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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第三章 少年編・生きる
62/113

13 気ままな三人旅

 前書き、邪魔ですか?

 「邪魔☆」って感想来たら一気に消そうかと。

 毎回くっだらないことをだらだら書いてるだけなんで(-_-;)

 デスクヒーターで足を暖めながらケトルを抱えて打っておりまする。

 皆さんも健康には気を付けて―(鼻かみながら)


 六十一話、はじまりますー

 タクら一行が向かうロルネラは、商業都市国家ディルエバーズで唯一国が関与せずに国家貿易をおこなっている街である。その海岸からは、晴れていれば大願の魔道国家フィデリントが見えるという、漁業も盛んな貿易都市がロルネラだ。

 町であるガラムからロルネラまで、馬車を乗り継いでも最低二か月はかかる。それを徒歩で踏破しようというのだから、よほど足腰に自信があるのだな、と思っていたエイファとタクは、すぐにへこたれたアルテに知らなかっただけか、と嘆息した。


 「だって、俺ら地理とか習わないしー」

 「俺はシーブさんに頼んで教えてもらった」

 「ふふ、次の町で簡単な地図でも買いましょうか」


 一番せの小さい者が荷物として馬に乗せられている、と思えば外聞は保たれる気がするが、女性と年下の者を歩かせて成人した者が一人馬に乗っている、と思うと途端に避難の目で見られるだろう。


 「アルテ、あんまり騒ぐとまるで偉い人みたいだぞ」

 「んなっ」

 「はいはい、喧嘩しない。もうすぐ休憩所があるから、今日はそこで野宿しましょ」


 街道を延々と歩くということになれていなかった、良くも悪くも町育ちのアルテは山を二つ超えたところで普通のペースが保てなくなり、直後の戦闘で足をくじき、それ以降馬の背に乗せられているのだ。

 町同士をつなぐ街道には一定距離で休憩所という小屋が備え付けられている。中で夜を過ごせるのは貴族やそれに準じる地位を持つものだけだが、小屋の外には水汲み場と少し開けた高台になっている魔物除けのなされた場所があるので、比較的安全に夜を過ごすことができる。


 「野菜とか、大丈夫?」

 「むしろさっき狩ったピルゥを売れないか交渉してきてくれると助かります」

 「分かったわ」


 目のいいタクは夜ぐっすり眠る代わりに、昼間近場の山に自走植物が現れたりするとエイファに一言行って狩ってくることが多い。肉とパンばかりになってしまう旅で野菜が定期的に食べれるのはアルテとエイファにとっていい誤算だった。

 タクはピルゥの体についた黄色い房と真っ黒に近い緑色の粒を分けて、黄色い房はそのまま籠に、真っ黒にも見える粒は深い皿に入れてぎゅっぎゅと潰す。


 「なあ、タク。ピルゥの種で最近ずっとそれやってるけど、何になるんだよ」

 「あー、コレ? 油」

 「油って………油を取れるのは獣からだろ?」

 「うーん………シノのお母さんのメモにあったから作れると思うんだけど」


 疲れてたまに休憩するが、もんでいるうちにてかてかと輝いてきて、タクの知っているオリーブオイルに近いものになる。


 「んで、なんでいつも失敗するのさ?」

 「それが分からないんだよ………布が荒いのかな? でもきめの細かい布なんて早々手に入らないし………」


 シノの母の残したメモに書いてあったピルゥの油(オリーブオイル)のレシピは、既にシーブも挑戦していたが、ピルゥの種と呼ばれる黒っぽい実がなかなか取れないので手を付けていなかったのだ。それを思い出してタクも油作りに専念しているのだが、どうしても油だけにならず、いい匂いのするねとっとした実を潰したものにしかならないので、そろそろ諦めようかと思っているところである。


 「へぇ、大きいピルゥを仕留めたんですね」

 「ん?」


 タクが目を上げると、割といい布で体を包んだ男が立ってタクの周りに置いてあるピルゥの房と粒を舐めるように見回す。

 ちょっと体を動かしてその後ろを見ると、男と同じような格好をした人が数人固まっていて、エイファが頭を下げてから駆け戻ってくる。


 「タク君、こちら行商人のセレシーデさん。ピルゥを商品と交換してくれないかって言うから来てもらったの」


 お互い自己紹介をして、よく見えるように近くにタクがヴィーラで編んだ座布団もどきを出すと、興味深く眺めてから座る。


 「どうも。これ、君が倒したのかい?」

 「ああ、はい。って言っても、眠らせて刈ってきたってのが正しいけど」


 シノと何度も森に遠征に行ったときに、簡単な調合を教えてもらっているタクはこともなげに言うが、普通自走植物を眠らせて刈るなんてマネはしない。特に待ち伏せをして地面ごと食らうピルゥなどは呼吸音すら気が付くのが困難で、多くの旅人が食べらてしまう食性植物だ。冒険者でさえ、待伏系と言われるピルゥを目撃したらその山に入りたがらない。


 「何と交換してくれます?」

 「う、ん? あぁ、私たちの商品は婦人向けの装飾品でね」

 「俺たちは必要ないな………」

 「うん………」

 「そこを何とかお願いできないかな。君たちとは逆の方向から来たんだけど、多くの町が魔物の被害にあっていてね、なかなか売れなくてね」


 それを聞いてエイファは別の集団の元へと向かっていく。

 タクは目の端で追いながら、手元の粒を潰す作業を話しながら続ける。


 「食料がかなり高騰しててね、町では買えなかったんだ」


 仲間を飢えさせたくないから是非交換に応じてくれないかと続けるセレシーデに、タクは適当に相槌を打ちながらエイファが戻るまでの時間を稼ぐ。

 それにしびれを切らしたのか、セレシーデはアルテの情に訴えかける作戦に出るのだが、実はここまででアルテは二度ほど自称商人に騙されてお金と物資を巻き上げられそうになっており、購入と販売については一切関わらないようにと言われてしまっている。


 「何とか頼めないかな」

 「じゃあ、交換してもいい商品、持ってきてください。生憎今手が離せそうにないんで」


 アルテも苦笑いして答えないのを見て、仕方ないとセレシーデはタクが言ったように商品を持ってこようと席を立つ。


 「なあ、タク。あれは本当なんじゃないのか?」

 「それを今エイファさんが確かめに行ってるだろ。帰ってきてから判断するの」

 「えー」


 孤児院育ちのアルテは、どうしても食事で困っているという人に弱い。分け合える時は自分の分でさえ頓着せずに分けてしまえる我慢強い性格で育ってしまったアルテは、お涙頂戴系の話にかなり弱く、最初に騙された時も、着る物も食べる物もないと言った子供に無償で食べ物を渡してしまったところから始まった。


 「ただいまー」

 「お帰りなさい」

 「お帰りです、どうでした?」

 「うーん、セレシーデっていう服飾系を扱う行商人に心当たりはないけど町で起きたことは本当みたい。買えなくはないけど、買い足すにはちょっと手が伸びない金額って言ってたわ」


 後で見に来るから商品は残しておいてって言われたと告げ、エイファは荷物整理を始める。

 荷物の中にはアルテが練習で倒した兎類や、はぐれのマメロを解体した肉の残りなど、さまざまな食料が入っており、売れるなら町に入るまでに売っておきたいと考えての行動である。

 荷物の中に置いておいて腐ってましたでは笑えない。


 「持って来たよ」


 セレシーデが持ってきたのは、宝石とものすごく高そうな婦人用の貴族服だった。しかも宝石には家紋らしき模様が刻まれており、貴族服は卸したてらしく皺ひとつ、汚れ一つ見当たらない。

 薄い布を沢山使ってふわっと見せるドレスは最近また流行ってきたものらしい。


 「注文があって作ったはいいけど売れなかったんだよ、コレ」


 怪しむ二対の目線に顔を引きつらせながらセレシーデは告げる。


 「できれば野菜大目で、肉があるなら干し肉を少しだけ分けて欲しいんだ。使わなくても裂いて何かに使えるんじゃないかな」


 あまりものを要求しないその男の言い分に、タクは一つ頷き耳飾りは要らないと告げ、黄色い房を人数分とまだ体毛を付けたままのロブを二匹ほど渡す。


 「ロブの緑色の長毛は売れるだろ。これでいいか?」

 「ありがたい。これで飢えなくてすむ」


 ホクホクとして帰って行ったセレシーデの後ろ姿を見ながら、アルテはタクにしてはあまりがっつかなかったなぁと言う感想を抱く。

 エイファがドレスをたたんで鞄の底に突っ込み、荷物整理を続けていると、また別の客が現れる。


 「おう、いろいろ売ってるな」

 「どーも。あんたもなんかいるの?」

 「そうだな、穀物やるから肉が欲しいな」

 「その穀物、粉末?」


 タクは少しも悩まずにそう言う。

 その答えににやりと口の端を吊り上げ、笑い声を上げる客。


 「すまない、そう返して来るやつは少なくてな」


 驚いて首をすくめたアルテに、目尻に溜まった涙を拭きながらそう言う男。


 「んで? 粉末?」

 「いや、まだ粉末になってないやつだ。量り売りをしているんだが、興味はないか」

 「いや、穀物の種類による」

 「それじゃあうちの商品を見てくれ」


 男が出したのは三種類の穀物だった。

 男の説明を聞きながらタクはエイファに買うかどうかの判断を投げる。

 穀物については粉しか見たことがないタクと、穀物を仕入れて料理を作っていた経験のある元治癒術師見習いでは知識の量も大きく異なる。


 「じゃあ、この穀物を。マメロ一塊と同じ重さで」

 「おう。肉の塊持ってきてくれ」


 そういってエイファは男のテントへと、肉を持って付いて行った。

 もちろんアルテも護衛として付いて行ってる。


 「さっきの服、外の布を何枚か重ねたらいい感じに絞れないかな………」


 タクの興味はいまだに油だ。

 布で絞った絞りかすを鍋にあけて、作った石鹸できれいに手を洗い、さっき交換した服を荷物から探り出すと、一番外側にあった薄い布を引きちぎって重ねて濾す。


 「うーん………瓶に入れとけばいいかな? 濁ってるけどもしかしたら沈殿するかもしれないし」


 濾したものを瓶に詰めて蓋を閉め放置する。

 結局大量に残った絞りかすは燃料用に適当に詰めて、数日前につくった乾き始めの絞りかすは馬にやる。なんだか最近馬の毛の艶がよくなってきたようで、周りからじろじろと見られるのに慣れてしまっているタクである。


 「さて、いつ帰ってくるかね」


 鍋をきれいに洗って、夕食を一人作るタクの横で、おいしそうに馬が絞りかすと穀物の混ぜたものを食べる。

 二人が戻ってきた頃には、おいしそうなスープが出来上がっていた。


 □■□■□


 朝食は当番制、軽食はエイファ、夕食はタク、と交代でやっていて、ちょうどその日はタクだったため、ちょっと早く起きてエイファに見張りを頼んだ後、タクは朝の運動と称して近場の山中を卵取りに駆け回った。


 「タク、なんでそう簡単に採ってこれんの」

 「勘。お前が孤児院で過ごしてる間俺は森で親父と暮らしてたからな。このくらいは簡単さ」


 ゆでた卵と肉と野菜をパンで挟んで食べる三人。

 タクが朝食の当番になると、何となく豪華になるので心待ちにしているアルテである。


 「さて、食ったら準備。アルテ、足はどんな感じ?」

 「まあまあかな………固定無くても痛くないから多分大丈夫だと思うけど」


 馬に乗らなくて済むのかなーとアルテが喜色の混じった笑顔をタクに向けると、冷たい笑顔を向けたタクが、アルテの脛を蹴りあげる。


 「痛いっ!」

 「お前は今日も乗馬訓練決定」

 「なっ!」

 「あれ? まだ足痛めてるのね、もう完全に日は上ったし、今日は次の町につけるように急ぎましょう」

 「はーい」

 「タク!? え、足、え?」


 アルテはタクに担ぎ上げられて、荷物のすべてが括り付けられた馬に乗せられる。


 「アルテ、弓持っててよ。矢尻をすこしとがらせてくれるとなお助かる」


 そう言って、タクはいつもは背負っている剣を腰あたりに固定して馬を引く。

 その時になって、タクとエイファがどことなくピリピリしていることに気が付いたアルテは、何かあったのか聞きたくても聞けない現状にイライラする。

 休憩所から見えない場所まで来たところで、タクとエイファが小声で話し合い、アルテをちらちらと見ながら何かを話し合う。


 「あのー………」

 「じゃあそれで」

 「あとでね」


 タクは街道を逸れ山へと走る。

 いつもなら同じ場所でゆっくりとまつのだが、なぜかエイファは馬を引っ張り、街道を進む。


 「え? エイファさん、タクは………」

 「うん、気にしなくても大丈夫よ、もう会うこともないから」

 「え? はい?」


 にっこり笑ったエイファにまた何か始まったよ、と頭を抱えるアルテ。

 いい加減敵をだますなら味方から作戦を止めてほしいと思いながらも、自分は顔に出すぎるから教えられないと言ったタクの言葉ももっともなのでなんとも言えないアルテである。


 「川まで行ってたき火を焚いたら、山に直行するから、準備はしておいてね」


 少ないが情報をくれるエイファに、アルテは頷くと手元の木矢の矢尻を鋭利に尖らせていく。

 馬になれていなかった旅の初めは足腰立たなくなっていたが、今では簡易鞍の上で作業ができるほど慣れ来たアルテである。

 まだまだロルネラまでは遠い。


 ■□■□■


 山に逸れて、山の中の周りがよく見えない場所でじっと気配を消すタク。

 そうしてしばらくすると、がさがさと草をかき分ける音と、山を踏み鳴らす不届きものの声が聞こえて来る。


 「あの小僧が山に逸れたってのは確かなんだろうな」

 「は、はい。確かに山に入っていきました。アルテと言う少年は馬に乗って女性が馬を引いていたのでタクという少年は山に逸れたはずです」


 その声はどちらもタクが聞いた声である。

 タクから肉や野菜を買って行った二人の行商人の声である。


 「あの小僧は金のなる木だ。その実力、俺の商品にしてぇ………」

 「そうすれば、私の主は放してもらえるのですね?」

 「ああ、放してやるとも。あんな我儘お嬢様はもともと俺の趣味じゃねぇ」


 実は、この交渉をタクは卵を取りに行く過程で聞いてしまっていたのである。

 それで思いついたのが今回の作戦。


 「俺に、何か用?」


 タクは、おしゃべりの木、とも呼ばれているディディックという蔓性植物の群生している中心で姿を現さずに、聞こえるか分からないほどの声でそう言う。

 ディディックは、喋りかけられた言葉を、いろんな大きさや声質に変えて繰り返す植物で、太陽の光があればどこでも育つ雑草であるため、森では人を惑わす植物として、街では煩い害草として認識されている有名な雑草だ。

 当然、ディディックを通してタクの声質は大きく変わり、大きさも変わる。


 「ディディックか!」


 ディディックのすごいところは、顔が向いている方向にディディックの葉が向いていれば、音を拾って真似をするところにある。そして、雑踏や森林の音は拾わないのに、動物の声だけを拾って発するのだ。

 今も、「俺に、何か用?」という声と「ディディックか!」という声が混じり合って聞くに堪えない雑音と化している。なかなか途切れないその言葉の連鎖は、声を発すれば発するほど長くなる。


 「くそっ! どこにいる!? 話を聞いたのか!」


 ディディックを見つけたら根元を切り落とそうとはよく言ったものだ。

 爆発的に増えるディディックに耳を傷めながら、蔓の大元を見つけて切断するというのはかなりの重労働である。それしか簡単に止めるしかないのだから、探すしかない。

 特に見つけたい者が近くに居るのならば。

 タクは一言発した後は何も言わずその場から離れた。

 はるか後ろで騒いでいるディディックの声を聞きながら、心の中で大爆笑していた。絶対追ってくるのはわかっているので、次の作戦へとタクは動き出す。ディディックの生えていた森の端、崖の上から飛び降りて、次の舞台になる川沿いへと走る。


 「あははは」


 十分離れて、崖の上で悔しがっている様子を木に登って眺めながら、街道の仲間の様子を確認して、お嬢様が居るらしい折りのような奴隷用の馬車を見つめる。

 結果どう転ぼうと、向かってくる物は倒し、助けを求めるなら助ける。それが今回三人で決めた行動方針だから。

 ディディックを考えていると、九官鳥とファービーを思い出してしまった。


 ファ「ボク、ファービー」

  文 「ファービー、ファービー」


 あんなのが異世界に居たら発狂できる自信がある。


 タクは商人の子供(5歳)レベルの文字の書き方を覚えて、シノ母のレシピ(異世界翻訳版)を覚えたよ!

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