの?」

「ちょっと、考え事していただけ」

「そう、あまり思いつめないようにね? 何か悩みとかあったら私にどんどん相談していいからね。それか私に相談しにくい事だったらランさんに相談するとか……。一人で抱え込んだりしないようにしなさいね!」

「うん、ありがとう、カユ」



 私はやはり、恵まれている。私が神子であるという事実を知っても私をただ一人の個人としてみてくれる人が周りにいる。私の事をこんなに心配してくれる人がいる。一人で抱え込まなくていいよって笑いかけてくれる人が居る。

 私はここでの生活が大切で、皆の事が本当に大好きだ。




「カユ、優しくて、大好き」

「本当レルンダは素直で可愛いわね!!」




 カユにぎゅっとされた。カユは私をぎゅってするのが相変わらず好きだ。シノミはいつもの私たちの様子に笑いながら私たちを見ている。

 私はこういう当たり前の日常が大好きだ。二人の事が大好きで、心がぽかぽかしてくる。だから、こういう当たり前の日常を私は守りたくて、頑張ろうって思うんだ。



「でもレルンダ、もう少し大きくなったら男の人に好きとか言ったらだめだからね?」

「うん、勘違いされちゃう可能性あるから……。レルンダちゃん、気を付けないと」

「ん? なんで?」

「やっぱりわかってないし……。まぁ、いいわ! レルンダに悪い虫がつかないように私も全力をかけるから!」



 虫? カユは何の話をしているのだろうか。分からない私に何だか二人は仕方がないなぁとでもいう風に笑っていた。二人が言っていること、もう少し大人になったら分かったりするのかな。




 そんな風に考えてのんびりと過ごしていた中で、「ぐるぐるぐるぐ! ぐるぐる!(レルンダ! 大変!)」と言ってカミハが上から降ってきた。









 いきなり空の上から着陸してこちらに来たからちょっとびっくりした。カミハのこんなに慌てた様子を見たのは初めてだった。



「カミハ、どうしたの?」




 その尋常ではない様子に私は驚いて問いかける。何か悪い事が起こってしまったのだろうか。そういう考えが頭をよぎるけれど、不思議と嫌な予感はしていなかった。




「ぐるぐるぐるぐる!(あの人間たちが襲われてる!)」

「え?」

「ぐるぐるぐるるるるるるる!(殺されたりとかはないけど、なんか襲ってる人たちレルンダのこと探してるみたいだ!)」

「え?」

「ぐるぐるるるっるるるる(翼が生えてて、今まで見た事ない人たちだ)」

「え?」



 何だか突然、言われた言葉に私は固まった。

 民族の人たちが襲われている? 襲っている人たちが私を探している? そして、翼が生えている? どういう事なのか、さっぱり私には分からなかった。というより、理解が中々追いつかなかった。

 呆然とした私は、ひとまずドングさんとランさんの元へと駆け込んだ。




 ――――少女と、飛び込んできた話。

 (神子な少女は友人たちと穏やかに当たり前の日常を過ごしていた。その中に飛び込んできた話は少女を呆然とさせる)




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