15.這い寄る悪意
勇者の眷属に気づいたその夜、僕は10歳以上の年長組を集めた。
隠蔽を解き勇者の眷属についての説明、そして僕が勇者であることを説明した。
驚かれなかった。
「ナオト兄は、自分がおかしいことに気づいてない?」
「あにぃは初めて会った時から異常だったよね」
「普通の人は手からポンポン物は出さないよ」
隠していたつもりなの?と子供達に呆れた顔をされた。
解せぬ。
子供達に勇者補正のこと、その影響でスキルが身に付きやすいことを伝え、眷属になった子の能力を把握でき、自由に隠蔽出来ることなどを伝えた。
そのうえで、10歳未満の子供達は眷属の称号やスキルは全て隠蔽してこのことは秘密にすることにした。
10歳以上の子供、今ここに集まっている子は一人一人要望を聞いて隠蔽スキルを決めた。
勇者の眷属を隠蔽するのはもちろん、目立ちたくないということでスライムスイーパーを隠蔽した。
ダンジョン組は、元々習得していただろうスキル、スキルレベルが上がっていたものを残して残りは隠蔽。
屋台組も同様。フローラは生活魔法を堂々と使いたいと生活魔法を開示した。
他の年長組は、自分の目指す仕事に関連したスキルだけ開示することに。
この辺りを相談したうえで、『検索』を使い子供達が欲しそうなスキルとそれを習得するための訓練法や枯渇による最大MPの上げ方など強化のコツを教えた。
スキルの話になり、いつのまにか習得していた『火魔法』は、石鹸作りで火を扱っていたからではないのかとか、気づいたら習得していたスキルの話になり、最後の方はナオトの生まれた世界、日本について色々話をした。
ミリアにせがまれ、日本食について話した時に、ハンバーグ、ラーメン、鶏のから揚げにすぐ食いつかれた。
まぁ僕の好物だからある程度美味しさの誇張はしたからなんだけど。
明日作ってあげるよと約束して解散。
さて、何を作ろうかな。
翌朝、朝一で市場をを回る。
鶏肉、特に飼育された鶏ではなく、鶏が魔物化したマッドチキンの肉があったので購入。ちょっとお高かったけど奮発。
揚げ油用に、白絞油とオークのラード、胡麻を購入。
そう、から揚げを作る。
『万物創造』でぱぱっと作っても良いが、ミリアにレシピと作り方を教える意図もあって一から作ることにした。
足りない材料は『万物創造』で作っちゃうけどね、その辺の足りない材料の補填はミリアのセンスで。
まずはマッドチキンの肉を一口大にカット。
3つに分けて、それぞれの器に入れる。
Aは、日本酒、おろしニンニク、おろし生姜、塩、コショウ、ハチミツ。
Bは、日本酒、おろしニンニク、おろし生姜、醤油、魚醤、コショウ、ハチミツ。
Cは、おろしニンニク、おろし生姜、カレースパイス、ヨーグルト、塩、ハチミツ。
よく混ぜて1時間ほど寝かせる。
生姜は、代用品も含めてまだこの世界で発見していないので『万物創造』で作った。ちょっとだけ最大MP持っていかれた。
日本酒も『万物創造』で作った。以前に作った米麹と米、水で作れた。
次は油。まず、胡麻を『万物創造』でごま油に。この世界では絞る技術が未熟なので胡麻を油にする発想がないらしい。
ちなみに、白絞油は植物系の魔物が大量にドロップするので困らないそうだ。
普段は石鹸用に安い物を大量に仕入れていたが、今回は食用ということでちょっとお値段が高めの物にした。
揚げ油は、白絞油と胡麻油とラードとを5:4:1で配合。
その油を、ステンレスを素材に『万物創造』で作った大鍋2つに注いだ。
ゴブリンステンレスを切らしていたため魔道具ではなく普通の調理器具だ。
熱源は竈で薪。
薪で火の調節って難易度高いのだよな。ミリアに丸投げしよう。
仕込んだマットチキンの肉を寝かせている間に、ミリアにレシピを教えておいた。
日本酒は別の酒でも良いし、生姜無しでも美味しいと伝えたが、同じ味の物を探すと息巻いて生姜を丸かじりしたミリアは酷くむせていた。
うん、生姜の丸かじりはきついね。
マットチキンの肉の寝かしもそろそろ良いので粉作りに。
小麦粉と片栗粉を5:5の衣にすることにした。
片栗粉っぽいのは存在したがコーンスターチだったので、いつも使っている方のが勝手が良いと『万物創造』でジャガイモから片栗粉を作った。
ちなみに、コーンスターチだが材料はコーンではなくオーク豆という名称だった。
オーク豆を粉にしたものをオーク豆粉、でんぷんだけ取り出したものをオーク粉。
ややっこしい。
オーク豆はトウモロコシであった。
ダンジョン産の穀物で、ゴブリン豆と違って栄養豊富で味見良い。糖度も高いのででんぷんがたっぷりとれる。
ただゴブリン豆と違って、豊富な太陽の光が必要なうえに収穫には半年かかり、収穫量はそれほど多くない。
加工すると保存性が高くなるので全て、オーク豆粉かオーク粉にするそうだ。
よし、オーク豆を育てよう。茹でトウモロコシに焼きトウモロコシ。絶対に美味しい。
小麦粉と片栗粉を5:5の衣の他に、おやつ用に『収納』してあったナッツ類を『万物創造』で砕く。
砕いたものを衣用の粉の一部に混ぜておいた。クリスピー用である。
さていよいよ揚げ開始。
揚げ油を薪で熱して・・・。
あれ?思ったより火のコントロールが出来てる。
現代っ子としては竈や薪は苦手だったのだけどなぁ。慣れたか?
違うな、急に扱いが上手くなったときはあれだ。
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料理 4/10(コモン)
料理に関する技術に補正がかかる
調理技術が少し上がる
味に補正がかかる
火加減に補正がかかる
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ステータスを確認したらやっぱり『料理』スキルのレベルが上がっていた。
しかも、ちょうど火加減。
まぁちょうど良いしいいか。
ミリアに衣をつけてもらってまずはAの塩から揚げから揚げることに。
2/3はノーマルで残りはクリスピーである。
まずは低温の油の大鍋でゆっくりじっくり揚げる。
いったん休ませたあとに高温の油の大鍋でさっと揚げてぱりっとさせる。
このために鍋を2つ用意したのだ。
Aが終わったらBも揚げる。醤油味だ。
これも2/3はノーマルで残りはクリスピー。
ここまでくると良い香りが漂っているらしく食堂に子供達が集まってきた。
まだ、おあずけ。
最後にCを揚げる。表面についたヨーグルト液を軽く落としてから衣をつけて揚げる。
これはクリスピーなし。
タンドリー風だ。
同時に炊いていたご飯とスープ、サラダを付けてお昼はから揚げだ。
「いただきます」
この合図で一斉に食べ始める。
凄い勢いで減る山盛りのから揚げ。
すげーな。
から揚げは大人気だった。
どの味も好評。
ミリアは
「から揚げ専門店出来ますよ。また屋台作りましょうよ、屋台。それよりも店舗で・・・」
意識が別の世界に行っている。
「ごちそうさまでした」
5キロ作ったから揚げが全てなくなった。
成長期の食欲を侮っていたわ。
それから一週間はのんびり過ごした。
石鹸工場に屋台に農業に。
たまに日本の料理を作ったり。
勇者の眷属が現われた影響で何かトラブルが起こるかと思ったが特に何もなかった。
表面上は。
「で、どうでしょうかダジャンさん」
「工場周辺がスラムだった時にいた盗賊達の上位組織みたいですね」
「でも今更ですよね」
「ナオトさん達は稼いでますからね。そのあたりを狙われているかと。あとはその盗賊と繋がっている貴族も手を回しているみたいです」
「貴族ですか」
「侍に成りたての新興貴族ですよ。そうとう阿漕な商売をしていて、金で侍を買ったと言われています」
「盗賊を潰すだけでは収まらなそうですね」
「そこは私に任せてください。奴は私の商売の妨害もしてきましたからね。そろそろ痛い目を見てもらいましょう。ナオトさんは盗賊を。私はその貴族をつぶしますので」
「了解しました。すでに盗賊のアジトは判明しているのであとは乗り込むだけですね。ダジャンさんの方で用意することはありますか?」
「そのことについてナオトさんのアドバイスを頂ければと」
どうやら貴族と盗賊が、工場や子供達、そして僕を狙っていたようだ。
工場の周りをうろつく不審者が増えてきたのでダジャンさんに調べてもらったら盗賊団とそれに癒着する貴族の名前が出てきた。
貴族はダジャンさんの商売も妨害していたらしくダジャンさんは徹底的に潰すようだ。
しかし、どこの世界でも子供の上前をはねようとするクズはいるものだ。
気付かないうちに子供達と自分を重ねていたナオトにとって、搾取する大人はかつての叔父夫婦を思い出し仄暗い感情を呼び起こすのであった。
もう力のない子供ではない。
仄暗い感情を押し込めながらダジャンさんとの密談は続く・・・。
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名前 真神尚人 17歳
種族 人間族
職業 勇者
レベル 6
HP 1800/1800
MP 1862/1862
力 350
体 310
俊 310
魔 400
【スキル】
万物創造 共通言語認識 電脳
剣術 刀術 投擲
体術 ゴブリン式格闘術 回避
解体 火魔法 水魔法
風魔法 土魔法 回復魔法
重力魔法 生活魔法 遠見
警戒 索敵 空間認識
料理 農業 状態異常耐性
並行詠唱
【称号】
異世界人 勇者 閃光のマヨネーズ
盗賊ハンター
【固有魔法】
ブリットショット
ブリットバースト
【装備】
打刀無銘
皮の鎧
お洒落なマント
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