『????』を持つ青年と牝馬
無事にヒッポカンポスに会えたテイン達。
しかし、そのヒッポカンポスは人間の姿でしかもテインの母親と瓜二つだった。
果たして、ヒッポカンポスの正体は?
「ただいま」
「あ、お帰り」
家の外で待っているコムギに声をかける。
家に戻らず待っててくれたみたいだ。
「帰ったか?」
父さんも家から出てきた。
そして、ミスティの隣の牝馬を見た。
「おお、確かにあの時の牝馬だ、懐かしい元気だったか」
父さんがヒッポカンポスに近づこうとした時、
「懐かしい元気だったかではありません」
ヒッポカンポスが突然喋った。
「わ、わぁ」
父さんはビックリして尻餅をつく。
コムギも僕も驚きながらヒッポカンポスを見た。
「な、なんで喋るんだ?それもその声は」
父さんは何か狼狽える。
ヒッポカンポスはまばゆい光に包まれ、そして光が消えた場所にはヒッポカンポスではなく、1人の女性が立っていた。
それは湖で見た姿。
そして、家に飾っている母さんの写真とそっくりだった。
「私がもし何かあった時は、貴方がテインの面倒をきちんと見てくださいって言いましたよ」
ヒッポカンポス?は父さんに向かって指を振りながら小言を言っている。
「お、おまえ」
父さんはその姿を見て涙していた。
「ただいま、あなた」
ヒッポカンポス?いや母さんは優しそうに微笑んだ。
父さんは何も言わず立ち上がり母さんを抱き締めていた。
「本当にもう」
母さんはなだめるように父さんの背中を叩きながら抱き締めあっていた。
しばらくして、外にある机にみんな集まった。
クロネさんとコムギ、母さんは簡単な食事を準備してくれ、父さんと僕はミスティの飼い葉を運んだきた。
「それで、どうして生き返ったんだ?」
みんな席についた後、父さんは母さんに聞いた。
僕も死んだと聞いていた母親が戻ってきたのが不思議だった。
「そうね、あれは私がレースの時の事故で死んだ時だったわ」
母さんが、事故で死んだ時、産まれて間もなかった僕が心配で死んでも死にきれなかったらしい。
その想いが天に届いたのか、母さんは魂だけになって、家に戻っていたと言うことだ。
父さんが不馴れながらも自分との約束通り、僕を世話してくれている姿をひやひやしながら見守っていた。
僕が子どもの頃感じていた、優しい雰囲気はもしかしたら、母さんの存在を感じていたのかもしれない。
しかし、母さんという有名な騎手を失った牧場は徐々に立ちゆかなくなってなってきていた。
母さんがそれを心配してどうにかしたいと思っていた時に、偶然外の世界に出てきていたヒッポカンポスに出会ったそうだ。
そのヒッポカンポスは外の世界に興味があり、まだまだこの世界にいたいと思っており、母さんもこの世界でまだ、僕たちの力になりたいと思っていた。
2人?の意見が合いヒッポカンポスは母さんの魂と融合した。
それから、ヒッポカンポスは家の牧場に来て、いくつかのレースに参加、勝利し経営はどうにか落ち着いてきた。
しかし、ヒッポカンポスは自分の世界から戻るように言われて、仕方なくこの牧場を去ったそうだ。
母さんとは融合していた為、母さんも一緒に行く事になった。
元の世界に帰ったヒッポカンポスと母さんは、ヒッポカンポスの長に会い、残してきた子ども達のそばにいたいと願い出て、やっと許しをもらいこの世界に戻ってきたと言うわけだ。
「本当に頑固親父でね、かなり時間がたってしまったの、ごめんなさいね」
「ううん、いいよ、こうやって戻ってきてくれたんだから」
僕は笑顔で母さんに答える。
「しかし、また戻らないといけないのじゃないか?」
父さんは心配そうに聞いた。
「それは大丈夫、もうこちらの世界で居続けれるように説得してきてるから」
「そうか」
父さんと僕は安堵する。
コムギも、一緒に喜んでくれた。
「後は、異種競走大会に入賞するたけでですね」
お茶を置きながらクロネさんが言う。
そうだ、それに勝たないと家は潰れてしまう。
「本当にあなたもしっかりしてくださいね」
母さんは少し怒った顔で父さんに言った。
罰悪そうな父さんだったが、なんか怒られて嬉しそうだ。
「それでは、私が考えた特訓プランを発表させていただきます」
クロネさんはその場で立つとみんなを見渡す。
「では、特訓ですが午前、午後の2回に分けて行います。
午前は、テインさんにはお母さま、ミスティにはお父さまについてもらい、テインさんはお母さまの騎手としての技術を学んでいただきます。
ミスティにはお父さまに、競馬としての訓練を受けてもらいます」
父さん母さんが頷く。
父さんの目は昔のように生き生きとしていた。
「午後は、テインさんには私が、ミスティにはヒッポカンポスについてもらい、テインは基礎体力をミスティには眠っている力を呼び覚ましていただきます、ちなみにコムギさんには了解を得て、私とコムギさんで食事や家の事等はさせていただきますので、安心して訓練に力を注いでください」
「いいのか?コムギ」
僕が聞くと「まっかせて」と胸をトンと叩いた。
「いい、お嫁さんになれるわね」
と母さんがいうと、コムギはなぜかめちゃくちゃ照れていた。
そして、次の日から訓練が始まった。
母さんから教わる騎手の技術は、今までほぼ独学だった僕には驚く事がいっぱいだった。
この『馬体真眼』は実は母さんも持っていて、それを使い走っている時の馬の調子を見ながら適切にサポートしていく感じのものだった。
馬を走らせるのではなく、なるべく自由に走れるようにサポートするのが母さんのやり方はだった。
午後のクロネさんの特訓は昔からやっているとは言え、いつもより激しめだった。
牧場の馬場をいつもより10周多く走ったり、筋肉トレーニングもいつもの倍行った。
さすがに夜にはへとへとだ。
ミスティも現役時代に戻った父さんの適切な訓練でめきめきと力をつけていた。
母さん曰く「ミスティには『人一倍』というスキルを持っている」らしい。
『人一倍』とは他と同じ訓練をしたとしても、その訓練次第で身に付く力が2倍3倍となるスキルだそうだ。
そのお陰で昔から他の馬より成長が早かった。
そして、ヒッポカンポスの血をひいている事で、そのポテンシャルは今だ限界ではなかった。
午後からは、馬の姿になった母さん、ヒッポカンポスと寄り添いながらずっと目を閉じていた。
人でいう瞑想を行って自分の中の力を引き出す訓練だそうだ。
訓練は順調に進み、大会は徐々に近づいてきていた。
残り2日からは僕はミスティに乗り2人で午前は訓練することになった。
乗って一緒に走る事で分かる。
ミスティがすごく力をつけた事。
そして、僕が前よりミスティの力を出せている感じ。
これなら、大会もいけるはず。
「あの2人ならやれそうだな」
「ええ、私とミルキーが遂に出来なかったあのスキルを」
母さんと父さんの前を走った時に聞こえた。
母さんとミスティの父親が出来なかったスキル。
それを、僕たちならやれるのか?
走りながらミスティの首を撫でる。
「ヒヒーン」
ミスティも分かっているのだろう、元気に返事をした。
さぁ、大会は目の前に迫っている。
勝ちにいこうミスティ。
次がこの章ラストになります。
果たして、テイン達は無事に入賞出きるのか?
様々な生き物が出る異種競走大会が今始まる。




