『人馬一体』を持つ者達
いよいよ始まった異種競走大会。
果たして、テイン達の行く末は。
とうとうこの日が来たんだ。
僕とミスティは見渡す限りの荒野に立っていた。
全長1000キロ、山あり谷あり川ありの異種競走大会専用のレース場だ。
母さんと父さんから教わる事はこの10日で詰め込んだ。
ミスティとの合同特訓も十分に仕上げられた。
後はこのレースを勝つだけだ。
コースは前半500キロ山、谷、川の変化にとんだ道のり、その後、500キロの直線を走りきり、父さんや母さん、クロネさんにコムギが待つゴール会場に向かう。
ルール上コースには罠は仕掛けられない。
ただ、レース中は参加者同士の妨害工作は認められている、どうにかそれをかわしながら走らないといけない。
「おまたせいたしました~」
突然大きな声がスタート地点に響き渡る。
頭上に巨大な顔が浮かび上がった。
魔法の類いなんだろう、レースの実況者だ。
「これより、第26回異種競走大会を始めたいと思います。
進行は実況のこの私、マイクロ・マイクとこの大陸を納めるアナウ王様でお送りいたします」
アナウ王、レース好きで知られ、いくつものレースの解説もしているこの大会の主催者の1人。
「よろしくお願いします」
アナウ王がゆっくりと頭を下げた。
解説者としても有名で、喋りもすごく丁寧だ。
「現在スタート地点では、各参加者達がスタートラインにつく準備をしております。
それでは、このレースのルールをもう一度お伝えしします。
レース上に罠を仕掛けるのは禁止。
空間、次元スキルでの瞬間移動は禁止。
以上、選手同士のバトルは禁止されていませんので、相手を倒すもよし、戦わず逃げきるのもよし、個々に合った走りをお願いします」
マイクの言う通り、僕達は運営委員に誘導され、スタートラインの方に向かっている。
「今回の注目選手はいらっしゃますか?」
「そうですね。
まずは、前回の優勝者である青龍に乗るシェン選手」
そう紹介され頭上はシェン選手と青龍が写し出される。わられ
「今回も十分仕上げられていますね。、噂では新たなスキルやブレスも習得したとの事で、早さだけでなく攻撃の方も力を入れてますね」
「なるほど、人気も一番人気になっております」
「続いて、皇帝タコに乗るクラッシ選手。
その皇帝タコの攻撃は凄まじいですね、1本1㎞はある足を8本同時に使い暴れる姿はその何に恥じない強さです。ただ、スピード事態はそこまで早くはないですね」
「なるほど、手元の資料によりますと、このクラッシ選手は前回とはスポンサーが、変わっているみたいですね。スポンサーはライブンとなっています」
ライブンだって?
なるほど、もともとレース中に潰すつもりで父さんに参加を促したのか。
「…が今回の注目選手ですね」
あ、深く考え過ぎて残りの選手の説明聞きそびれた。
「それとこれは個人的に注目している選手ですが」
アナウ王は一息ついてから喋り始める。
「テイン騎手とミスティチームですね」
いきなり名前を呼ばれて、僕はミスティの上で頭上を見上げ続けた。
「どうして、その選手を注目されているんてすか?」
「それは、何年か前になりますが、伝説と言われた騎手の息子さんと馬の子馬になるからです。
私が初めてレースに魅了されたチームと言っていいでしょう。
その子ども達が出場となると否が応でも注目してしまいますよ」
「なるほど、アナウ王の思い出の選手の子どもさん達てすね、これは期待できるかもしれません。
それでは、いよいよ、スタートです」
僕はミスティとスタート地点につく。
周りには役50近くの選手がスタート地点に並んでいる。
ミスティの首に触る。
そこには会場に行く前にクロネさんがくれた赤いマフリャーと言う防寒具が巻かれていた。
もちろん、僕も着けている。
クロネさんが手渡しで「私からの贈り物です、頑張って」とくれたのが本当に心強かった。
「ヒヒーン」
ミスティもこちらを見た。
そうだね、行こうか。
ここらからが本番だ。
自分の首の赤いマフリャーを握り前を見る。
ミスティも今から行く道をずっと見つめている。
「それでは、アナウ王お願いします」
「では、正々堂々と戦い走り抜ける事を期待します」
頭上には、3つのランプ浮かび上がる。
あのランプに火が全部灯ればスタートだ。
1つ目、2つ目、そして、最後に緑の火が灯った。
スタートと同時に大きな音をたてながら選手が次々と前に出た。
「皇帝タコ、『八足蹂躙』」
「おおっとスタート直後、皇帝タコの必殺技が炸裂だ。
皇帝タコの足が周りの大地を強打している」
「これは皇帝タコの必勝パターンですね、この技で毎回多くの選手が敗退しています。
今回も半数近くの選手が脱落しているみたいですね」
「確かに。しかし、アナウ王の注目選手は、この混乱の中抜け出して走っている。
先頭はやはりシェン選手。
いや、その先に一騎走っています。
あれは…テイン選手だ。
しかし、スタートしてすぐに5キロ地点とは。
あっと、大会委員会で瞬間移動ではないかと協議に入っています。
こちらにも映像が来ましたね」
「これは…まさか」
「スタートと同時にスロー映像でも捉えきれないスピードでテイン選手が、飛び出ています」
「やはり、『ロケットスタート』です。
やはり、伝説の馬の子ども、親馬のスキルを受け継いでいたとは」
「『ロケットスタート』ですか?」
「ええ、さっきお伝えした伝説の騎手と馬が使い、幾多のレースを総なめにした伝説のスキルです。
スタートと同時に莫大な力が発揮され、瞬く間に数キロを走ってしまうスキルですね。
瞬間移動ではないので違反ではないです」
「アナウ王の言う通り、協議の結果、違反にはならないようですね」
「しかし、またあの伝説のスキルが見れるとは感動です」
上手くいった。
母さんから教えてもらった、ミスティのもう1つのスキル『ロケットスタート』
タイミングばっちりミスティに伝えられた。
このまましばらくは逃げに徹する。
「さぁ、始まりました、異種競走大会。
ただいま、100キロを越えたところで先頭はテイン選手、その後をシェン選手が追っております。
スタート地点で大技を披露したクラッシ選手もその巨体で追っております」
「あの技の中、抜け出した選手は実力は十分にもっています。
まだまだ分かりませんね」
「確かにこの1000キロの道のりをほぼ1日で走りきるこのレース。
どこで何が起こるか分かりません。
さぁ、先頭はまもなく山間に入って行きます。
足場も悪く道も狭いこの場所でどうレースが展開されるのか楽しみです」
ここが母さん達が言ってた場所。
確かに狭い道だ。
でも、こういった狭い道を走るのも練習したんだ。
「ヒヒーン」
ミスティが突然僕に向かって鳴く。
そして、横の崖をシェン選手が通り抜いていった。
「くそう、竜だから飛べるのか」
「あっと、ここでテイン選手抜かれた」
「さすがに飛行タイプはこのコース有利てすね。
規定上、コースから数キロ以上、上空を飛んではいけないとなっていますが、ここはシェン選手分かっていましたね」
「シェン選手、ほぼテイン選手の横を通っていますので高さ的にもコースと同じくらいですね。
そのまま、テイン選手との差を広げていきます」
それから、僕は谷のコース、川沿いのコース等をシェン選手に死に物狂いで着いていった。
「さぁ、残り100キロで折り返しの超直線に入ります。
この100キロで折り返しの先頭を決める最終争いだ」
あと、少し。
シェン選手は目の前に見えているのに届かない。
『馬体真眼』でミスティを見てるけどまだ余力は十分にあるのになぜ。
その時、僕は父さんから聞いた言葉を思い出した。
「母さんは昔、乗っているのに乗ってないように見えたってよく言われてたよ」と。
『人馬一体』か。
その後、クロネさんに聞いたら言っていた。
人と馬の気持ちを1つにすれば、僕達2人の本当の力が目覚めるって。
乗って操るんじゃない。
乗って共に導く。
僕だけじゃなく、ミスティと一緒にこのレースを走っていくんだ。
「ヒヒーン」
ミスティにも僕の気持ちが届いたのか元気な声が聞こえる。
そっとミスティの首を撫でる。
「行こう、ミスティ一緒に。
まだまだ、行けるよ」
僕達は目の前を走るシェン選手を追いかけた。
しかし、この時に後ろから迫る選手に僕達はまだ気付けてはいなかった。
ラストの予定でしたが、後1話伸びます。
次がラストになりますのでお待ちください。
では、次までお楽しみに




