表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/459

少女と、民族 3

 彼らは、気づいたら私の住んでいる村から少し離れた場所にとどまっているらしい。そこからどこかに去ろうとはしていないらしい。



 フレネが情報を集めてくれていた。



 彼らは、居場所を無くしたためこの森に逃げ込んだ。そしてこのあたりで生活がしていけるということを私が不用心に言ってしまった。……私が行動した結果、彼らは私たちに接触しようとしている。出来れば私たちと協力していきたいと考えているみたい。でも彼らの中には、持っている私たちから奪おうという考えを持つ人たちもいるみたい。難しいと思う。



 フレネもいっていたけれど、多分、あの人たちは根が悪い人っていうわけではない。ただ、こういう状況だからこそ余裕がなくなっているんだと。住む場所を追われ、魔物がはびこる森の中を徘徊していて、ようやくみつけた敵対しないであろう人に出会えて。彼らもいっぱいいっぱいなのかもしれないって。



「レルンダが居るというのもあって私たちは魔物に襲われたりはあまりせずにここまでたどり着けたし、今、こうして暮らしていけている。でも——、あの人たちって、多分沢山襲われてるんだと思うよ。仲間が何人も死んでいるのかもしれないし、そういうこともあって追い詰められてるんじゃない?」



 フレネは彼らを見て、そんな風に感じているようだった。



 仲間がどんどん減っていって、先が見えない中で暮らしている。だからこそ、彼らは必死だ。私は―――、彼らを助けたい気持ちは少なからずある。ううん、それは私だけではなくて、皆だってそうだと思う。ただ……、助けた結果、この村がどのようになっていくのか分からないからこそ、中々行動が起こせないでいる。

 私は、皆幸せだと思う。誰かが悲しむのは嫌だと思う。皆で、笑い合えたら嬉しいと思う。―――だけど、全ての人を、目の前で苦しむ人、悲しむ人全てを助けようなんて難しいことなんだと分かった。



 私はガイアスと誓った理想を、ただ素敵だな、叶えたいなと共感した。その目標が素晴らしくて、叶えたいと思っているのは確かだけど、それを叶えることのむずかしさを実感する。

 あの人たちをどんなふうにするべきか、どう接するべきか、それに私たちの村が頭を悩ませている間に、一つの問題が起きた。






 村の獣人の一人が、あの人たちに捕まった。






 私はその報告を聞いた時に、どうして、と思った。あの人たちがあたりをうろついているからこそ一人で村の外に出ないようにドングさんは確かに告げていた。獣人たちは人間よりも身体能力が高いのもあって、一人で行動しなければ問題は起こらないだろうといわれていた。なのに、どうして、と頭の中が真っ白になる。



「……どうして、そんなことに?」

「………俺達に内緒で接触していたようだ。ロマは見た事もない人間に興味津々だったから」



 捕まった獣人のロマさんは、私よりはずっと年上だけどこの村の中では若手の男性だ。この村の中で狩りの仕事をしている。

 見たこともない人間に興味津々で、接触してしまったという話だった。

 ロマさんは今までドングさんたちの指示に逆らうことはなかったから驚いた。



「……これは俺達も悪いな。ロマは元々予想外の行動をするところがあった。でも、アトスが亡くなり、逃亡生活を余儀なくされ、エルフたちと出会い、魔物退治を行い―――そして、ようやくこの地に落ち着いた。この地で余裕をもった生活をできるようになったからこそ、油断してしまったのだろう」



 ドングさんは難しい表情を浮かべている。――今までこちらが接触をしないようにとしていれば、接触することはなかった。だけど今回はロマさんが自分から接触しようとして、接触した。その結果捕まった。



「……どう、するの?」



 私たちの方針としては、彼らに接触しないことだった。このままこの地から去ってくれればお互いのためにもなると思っていた。でも——、ロマさんが捕まってしまった。



「………彼らは、俺達にロマのことで接触してこようとするだろう。この村のこと自体を考えるのならばロマのことを切り捨てるのが一番良い」



 ドングさんはそう言い切ったあと、続けた。



「とはいえ、俺もレルンダの事を言えないぐらい甘いのだろう。ロマを見捨てるという選択肢は今の所ない。それは、この村の皆の総意だろう。第一、俺達の目標は皆が笑いあえる場所を作ることだろう。それなのに、その皆の中に入っているロマのことを捨て置くなんて本末転倒なことが出来るわけがない」

「………うん」



 私たちの夢。その夢を私たちは追っている。夢をかなえるためにもロマさんを切り捨てた方がいいのかもしれない、でも私はそうしたくないと願っているし、何より皆の中に入っているロマさんのことを切り捨てるなんて、その後にかなった夢があったとしても私はきっと後悔する。その気持ちはきっと、皆も一緒だ。




 どんなふうにロマさんのことを助けるか、その話し合いをしている中であの人たちは話し合いの場が欲しいと交渉してきた。そのいくつかの条件の中に、”一番最初に会った少女を話し合いによこすこと”、つまり、私もその場に行くことになったのだ。




 ――――少女と、民族 3

 (多分、神子な少女の村の獣人は民族たちの手に落ちる。そして少女はその獣人を助けるために動き出す)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ