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鉄格子
鉄格子は空の血でした
あおいあおい空の血でした
文明にひきさかれた
あおいあおい空の血でした
苦悩を煮詰めた
饐えた味がしました
砂利のように冷たく乾いた
かさぶたをなでるたびに
分かるのであります
猛る雷鳴がわたしの頭蓋で
街を呑むほどの火花となるのが
……/
鉄格子は空の血ではありませんでした
かたく、つめたく、いたかったです
文明を抱いても空はほのかにあおいです
分かるのであります
どこにも雷など鳴っていませんでした
それはわたしがあたまを打つ音でした
空にこころはありませんでした
空はただ、限りなくひろい鏡でした