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魔王選定  作者: 華宵 朔灼
第一章 幼少期・ガラム
12/113

07 事の顛末

 二話に分けるべきだったのか……

 シノちゃんの活躍があんまりかけない………


 では11話はじまりますよー

 ガラムの東、倉庫街で、騒動が起こる。

 その倉庫は奴隷を置くために借りているもので、二階には事務所が設置されている。その中の応接間で男が三人話し合っていた。

 壁には剣や盾が飾られ、欲手入れされた煌びやかな装飾が施されたそれを見るに、奴隷商が己よりも上の者をもてなすために使用している部屋だと言うのが一目で分かる。


 「ボス!」

 「来客中だ! 静かにしないか!!」

 「すいません! 今ギルドにっ………」


 人買いと奴隷商、もう一人の男が居る部屋に、奴隷商の部下が入ってくる。

 急いで入って来たその男は、もう一人の男の顔を見て青ざめ言葉を見失う。


 「なんだ? 言え」

 「そのっ、隣町からの要請が来たらしく!」

 「要請?」

 「………」


 奴隷商は部下の言いたいことがつかめず首を傾げ、人買いは指名手配されるような部下を数人頭に思い浮かべる。

 無言を貫いていたもう一人の男を彼は指差して言葉を告げる。


 「そ、の人が指名手配されて」


 男の言葉が最後まで紡がれることは無かった。


 「な、何をなさるんですか!?」

 「ひぃっ!」


 家畜と同じものとして奴隷を売り買いしている奴隷商は男を批判するが、その声に覇気はなく顔は青ざめ、人を家畜に変える為に売り渡している人買いは、胴体と首が綺麗に分かれたその様子を見て腰が抜ける。


 「………流石に早いだろう?」

 「は、早いとは?」

 「………俺の指名手配だ。その者が嘘を言っていた可能性がある。俺がここにいると知るならば、それはお前たちの落ち度のはずだ」


 男の眼光からは何の感情も読み取れない。

 その手に持つ剣から滴る赤い液体が床に落ちる音で奴隷商は我に返った。


 「私どもは何の関与もしておりません! むしろ、なぜあなたが指名手配されて………」

 「うるさいな?」


 男の手が動き、奴隷商の額へと剣が吸い込まれる。


 「殺すのは良いけど、あんまり派手にやると困るんじゃないか? 指名手配されてるのは本当なんだろ?」


 剣が額の前でピタッと止まる。

 奴隷商は白目をむきその場に崩れ落ちる。


 「何者?」

 「んーしがない料理人だ」


 血でぬれた床に躊躇せずに踏み込んだ男の片足は木製だ。


 「………」

 「もうすぐ救援が来るんでね、ちょっと暴れさせてもらうよ」


 片足の男は壁にかけられている盾を取ると、構える。

 血濡れの剣を持つ男と、煌びやかな盾を持つ男の戦いが始まった。

 二階の乱闘騒ぎが一階に届くことは無い。

 しかしいつまでも上司が戻ってこないことをいいことに部下たちは一階で思い思いに動き始める。

 誰も横をすり抜ける幼い少女に気づくことは無かった。


 □■□■□


 シノはシーブと分かれ、ある程度の時間を倉庫の外で隠れて過ごした。


 「もういいかな?」


 作戦は簡単だ。

 シーブが二階で騒ぎを起している間にタクを地下牢から解放する。

 たったそれだけ。


 「………きたない」


 注意散漫な男たちの横を通り過ぎ地下牢へとたどり着いたシノは、その悪臭に辟易し鼻に皺を寄せる。

 地下牢には子供が多く、奴隷として最低限の活動すらできないくらい衰弱している。中には死んでいる者もいる。


 「タクにいちゃん、いる?」


 シノは地下牢全体に聞こえる程度に声を張り上げる。


 「………その声、シノ?」


 なかなか帰ってこない声にシノは不快感をあらわにしながら地下牢を歩いていたが、ある場所からそんな声が聞こえてくる。

 その牢は厳重で、魔術でも、獣術でも、破れないような、そんな強固な牢だった。


 「たすけにきた」

 「帰れ、お前は、小さいから、見つからないだろ。ここから、早く、離れるんだ」


 シノの探していた少年、タクは地下牢の強固な檻の中で横たわっていた。

 タクの声は少しくぐもっていて、暴行を受けたことがあからさまに分かる程度には衰弱しているというのが、声を聞くだけで分かる。

 暗闇に目が慣れ、シノの目に映ったタクの姿は悲惨だった。

 所々破れ、吐瀉物でカピカピになっている服。両手と両足が鎖でつながれ、いたるところに青あざが付いている。

 少なくとも死んでいないということと、こんな状況になってもシノを心配そうに見てくるタクの姿にシノは安堵し、地下の壁にかけられている鍵束を手に取り牢を開ける。


 「シノ、ダメだ。俺は戦える、状態じゃない。助ける、つもりなら、誰かよんで、来てくれ」

 「タクにいちゃん、たすけにきたんだよ?」


 シノは心外とばかり口を尖らせるが、その手はタクの手と足に付けられている鎖へとのび、解放する。


 「タクにいちゃん、ひみつ、ね?」


 解放されたタクはあおむけになり息を整える。

 地面に転がされ、両手両足を縛られた状態で受けた折檻のダメージで、声を出すことさえ困難なのだ。

 しかも多く血を流し何も食べていないせいか、体が冷たく動かそうという意志さえ希薄になっているのを感じる。

 シノはそんなタクの手を掴み、言葉を発する。


 「『“Corpus” quasi ad repraesentandum effestum expectationem. Sanus.』」


 何を言っているのか、タクには分からなかった。

 しかし、それをシノがタクの体に付けて言った時、体に暖かい何かが流れ、体を動かしたいという衝動に駆られる。

 さっきまでの痛みや苦しみが洗い流されたような急激な変化に、タクはシノが仕えないはずの魔術を使ったことなど忘れた。


 「タクにいちゃん、やくそく」


 シノはタクの手を放さず、身を起こしたタクの目を見つめる。

 単語で話されるのは慣れているタクは、シノの約束の内容を今起こったことの全てだと理解し、頷く。


 「ああ、二人だけの秘密、な。………ありがとう」


 シノの表情が少し明るくなったことで、この答えで正解だったんだな、と安堵し、ここからどうやって出ようかとタクは考える。

 タク一人で向かってくるごろつきが数人だったらきっとのすことができただろうが、シノという守る対象がいる今簡単にそれはできない。


 「………暴動。逃げる人数を増やそう」


 幸いにも上から人が降りてくる気配はない。

 シノを矢面に出すことはできないことを考え、タクは同じくとらわれている奴隷候補たちを解放することに決めた。シノの安全を得るためにさらなる絶望を与えようとしているということは分かっているが、タクにとって見知らぬ人はただの他人だ。非道と、非情と言われようが、逃げられるかもしれないという希望の前にそんな些細なことを気にするものはいない。


 「シノ、お前は俺の側を離れるなよ?」


 タクはシノの手を引き、周囲の牢を開放して回る。

 人間族ではないものたちも多く、タクは全ての牢を開放し終わり、余力がありそうな者たちと共に衰弱しきって動けないような者の治療を始める。

 閉じ込められていた者にとってタクは聖人君子のように見えただろう。殴られ蹴られ傷つけられ、その苦しみを知る者たちばかりが居るからこそ、ひどい状態で助けてくれるタクを良い人ととらえるに、そんなに時間はかからなかった。


 「シノ、ここって水、あるかな? ………シノ?」


 衰弱していた者たちを一番出口に近い牢に移動させ、その周囲を動ける者たちで固めたあと、タクは傍らに居るはずのシノに声をかける。


 「シノ? おい、居ないのか?」


 隣にいたはずのシノが居ない。

 森だったら当たり前にあることだが、ここは仕切られた地下牢。いつの間にか忍び寄った敵がシノを無力化して近くに潜んでいると言われても納得できる。

 タクの背に冷たい物が滑りおち、そのタクの雰囲気の変化に気が付いた数人が気を尖らせる。

 静かになった地下牢に、地下牢へと続く階段からの足音が響く。

 無意識に緊張し、何か武器となる物を、と探し始めたタクの耳に、声が届く。


 「おーい、誰かいないかー?」


 そんな緊張感のない声が、仄かな灯りと共に降ってきたのだ。


 ■□■□■


 狩人たちは、悲鳴を上げて逃げる者たちを気にせず、目的の場所へと目を光らせ進んでいく。子供は泣きだし、大人は腰を抜かしたり、叫び声を上げたり、逃げ出したりと大忙しだ。

 それもそのはず。彼らの肩や手には彼らが愛用している武器が担がれたり握られたりしているのだ。恐ろしい。


 「親方、あそこだ。あの倉庫」

 「そうだな」

 「あの布の文字、誰が書いたんだろうな? 嘘だったらどうしてくれようか」

 「………信じろ」


 東の倉庫街の一角で立ち止まった親方の周りにいた狩人たちは数歩後ろへと下がり、見守る。

 親方は深く息を吸い、肩に担いだ槍斧(ハルバート)を構える。


 「すぅー。………ふっ!」


 勢いよく振り回された槍斧。

 良く研がれた刃が見せる銀色の軌跡は、半円を描き、倉庫の壁へと食い込んだ。

 槍斧が食い込んだ場所から蜘蛛の巣状にひびが拡がる。


 「行くぞ」

 「おう!」


 親方が槍斧を引き抜くと同時に壁は崩れ、中の人間たちが丸見えになった。

 中には親方の槍斧を手にいてようと話に来ていた者もいる。


 「な、なんで!?」

 「壁が………」

 「何だよ、あれ!?」


 呆然としていた内部の者たちは気を取り直すが、どう見ても怒りで我を忘れまいとしている集団の前で上手く体が動かせない。


 「俺の息子を返してもらおう」


 そこからは一方的な蹂躙だった。

 弱った人を相手に戦闘を行う町の者と、生きようとしている命を狩る者では、戦いにすらならなかった。

 ある者は肩を貫かれ、ある者は足が折られ、ある者は切り裂かれ、ある者はモノを潰されたが、誰一人として死んだ者はおらず、手加減の元生きていた。


 「一階には居ないな」

 「親方! 地下の階段見つけたんで、見てきます!」


 一階を制圧し、二階に行った者も数人。

 そして地下から大きな声が響く。


 「………おーい、親方! タク見つけたぞ!!」


 親方は声の聞えた方向へと走る。


 「え? 親父来てんの!?」

 「おう、皆でタクを助けに来たんだ」


 顔に傷があり、歯が数本抜けていることで子供によく逃げられるとこぼしていた同僚の声。きっと仄かな灯りの下では、大人でさえ気絶するような不気味さをたたえているだろうことは楽に想像できるが、それ以上に、息子の声が聞こえたということが親方の足を急がせた。


 「タクッ」

 「お、親父」


 タクは牢の前で同僚と話していたようだ。

 親方は驚きと喜びの混ざったタクの顔に安堵するが、その状態で涙を浮かべ顔を歪める愛する息子に駆け寄る。

 手にした槍斧を壁に立てかけ、向かい合った息子にかける言葉が見つからず途方に暮れる親方。


 「タク」

 「親父、ごめんなさい。俺………油断してっ………それ持ってきたのは俺のせいだろ………もう二度と振るわないっていう親父の信念を砕かせた………ごめんなさい」


 壁に立てかけられている槍斧。

 母の仇だと、タクの次に大切な物だと話していた槍斧。

 酒を飲むたびに自慢げに語られる槍斧と親方の旅の話。

 なぜその槍斧を振るわなくなったのか。

 二度と振るうつもりは無いし、ここから出すつもりもない。一度言っていたことを曲げることをすることがない親方の行動にタクは安堵すると共に動揺していた。

 人を切ったわけでないことは一目で分かる。槍の部分には鞘がつき、斧の部分には鞘の代わりとでも言うかのように革が張られ、傷つけないように細工がなされている。


 「タク」

 「俺が、もっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったんだ。………見なかったことに………しておけば、親父がここに来る理由もっ………作らなかった!」


 親方は混乱していた。

 来ては行けなかったのかと。既にいない妻に心の中で問いかけるほどには混乱していた。

 親方が来たのは、帰って来ない息子を迎えに来ただけ。


 「タク」

 「かっとなって………やった事だけど、後悔は、後悔だけは………したくないんだっ。………親父に渡された金で薬買って………それを見知らぬ女の子に渡しちゃったけど、あれがなきゃ傷がどうなってたかは分からない………俺が、俺が怒られない理由にはならないけど、俺は、もっと何か手がったんだろうけど、後悔だけは………したくないんだ」

 「タク」


 少し強い声で親方が名前を呼べば、タクの方はびくっと震える。

 殴られる、そう思ってギュッと目を瞑るが、衝撃はやって来ず、タクが感じたのは包み込むような温かさだった。

 目を開ければ、居たいくらいに抱きしめてくる父親の固い筋肉で覆われた胸が目に入る。

 丸まった背中はいつもより小さく、抱きしめられているタクにはその体が小刻みに震えているのが感じられる。

 ふと、頬に冷たさを感じて上を見上げると、地下牢に降りてきた時以上に顔を歪めた父親の顔が目に入る。


 「タク」

 「親父………泣くのは、男らしくないんじゃ………なかったのかよ」

 「感涙だ」

 「ふは………それは、いいのかよ」

 「泣けるうちに泣いておけ」


 見えないように頭を押さえつけてきた父親の温かい腕。安堵(うで)の中で、タクは年相応に泣き、そのうち疲れて気を失った。


 「初めて見ましたよ、タクが泣いてるとこ」

 「そうか」

 「安心していつも通りになりましたね」

 「………上へ」

 「応援を呼んできてもらえると助かります」

 「わかった」


 親方は気を失ったタクと槍斧を抱え、階段をのぼって行く。

 地下牢から出た親方は数人を地下へと送り、出て来た子供たちに軽い食事を振る舞い、半殺しにしてある者どもをまとめ厳重に縛り付けた。


 「よ!」

 「シーブ?」


 そのうち二階から、気絶した狩人数人を抱えたシーブが降りてくる。

 親方は数少ない友人がなぜここにいるのか分からずに眉間にしわを寄せる。


 「俺行かなきゃならないから、あとは宜しく!」 

 「おい」

 「なんだよ? 二階のやつにかかってる懸賞金は全額お前が持って行ってくれよ、俺がやったってバレると仕事、辞めさせられるかもしれないし」

 「………」


 親方はなぜか直ぐに去ろうとするシーブの腕をつかみ止めるが、シーブの言葉にも頷けるものがあるのでその腕をつかむ力を緩める。


 「酒でも奢ってくれたらそれで十分だからさー」

 「………分かった」

 「さっすが! またな、親方」


 そういって去ったシーブを入れ違いで、また別の男が入って来た。


 「ここか!? ええ! もう捕まってる!!」


 入ってきた男の後ろには町長と冒険者ギルドの受付嬢らしき女性が入ってくる。


 「まさか、こんなに早く解決するとは………」

 「あのー、今日の昼過ぎですが。ここに指名手配犯がいるということが分かりました。その指名手配犯を倒した方に報奨金が支払われえることになります。誰が倒したのか、聞いてもいいでしょうか?」


 指名手配犯とは、二階にいた三人だった。

 誰もかれも死んでおらず、目立った外傷も見られないことから報奨金も跳ね上がることが分かり、別に利益が欲しくて特攻したわけではない狩人たちはそれに付いていけない。

 結局渡された金額は千四百メク。

 銀貨七十枚分の大金だった。


 「皆、半分」

 「ああ、あの坊主がいるっていう孤児院に渡すんだろ? 別にかまわねーさ」

 「金はあって困るわけじゃないけど、あってもじゃまだしなー」

 「………孤児院?」

 「お、タクが起きたぞ!」


 ギルドの面子が子供たちと一緒に犯罪者共を詰め込んだ馬車に入れて去った後、もらった報奨金をどうするか、と話していたところでタクが目覚めた。


 「ああ、タクがどこで捕まってるか書いたメモを警備隊に届けようとした坊主が居てな。その坊主が孤児院の子供だって言うから、親方は渡そうとしてるんだと思うぞ」

 「孤児院ならいつでも金は入用だろ。最近は奴隷に混じって孤児が働いてるみたいだしな」

 「タク、これで目を冷やしておけ。腫れが引くから」


 タクは説明を聞いて、どんな少年が届けてくれたのか疑問に思う。

 なんと言っても、町の外に住むために町の人とはなかなか話す機会が無かったのだ。友達なんていないし、まして心配してくれるような人で年がある程度近いと言えばシノぐらいしかタクには思いつかない。

 皆が去り、銀貨が入った袋を持つと、親方はタクに声をかける。


 「お礼、行くぞ」

 「うん」


 お礼。

 助けてくれたお礼を金銭で払うには少し抵抗がある親子だが、今回の手柄と命を救ってくれたお礼として、一番必要であろう金銭を贈ることにしたのだ。

 しかし、スラム街を進むと、親方の持っている槍斧が周囲の人をむやみやたらに怖がらせてしまい、目的の孤児院についても、なかなか話を聞いてもらえる状態に持ち込めなかった。

 少し迷いながら着いた孤児院では、修道女と懐剣のセットで出迎えられ、なんとか説得してお礼の金額を見せたところで若い修道女が気絶するというハプニングが起き、何とも言えない空気が漂った。


 □■□■□


 アルテはとぼとぼ帰っていた。

 布を届けた後、仕事先で働き、孤児院に帰ってきたのは夕方。

 東の倉庫街で騒動が起きたという話を聞き、気が来ては無かったがそこは仕事が優先。仕事が終わって倉庫街へと行けば封鎖されていて行けないようになっていたりと、結局恩人がどうなったか確かめることもできなかった。


 「はぁ………ただいま」


 孤児院に帰ってきたアルテを迎えたのは年少の子供たち。


 「あ、アルテにいちゃん! おれたちをたすけてくれるヒーローがきたんだよ!!」


 ヒーローという言葉に、なんだか不安が掻き立てられる。

 孤児院にとってのヒーローはお金をくれる人だ。

 里親と偽って子供を買って行く大人でも、何も事情を知らなければヒーローであることに変わりはない。

 それはどんな奴なんだ! と問い詰めそうになったアルテだが、子供たちが指を指す方向に居る人に驚き目を見開いてしまう。


 「君のおかげで俺は助かったらしい。ありがと」


 そこにいたのは、あの時躊躇なく割り込んできた少年だった。

 本当に生きている人なのか不安になったアルテだが、すぐ横でお茶をすする強面の男に気が付き、納得する。


 「よ、良かった」

 「大げさな」

 「いや。俺たちのせいで、関係ないアンタが連れてかれたんだ。罰せられるには十分さ」


 なんせスラムの孤児院の子供だからな、と心の中でつぶやく。

 きっと彼は金持ちの息子なのだろう。自分の身柄を買って、報復をしにきたに違いない。でも、他の子供たちには手を出さないでほしい。

 言葉足らずで、周りの子供たちに分からないようになんとか伝えると、その少年は驚いたように目を見開き、すこし迷ってからニヤッと笑った。


 「んー、じゃあ、罰として」

 「………」

 「俺と友達になってよ」

 「………は?」


 告げられた言葉はアルテの予想を斜め上に行っていた。


 「いや、俺さ。狩人の息子なんだ。立場そんなに変わらないだろ?」


 こっちは父親なんだ、と紹介する少年にアルテは唖然とするしかない。

 スラムの孤児院の少年、南の森の狩人の息子、町民から向けられる視線に大した差はない。貧乏人と蔑み憐れむ目を向けられるか、血で穢れていると蔑み憐れみの目をむけられるか。


 「俺の名前はタク。お前の名前は?」

 「あ、オレはアルテ。本当にいいのか?」

 「いいさ! はい、手ぇ出して!」


 握手! と言いながら笑うタクの顔は、アルテにはとてもまぶしく見えた。

 タクと親方が去った後、修道女にあの時の布が大量の銀貨に化けたことを教えられ、簡単に友達になってよかったのだろうか、と悩むことになる。


 「………変な奴」


 それが、アルテが感じたタクへの第一印象だった。


 ■□■□■

 タクの友人となったアルテ君。

 アルテ君の功績で孤児院が手に入れた金額は七百メク、日本円で大体七十万円です。

 やったね!アルテ君


 ってか、七千文字突破するとは思わなんだ


 明日更新できると思う………

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