麒麟児~研究所の反乱鎮圧~
アン達の戦いを見ていたクロノはゆっくりと立ち上がった。
仲間達の勝利は決定的だ。
クロノは反乱を終わらせる為、仕上げにとりかかる。
「さてと」
俺はゆっくりと椅子から立ち上がった。
上部の4枚のスクリーンでは、仲間達がそれぞれ悪魔を倒そうとしているところだった。
後は俺がやつの後ろにいる悪魔を倒せば、この反乱も終わりか。
首謀者であるアビルズは、スクリーンを見ながら落胆した顔をしている。
最強だと思っていた悪魔達がやられているんだから仕方ないだろうな。
「ファモン、1つ頼み事してもいいか?」
俺は肩に乗っている人形のようなファモンに声をかける。
「なんだい?」
「俺が今からあいつの後ろにいる悪魔を倒してくる。
そろそろアン達も戻るだろうから、それまであいつが逃げたりしないように見ててくれるか?」
「かまわないよ」
「あ、何かあってもやりすぎないようにしてくれよ」
俺の言葉にファモンはにやりと笑う。
見た目は人形だが、れっきとした悪魔だからな。
「それじゃ、行ってくる」
俺は一歩前に出る。
それに気づいたのか、アビルズは慌てて立ち上がった。
ま、相手はアビルズじゃない。
これだけ劣性を見せられても余裕で立っている、あの悪魔2体だ。
俺は両手を前に突き出す。
同時に『次元転移』を使った。
一瞬で俺と悪魔は別の場所に移動した。
「ほう、こんなこともできるんだな」
次元の狭間。
1度、ファモンと戦う時に来た場所だ。
場所を変えても驚かないか。
俺の前にいる2体の悪魔は腕組みをしたまま、こちらを見ている。
ま、確かに余裕を見せれるくらい魔力を吸収してるみたいだな。
『魔力感知』を使って悪魔を見たが、俺が3体の悪魔とアン達を別の場所に移動してから、狼狽えていたアビルズの持つ、賢者の杖を触媒として、地下からありったけの魔力を吸いだしていたみたいだからな。
今の2体ならクリスも一撃では倒せないだろう。
「さて、仲間達がすぐに戻ってくるからさっさと終わらそうか」
「ああ、我らもお前達を殺し、主面しているあいつから賢者の杖を奪い、好き勝手にさせてもらうつもりだからな」
「そっか、自由が欲しいわけだ」
「はは、別に今でも自由さ、餌を集めさせるのにあいつを使ったまでだ」
悪魔は口を歪め笑っている。
「魔力が餌か」
俺は『封印』しているスキルを解放する。
解放するスキルは魔法全般のスキル。
「それじゃ、今から俺が餌を与えてやるよ」
「火の悪魔を見てなかったのか?
我らに魔法は通じないし、魔力は無尽蔵に吸収する」
「別にかまわないよ、どこまで耐えれるのか見てみたいしな」
俺は悪魔に向かって魔法を放つ。
『無詠唱』『魔力強大』その他もろもろのスキルが発動。
「ダブルゴッドブレス」
悪魔の上下から凄まじい圧力がかかる。
「がぁ~」
2体の悪魔は苦しみの声をあげながら潰されまいと耐えている。
「な、なぜだ、魔法を吸収できない」
「ファイナルメテオ」
悪魔の上から巨大な隕石が降り注ぐ。
「 」
声にならないのかそれとも隕石が降っているから悲鳴が聞こえないのか、悪魔達の周りは今や地獄と化していた。
「コキュートスゼロ」
先程までの音が消える。
悪魔達ごとその一帯の空間が凍りついた。
見た目的にはまだ悪魔達は大丈夫そうか?
「破滅の矢」
俺の回りに光輝く矢が浮かび、悪魔に放つ。
その矢が通った場所の氷は初めから何もなかったように消滅していた。
悪魔達の体にも穴が開く。
「インフェルノボール」
自分の頭上に巨大な炎の玉を生み出し、悪魔に打ち出す。
巨大な爆音と大量の水蒸気が舞い上がった後、明らかに魔力が減った悪魔2体が立っていた。
その顔からは余裕がなくなり、こちらを見る目も恐怖に変わっている。
「魔力を吸収できるって言ってたっけ?」
俺は悪魔に問う。
「『吸収無効』っていうスキルがあってさ、それをお前達に付与した。
俺からのギフトだ」
『吸収無効』
相手に魔力や力を吸収されるのを防ぐスキルだが、落とし穴があり自分も相手から吸収出来なくなってしまうスキル。
さっきこの場所に移動する一瞬で『空間転移』を使いスキルを付与した。
「な」
開いた口が塞がらないのか、悪魔が固まる。
「お、おまえは何者だ」
最近よく聞くフレーズを言われる。
「なんかみんな聞いてくるよな、それ」
俺は腰の剣に手をかけた。
悪魔達が構える。
「ただのBランク冒険者だよ」
俺は愛用のブロードソードに魔力を込める。
さて、アンがやったのと同じ事ができるかな?
『剣神』『俊敏』『縮地』『消滅』『封印』のスキルを発動。
自分の剣の技量を数段アップさせ、素早さも上げる。
相手の距離を一瞬で詰め、2体の悪魔を斬る。
と同時に『消滅』を発動させて、消滅させるが一旦『封印』
そのまま、相手の間をすり抜ける。
「偽技 二斬滅殺」
俺はブロードソードを足元の空間に突き刺し、悪魔達が振り替える瞬間、『封印』を解除。
悪魔達は音もなく消滅した。
『消滅』のスキルも相手が格下なら発動率が高まるけど今回は上手くいったか。
空間からブロードソードを抜き、2振りした後腰に戻す。
「スキルを使いまくったらアンの技も再現はできるか」
今のうちに出来ることをしないと最後に恥をかくからな。
「さて、戻るとするか」
俺は『転移』を使いアン達が待つであろう元の空間に戻った。
「やっと帰って来た」
アンが俺を見つけて駆け寄ってくる。
その後ろには別の空間に運んだ仲間達が戻ってきていた。
案の定、アビルズは騎士団に取り押さえられ縄で縛られていた。
「アン達が取り押さえたのか?」
「ううん、戻った時には心ここにあらずの感じでぼーとしてた」
アンの言葉を聞き、ファモンを見た。
ファモンはウォーサンの肩で、顔を合わさず口笛を吹いている。
はぁ、俺が移動した後すぐに『威圧』でも放ったか。
「ま、みんな無事で何よりだ」
俺の言葉にアン達も笑顔で頷く。
騎士団の中から、イクシオが賢者の杖を持って出てきた。
「よくやってくれた。
被害も最小限で食い止められた、感謝する」
「いや、今回はみんなが頑張った成果だよ、そちらも被害は少なかったようだな」
「ああ、実力者を集めての作戦だったからな」
イクシオは笑顔で答える。
「それと、これは君に渡しておこう」
イクシオは賢者の杖を差し出してきた。
「いいのか?」
「ああ、君が帰ってくる間に話を聞かせてもらった。
君の旅にはこれが必要になるのだろう?
それにこの杖はここにあっても誰も使えない事が今回で分かったからな」
俺は賢者の杖を受け取り、お礼を言った。
これで2つの承諾と神器を集められた。
やっとこの世界での目的が果たせそうだ。
「よかったね、お師匠さま」
俺はアンの頭を撫でた。
「ああ、ありがとうな」
笑顔で言うと、アンも笑顔で答えてくれた。
「さぁ、今夜は作戦の成功を祝っての祝賀会だ、急いで戻るぞ」
イクシオの声に騎士団は大きな声で答える。
俺達も頷き、一度俺達はアルケルに戻った。
研究所の反乱も終結し、クロノは神への道に必要な物を集められました。
物語は佳境に入ります。
今しばらくクロノとアンの冒険にお付き合いください。




