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少女と、人質の少女 2

 村の人に会わなくても良い、というのはフィトちゃんにとっての本心なのだろうか。フィトちゃんは少しだけ寂しそうな目をしている気がする。フィトちゃん、本当は村人たちとなかよくしたいのではないだろうか。

 本当は神の娘としてではなく、フィトちゃんとして仲良くしたいのではないだろうか。




「フィトちゃんの本心……、違うのでは?」

「違うって?」

「フィトちゃん……本当は村の人たちと、仲良くしたい、違う?」

「……」

「私……も、ちょっと気持ちわかる。私、生まれ育った村でずっと、名前を呼ばれてなかった。アレとか、妹とか。でも、今皆に名前を呼ばれて、凄く嬉しかった。フィトちゃんも、名前呼ばれたい、違う?」

「……」

「村の人、どうでもいいなら、おとなしく人質にならない思う。フィトちゃん、民族の人たち好きだからおとなしくしてる、違う?」

「……そう、かもね」



 フィトちゃんは、少しだけ寂しそうな表情をして言った。



「じゃあ、その神の娘じゃなくても……フィトちゃんの事を受け入れてくれるように頑張ろうよ。私も、お手伝いするから」

「……レルンダは、私より特別。でもレルンダはレルンダとして見られている。……後ろの二人も、レルンダの事を大切に思っている。私にも、そういう風に見てもらえる人が出来たら……とは思う」




 やっぱり、フィトちゃんはフレネの事を一切見えていない。だからこそ、ガイアスとドングさんの事だけを言う。




「……うん。私も、私が何の力がなくても私を見てくれる人が欲しい。出来たら……皆が、私を只の人間として大切にしてくれたらいい」



 フィトちゃんはそうも言った。それがフィトちゃんの願望。神の少女、として見られることなく、只一人の少女として生活をしたい、そんな風に見られたいと願っている。



 私と、フィトちゃんってどこか似ているのかもしれない。



 姉と区別され、アレや妹としか認識されてこなかった私。

 神の娘とされ、力はないのにただの人間として見られなかったフィトちゃん。

 私は、私を見てくれる皆が大好きだ。私は自分の名前を呼ばれる事が本当に嬉しいと思う。その喜びを、フィトちゃんも知れたらいいなと思う。



 だから———、

「フィトちゃん……私と友達になろう」

 一人は寂しいから。友達がいる方が嬉しいから。そう、言った。




「友達……?」

「うん。そして一緒にフィトちゃんが、只のフィトちゃんとして笑えるように」

「……うん」



 フィトちゃんは私の言葉に頷いてくれた。





「俺も、フィトの友人になる。ドングさん、フィトはこれからもここから出れないのか?」




 ガイアスが私とフィトちゃんの会話を聞きながら、声をかけてきた。そしてドングさんに問いかける。

 ……友達になる。民族の人たちに認められるように頑張ろうって勝手に口にしてしまっていたけれど、フィトちゃんは人質としてここにきているのだから自由に動けるわけではないのだ。なのに、勝手に口にしてしまっていた……。現状私がフィトちゃんに会いに来る事を許可してもらえているけれど、フィトちゃんが外に出る事は認められていないのが現状である。



「……そのあたりはこれから話し合って決める事にはなる。ただ、その娘に何の力もないというのならば監視付きでになるかもしれないが、外には出れるようにはなるだろう。レルンダやガイアスがその娘の友達になることに関しては問題はないが……、ただこういうことはいいたくないが、その娘が嘘をついていないとは限らないだろう。もう少し人を疑う事を覚えないと、だまされてしまう」



 ドングさんのいう事ももっともである。フィトちゃんは嘘をついているようには思えないけれど、嘘を吐く人が世の中には居るのだ。なんとなく直感的にフィトちゃんは本当の事を言っているのがわかるけれど、世の中には人をだます人が居る。だからこそ、もう少し人を疑う事を覚えなければならない。




「フィトちゃん……外出る許可出たら、私のお気に入りの場所、案内するから」

「うん……でも出れなくても、いい。レルンダたち、友達になってくれたから。期待しないで待ってる」

 フィトちゃんは私よりも大人だ。外に出れなくてもいいと、今の現状を受け入れている。私はそう考えると、もっと色々考えて口にしなければならないと改めて思った。

「フィトちゃんは———」

「フィトは———」




 それから私とガイアスは、ドングさんが見守る中でフィトちゃんと沢山話をした。フィトちゃんが今回話した神の娘についての事などは、他の大人の人たちにあげられるらしい。

 フィトちゃん、外に出れたらいいな。出れる許可が出たら私がお祈りする場所とか、教えたい。そしてカユたちにも紹介したい。



 ―――あとあの民族の人たちとも歩み寄れたら一番いいのかもしれない。私はそんなことを考えた。




 ―――少女と、人質の少女 2

 (神子な少女は人質の少女と友達となった)




 

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