第4話 鑑定士――持ち込まれる危険を見抜く仕事
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ここは冒険者ギルド。やってくる人間のほとんどが冒険者志望だ。
実は冒険者以外の仕事の斡旋もやってて……って、なんだお前か。
仕事はどうした、サボリか。
休憩? ならいい。
俺は見ての通り、仕事中だよ。
前まで暇で仕方なかったが、最近はぼちぼち人が来るようになってね。
冒険者以外の道もある。そういう認識が広まったんじゃねぇかな。
良い傾向だと思う。どこも人手が足りないからな。
***
「こんにちは~。冒険者以外の仕事を希望してます~。
スキルは鑑定、解呪。魔力B。学院で考古学を専攻してましたぁ~」
おう……。いらっしゃい。
冒険者ギルドの職業窓口へようこそ、お嬢さん。
というか、えらく段取りがいいな?
「はい~。あのですね~。ここで仕事を紹介してもらうなら~、
先に伝えた方が話が早いと聞きましたので~。
あ、一応、証明として~、紙にまとめたのも渡しておきますね~」
ご丁寧にありがとな。
それじゃあ、確認してる間に、魔力測定をこの道具で――
「はい~。事前に測定しておきました~。こちらですね~」
……。
なんだ、おっとりしてるのに、無駄がねぇな……。
「よく言われるんですよね~。私は~、作業は迅速に終わらせたいんですよ~。
おっとりじゃありません~。どちらかというと~せっかちな性分なんですね~。
でも、誰も信じてくれないんです~。
……あの~、確認。まだですか~?」
ああ。悪い。スキルも能力も問題ねぇ。魔力も十分。
学院卒なら、学歴面もクリアだ。
希望はあるか? アンタの能力なら鑑定士が適正で――
「はい~。鑑定士でお願いします~。
あ、さっそく見学って~、させてもらえるのでしょうか~?」
どうも調子が狂うな……。
っと悪い、独り言だ。
見学はすぐできる。こっちだ。
***
着いたぜ。ここが鑑定室。
冒険者が持ち帰った素材や、迷宮の遺物を査定する場所だ。
「はわ~。素晴らしいですね~!
無駄なものがなく~、綺麗に種別分けされています~。
迷宮の品がこんなに丁寧に扱われているなんて~、さすがはギルドです~」
はは。ありがとよ。
ごちゃついてると作業の邪魔になるからな。
整理整頓には気を使ってる場所だぜ。
アンタは考古学を専攻してたんだよな?
やっぱり古い物が好きなのか?
「もちろんですよ~。特に迷宮の品は素晴らしいですね~。
この古い苦みを帯びた香り~。ふんふん~。
ふぁぁ~♡ たまりません~♡」
……ヤバイのを招いたか?
「はえ~? どうかしましたか~?」
何でもねぇ。
作業してるところを見に行くぞ。
おーい。邪魔するぜ。
「あ、チーフ! お疲れ様です。
今日はサポート課のヘルプじゃないんですね」
ああ。お疲れさん。
あっちは今、人が足りているからな。
今日は職場見学の引率ってわけだ。
「じゃあチーフ。こっちを手伝ってくださいよ。
今日は持ち込みが多すぎて、死にそうなんですから」
おいおい。俺は今案内を――
「あの~。こちらの窓口の方も鑑定ができるんですか~?」
「当然です! なんたって『なんでも屋』のチーフですから!
出来ないことなんて――もがっ!」
今日は忙しいんだよな?
手ぇ止めてていいのか? ん?
「んー! んんー!(すみませんすみません!)」
ったく。ほら、説明してやれ。
どれでもいい。何個か鑑定してみろ。
「はい! じゃあ、三つ鑑定しますので、よく見ていてください」
「よろしくお願いします~」
「まずはこの書物です。こちらの機械に置いて登録します」
「登録ですか~?」
そうだ。持ち込まれた物は、まず記録版に登録する。
発見場所、特徴、全部入力だ。
「今回の書物は……すでに登録済み。『水の魔術書(初級)』です。
はい。まず一件完了です」
「なるほど~。すでに登録されている品物は素早く鑑定できるんですね~。
と~っても、効率的です~」
「全部に鑑定してたら、時間も魔力も足りません。
記録版のおかげで、処理できる件数が増えました」
おまけに鑑定スキル必須から推奨に変わったからな。
採用枠も広くできたし、志願者も増えた。
ありがたい話だぜ。
「次は装飾品。指輪ですね。
まずは登録します……おっと、これは、候補が複数あります」
装備品は種類が多いからな。
ここからが、鑑定スキルの出番だ。
「鑑定――『癒しの指輪【自動回復(微)、体力増加(小)、???】』。
……一部鑑定が弾かれてます」
「ん~。これは呪いですね~」
「え!? まだ解析が終わってないのに……」
正解。やるじゃねぇか。
その反応、見覚えがある。
もっと魔力を当てろ。すると刻印が浮かぶはずだ。
神聖な刻印にそっくりの逆さ刻印がな。
「……【反転】の呪い。
だから鑑定の効果がひっくり返ってたのか」
質の悪い奴だ。
それにしても、アンタ良く分かったな。
「私の解呪スキルが反応したので~」
「いやー、すごいですねぇ」
よし。次だ。それは素材だな。
「そうですね。部位は牙でしょうか。登録して――」
「素材はあんまり、興味が湧きませんね~」
おいおい。えり好みするな。素材の鑑定も立派な仕事だ。
「登録済み、サイレントバードの……嘴!? あぶなかった……。誤鑑定するとこだった」
未登録じゃなくて良かったな。
未登録なら、解体師にどの部位か確認して、解析チームに連携しないといけねぇ。
「なるほど~。わかりました~。
それで、次は何を鑑定するんですか~?」
ったく。本当に素材には興味なさそうだな。
いいか。もしここで働きたいなら、全部鑑定しないといけないぞ。
「そこは分かってますよ~。業務ならきちんとやりますので~」
ならいい。次。最後は短剣か?
「魔石の付いた短剣……該当記録なし。遺物ですね」
「すぅー♡ あぁ香しい遺物の香りですぅ~♡」
「か、鑑定……『推定200年前、儀式用ナイフ』」
……まて。その魔石。嫌な気配を感じる。
なんだ? 生きてる?
「嫌な気配ですか~? こんなに素晴らしいのに~」
まずい!
おい! 今すぐそいつを放り投げろ!!
「え? 一体、どういう」
くそ! 貸せっ!!
俺の目は誤魔化せねぇぞぉぉおおお!!
ピキ。ピキピキ。バリンッ!
――キェエエエエエ!!
「ま、魔物ですぅ~!!」
「ひぇええ!! ま、魔石が割れて、魔物が生まれたぁぁぁ!?
け、警報機作動! 鑑定室閉鎖!」
今、結界を張った! 鎮圧チームが来るまで持ちこたえろ!
アンタも結界維持の魔力を貸してくれっ!!
「はい~! お手伝いします~!」
助かる! いいか! これが鑑定士だ!
鑑定士の仕事は、安全な机の上だけの作業じゃねぇ!
こうやって、危険が持ち込まれるんだ!
「そうですね~。こんなスリリングなこともあるなんて~。びっくりです~!」
いいね。アンタ、ほんとこの仕事に適正あるぜ!
良い目つきをしてやがる!
どうする? アンタ、この仕事――
「やりますよ~。まさに天職だと思います~。ぜひ、やらせてください~」
だと思ったぜ。よろしく頼むぜ、期待の新人さんよ!
それじゃあ、命がけの新人研修を始めるか!!




