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逆鱗のハルトⅡ  作者:
83/308

助けたいと思うのです。①

******


夜が明ける頃には、山を越えて麓に辿り着いていた。

速度アップもあったから、かなり距離を稼げたはずだ。


口数もすっかり減って、皆必死に歩を進めるだけ。

俺もそろそろ限界かもしれない。


「平原……下りてきたね」

先頭のボーザックが呟き、空を見上げる。

東から明るくなってきていて、もう少ししたら太陽が顔を出すだろう。


平原は遥か向こうまで続いていて、草が生い茂り、その真ん中を街道が綺麗に切り分けているようだった。

ぽつぽつと木も生えていて、成る程、たくさんの生命の息吹を感じることが出来る。


「街までどれ位だ?」

グランが聞くと、アマルスが唸った。

「このペースなら半日……ってとこか。体力が持てばいいが……止まってらんねぇしな」


……半日か。

全員バフを4重に統一するべきかもな……。

ヤヌはエニルを背負っているのに、まだしっかりとした足取りだ。

楽に耐えられるだろうと思った。

……きっとアマルスも、それくらいなら何とかなるはず。


考えていると、『嫌な感じ』が奔り、背中がぞわりとした。

瞬間、ボーザックとディティアが同時に振り返る。


シャアンッ!


ディティアの双剣が抜き放たれて、彼女は腰を落として声を上げた。

「後ろから……何か来ます!」


「グルル……」

フェンがグランの傍に駆け寄って、体勢を低くし、唸る。


「ハルト!肉体硬化が欲しい!」

「わかった、肉体硬化!」

俺はボーザックの言葉に、五感アップを書き換えた。

ディティアと自分のも同様にして、グランとファルーアにも投げる。

「フェン、来い!」

「ガウッ」

フェンにもバフを呑み込ませ、双剣を構えるけど……後ろには山脈が聳えるだけで、何の姿も見えない。


「……くそ、あの蛇か。彼奴ら、しくじったのか」

グランが大盾を構え、続けた。

「飛び出してきたところを叩くぞ!」


「出て来た瞬間に土で串刺しにして足止めするわ」

ファルーアがくるりと杖を回す。

「足は無いけどね……っと!」

ボーザックがグランと並ぶ。


「お、おい……!戦うつもりなのかよ!?」

俺達を見ていたアマルスが、信じられないとでも言いたげな顔をする。

ヤヌも、青ざめていた。


グランがこっちを向いて、頷く。

俺は頷き返して、2人にバフを飛ばし、同時に上書きもした。


「持久力アップ!……持久力アップ、速度アップ、脚力アップ!いいか、街まで死ぬ気で走れ!」

これで4重。

半日も保たないバフだけど、かなりの距離を稼げるはずだった。


「な……あんた、何を言ってんだ!?」

「貴方達に魔物が行かないようにするくらい、簡単よ。……さっさと行きなさい」

ファルーアが振り返らずにぴしゃりと言い切ると、

「おいアマルス、ヤヌ。俺達の言ったこと覚えてるな?」

グランがさらに言い募った。

「そ、それは……でも」

「エニルを助けたいんだろう?」

「……っ」

ヤヌはグランに言葉を紡ごうとして、言葉に詰まる。

それを一瞥してから、グランは肩越しに右手を2回、振った。


さっさと行けってことだろう。


太陽が顔を出し始め、山脈を向いた俺達の左手から、平原に光が奔ってくる。

草が、木が、目覚めていく。


「来るよ!!」

ボーザックの声。


『そいつ』は、飛び退いたボーザックとフェンが居た場所から、獲物を貪ろうと凄まじい勢いで飛び出してきた!


ズゴオオォォンッ!!!


「早く行け!!」

痺れを切らしたグランが怒鳴る。


「……っ、か、必ず、街で!!」

ヤヌが。

「くそ、いいか!待ってるぞ!」

アマルスが。


踵を返して走り出す。


「うーん、俺達って格好良い!」

ボーザックが、じりじりと間合いを測りながら、戯けて見せた。


赤い鱗が日の光に鈍く光る。

細かい牙がびっしりと並んだ口から、舌がちろちろと覗いた。

……やっぱり、かなりでかい。

俺よりも高い位置に頭がある。


「突きなさい!!」

ドゴオォッ!!


そこに、ファルーアの一撃。

太い針のようになった土が大蛇の身体を…………貫けなかった。


大蛇の身体に当たった土の針は、先からボロボロと崩れる。


「キシャアァアーーーッ!!」

上下に大きく開け放たれた口から威嚇音が放たれ、ぼたぼたと涎が零れ落ちた。


「っ!……土じゃ柔らかすぎたわね!!」

ファルーアが金の髪を振り乱し、すぐに杖をかざす。


「凍りなさい!!」

キィンッ!!


今度は大蛇が飛び出してきた穴を、大蛇の身体ごと氷が塞ぐ。


「……っ、駄目ね、これもすぐ破られるわ!」

「任せて!やあぁ―ッ!!」

その氷より上、ボーザックが大剣を思い切り振り抜いた。


ガキィンッ


「うぐっ……か、硬ッ!……っと、と」

しかし、その大剣はいとも容易く弾かれてしまう。

ボーザックは着地した瞬間、蹌踉めいた。

それを見逃さず、大蛇がボーザックに向かって首を振り下ろす!

「ボーザック!」

ディティアが声を上げ、小柄な大剣使いを後ろに引っ張った。

「おおおぉぉっらあ!!」

ドカアッ!!

さらにグランがぶん殴り、大蛇の軌道が逸れる。


バキバキバキッ


同時に、凍らせていた部分が砕け散ったけど……くそ、あれでもダメージは無さそうだ。


大蛇は眼を爛々と光らせて、ゆっくりとグランの方に向き直る。


「こいつは……ちとやべぇな」

「体力が、保たないかも……」

ボーザックは身体の前で剣を構えたまま、歯を食いしばった。


そこで、ディティアが俺の横に駆けてくる。

「……ハルト君」

「どうした」


彼女は、真剣な顔で言った。


「あんなに大きな口だから……バフ、出来ないかな」



本日分の投稿です。

読者の方がファルーアを描いてくださいました!


『逆鱗のハルト設定』にばっちり投稿予定なので、よかったら見てくださいね。


本日もありがとうございます!

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