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少女と、民族 9

 まだ年若い子供が人質としてこちらに来ることになった。人質たちには自由はない。この村の場所を知らされても困るし、この村の事を探られても困るということで心苦しいけれどもほぼとらわれの身といった生活になるだろうということだった。



 そうまでしなければ守ることは出来ないのだ。私たちは、ううん、私は弱い。もっと強くなるまでは、村の基盤が整うまでは、望んでいなくてもそんな風にしなければならない、ということなのだ。

 それに加えて、私は私の契約している家族たちに彼らをもっと大々的に監視してもらうことにした。それは、いつでも彼らのことをどうにでもできるという威嚇行為でもある。



 私は捨てられてから様々な経験をすることがなければ、例えばそんな行為は出来ないといったかもしれない。現実の厳しさというものを知らなければ、私はこんな風な考えにはなれなかっただろう。



 私はその日も、祭壇の前でお祈りをした。その決意をただ神様に今日あったことを告げた。

 私の選択や、私の行動はあっているのだろうか。そんな不安がある。神様に告げると、返事は返ってこなくても、心が落ち着いていくのがわかる。気持ちを吐き出せる場所があることって良いことだなと思った。そういえばこのお祈りをする場所は「レルンダの祭壇」と他の人がいっていてちょっと定着してしまっているらしい……。此処でお祈りをしているのは私だけだからというのもあるのだろう。

 他の場所は「グリフォンの祭壇」や「精霊の祭壇」と呼ばれている。お祈りする存在はそれぞれ違っても私たちはともに生きている。それは私たちがお祈りする存在を自分たちがお祈りしている存在以外認めないとかそういう考え方をしていないからともいえるだろう。



 ―――あの人たちは私たちに人質を差し出した。対等な関係ではない。だけれども、可能性がゼロではないのならば、敵対するではなく共に歩んでいきたいと願っている私は甘いのかもしれない。それでも、出来たら皆で仲良くしたい。現実を知った上でも私はやっぱりそう願ってしまう。どれだけその道が厳しかったとしても、それが私にとっての願いである。



 ランさんが紙を少しずつ生産している。それでノートを作ってもらった。

 そのノートに私は亡くしてしまった人の記録を取ることにした。

 亡くなってしまった人のことを、心に留めておきたいから。



 そして、この村の中でもちゃんとしたルールが少しずつ増えてきた。今までなんとなくで決められていたものにきちんとしたルールを作る。もしルールが出来ていればロマさんがあんな真似をしなかったかもしれない。ルールを破った場合は罰が与えられる。そういうルールはきちんとしなければならない。



 それは私たちが集団であるからこそ必要なことなのだと思った。私たちが数が少なければ互いに気を遣い合えばどうにでもなった。例えば、私やグリフォンたちだけならルールはなくても上手くやってこれた。でも、私たちの数は多くなってきた。私たちが私たちの場所を守るためにも、そういうものを気にしていかなければならない。

 難しい話だけど、その難しいことでも難しいからといって考えないといった選択肢はしない。考えることの放棄をして逃げてもきっとどうにもならない。そう思うから幾ら難しいことでも学んで行こうと思う。



 これからも私たちは、多分、完全に見捨てるという事は出来ないと思う。だからこそ、もしかしたらこれからももっと人との関わり合いが増えていくかもしれない。私たちの仲間が、増えていくかもしれない。今回は私たちは上手くできなかった。私は自分の力を上手く使っていこうと決意もできずに、ロマさんを失ってしまった。



 もし、また違う人たちとの初めての接触があるのならば、もっと上手く付き合っていけるようにしていきたい。ううん、絶対にしてみせる。



 そうも私は決意している。

 失わないために厳しくあることは、これからのために必要なことなんだって私は今回のことから思った。



 ―――人質として過ごしている子はとてもおとなしくしている。グリフォンたちが見守っている中で、残った人たちはただ生活を営んでいるらしい。私は直接見てはいないけれど、契約している家族がそういっていた。


 私たちは彼らと交流を持ちながら、少しずつ、彼らという存在を知ってきている。そして彼らも、私たちについて少しずつ知ってきているだろう。彼らがこの場で過ごしていけるように手助けをし、彼らも私たちに対して感謝の気持ちを込めて収穫できたものなどをこちらに渡してくれたりもする。

 流血沙汰が起こったとは思えないぐらい、私たちと彼らの間の時間は穏やかに流れていた。でもそれは私が契約をしている皆が彼らを見張っててくれている結果だと思う。もしそういう事をしなければ彼らとこんなに穏やかな時間を今過ごせていなかったかもしれないのだ。



 穏やかに流れている時を感じながら、私はそんなことを思った。

 



 ――――少女と、民族 9

 (多分、神子な少女はその力を使っていくそれは皆を守りたいというその気持ちがあるからだ)



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