少女と、処遇。
あの人たちをどうするか、というのはまだ決められていない。村の方には話を通している最中だと、皆が居る場所にオーシャシオさんと一緒に戻ってから言われた。
私が助けた人たちは萎縮した表情だ。皆がいろんなことを聞いている。ミッガ王国に住む場所を追われて、その結果森に逃げこんだのだという。そして仲間たちといるときに魔物に襲われてバラバラに逃げてしまったそうだ。
オーシャシオさんは、ミッガ王国は獣人とか他の種族だけではなく、同じ人間のことも奴隷にしていると私に説明していた。だから、この人たちは恐らくその影響で住んでいた場所を追われた人だろう。
でも、どうしてそんな風に誰かを奴隷に落とすとか出来るのだろうか。
この人たちがそんな大変な目にあっているのなら助けたい、って気持ちがわいてくる。でも、そんなこと簡単に口にして、簡単に村に引き入れてはいけないっていうのは叱られて理解している。
「――人間の中に良い奴と悪い奴がいるように、俺達獣人やこうして追われた連中の中にも良い奴と悪い奴がいるかもしれない。人が少ないうちは大丈夫かもしれない。でも人が増えれば増えるだけ、そんな悪い奴かもしれない人間が増えるかもしれないことになる」
私が助けたいなって気持ちになっているのが分かったのだろう。オーシャシオさんが、隣にいる私にだけ聞こえるような声で、そういっていた。
「俺たちはまだ人数が少ないからこそ回っている。もし……俺たちの村がもう少し整っていたならば他の人間を引き入れられるかもしれない。だけど、まだ、駄目だ」
「うん……」
「俺達の中にももしかしたら悪い奴も出てくるかもしれないしな」
「悪くなる……?」
「ああ。良い奴が、何かに影響されて悪い奴になることだって十分ある。良い人間が良いままではない。――俺だって何かしらの影響を受けて、悪い側に回るかもしれない」
「……想像、出来ない」
「そうかもしれない。でも、そういう可能性もあることをレルンダは頭に留めていた方がいい」
私の目の前で、私が助けた人たちがこちらを見ている。私にすがるように見ている。周りが村に入れない、という選択をしていることに対して、私に助けてほしいと投げかけている。そういう目で見られると揺らぎそうになる。だけど、村のためを考えなければならない。
私はその視線に首を振った。
そしてその場で話し合いがされ、村に残っているドングさんたちの意見もやはり、村にこの人たちを連れ込まないということだった。
とはいっても、このまま疲れ切った彼らを森に投げ出すほど皆厳しくはなかった。村には連れ込むことはしないけれども――――、彼らが休めるような場所は、作るというか、安全を保障することはするという選択をした。
全てを助ける、全て面倒を見る、良いようにする、とかそういうのじゃなくてこうしてちゃんと村のことを考えながらリスクを減らして、少なからず助ける。全部を助けるよりは結果がすぐに出ないかもしれないけど、そっちの方が良い結果を後々もたらすこともあるんだって、思った。
それからその人たちが休めるようにテントのようなものを、オーシャシオさんたちは作っていた。村から離れた位置に、作って、彼らが休んでいる間に襲われないように何人かが見張りもしてくれるって。その後彼らのことをどうするのか、それはまだ決められていないけれど少なくとも休ませてあげようと。その後の話は、また考えようとそんな話になった。
そして村に戻ってからは、彼らの仲間が森の中に散らばっているのならば、この近くにいるのかもしれない。だからこそ、警戒していかなければならないという話し合いがされていくことになった。
周りにあの人たちの仲間がいるのならば、どうこの穏やかな村に影響していくかも分からないと。まだ村としての形も整っていないこの場所に人を引き込めない。どんなふうになるか分からないから、彼らが何を思っているのか分からないから。
それにしても、凄く不思議な人たちだった。見た事がないような恰好をしていた。私は人間っていうと、育った村の人たちとランさんぐらいとしかちゃんとは知らない。遠目に見たガイアスのこと襲っていた人間の人たちも、あの人たちとは違った。同じ人間の中でも、あれだけ違う人たちがいるんだってびっくりした。
私は本当に、まだ全然色々なことを知らないんだって思った。
それに、もっと私は考えて行動しなければならないって思った。優しい人たち、大好きな人たちのために私はちゃんと考えなければならないんだ。
――ひとまず、あの人たちの仲間がいるのならば、そちらに合流してもらう。そして彼らの目指す場所を目指してもらう。もしかしたら村に住みたいといってくる可能性もあるけれどもその場合は断った方がいいだろうとドングさんはいっていた。
―――少女と、処遇。
(多分、神子な少女は学んでいく。少女が助けたものたちは村には入れられない)