助けたいと思うのです。②
俺は、ディティアの宝石のような眼に、驚いた顔をした自分が映るのを見た。
真剣な眼差しに、自然と、やる気が満ちてくる。
……まだ、敵の身体を柔らかくしたり弱体化するようなデバフは使えないけど、それでもやりようはあった。
俺はバッファーだ。
「やってみる」
彼女にしっかりと頷く。
ディティアは、切羽詰まった状況なのに微笑んでくれた。
「時間は稼ぐから。……グランさん!」
「任せろ!」
ディティアが、さっと走り出す。
「おら、こっちだ!」
グランは大蛇が首をゆらゆらさせて攻撃の隙を狙う間、盾で身を隠すようにしながら、ゆっくりと移動し、注意を引いた。
俺は五感アップを練り上げて、大蛇を見据える。
ちろちろと出し入れされる舌。
……次にグランを狙って口を開けた瞬間が勝負だ。
「どうした!来ねぇのか?」
グランは、足を止める。
大蛇はそれを好機と捉えたらしい。
「キシャアァアーーーッ!!」
口を思い切り開けて鳴き声を響かせる。
……いける!
「五感アップ!!」
俺は五感アップを飛ばした。
練り上げたバフの塊が、大蛇の口の中へと飛び込んでいく。
「五感アップ、五感アップ!!」
さらに投げ、それが口の中に入ったと同時に、ボーザックとディティアが動いた。
「たあぁ―!」
「はぁっ!」
気合一閃。
左右から放たれた攻撃が、大蛇を捉える。
瞬間、大蛇は激しく身をよじった。
その勢いは凄まじく、2人は弾かれるようにして距離を取る。
表皮に傷は見当たらないが、恐らくは激しい痛みを感じているはずだ。
ファルーアがすかさず炎の球で追撃した。
ボ、ボボン!!
「シャアアァーッ!!」
たまらなくなったんだろう。
大蛇は1度身を縮こませると、空中に半円を描いて地面に大穴を開け、一気に潜り始めた。
「くそ、逃げやがる!」
グランが叫び、うねる身体に盾を叩きつけたけど、弾かれてしまう。
「ここで逃がしたら誰か犠牲になるかもしれません!」
ディティアが唇を噛み締めた。
「逃がすか―ッ!!」
俺は双剣を構え、穴から穴へとずるずる入り込んでいく大蛇に走り寄りながら、バフを練る。
「腕力アップ、腕力アップ、腕力アップ、肉体強化!!」
自分にかかった全てのバフを書き換え、俺はそのまま大蛇へと向かって突っ込んだ。
「はあぁぁ―ッ!!突き破れぇぇ―ッ!」
両腕を振り上げ、ありったけの力を込めて、双剣を突き立ててやる。
ドンッ……!!
表皮を突き破り、刃が赤い体躯にずぶりと沈む。
途端に、大蛇は身体をぐねぐねと激しく振り動かし、周りの地面がボコボコと割れる。
「くっ、うおぁっ……!!」
双剣を放すわけにはいかない。
俺は柄をしっかり握り締めたまま、激しく揺さぶられた。
足が地面から離れて、遠心力に引っ張られる。
「ハルト君!!」
ディティアが走ってきて、双剣を振り抜く。
ガキンッ!ガキッ!!
「……く、硬い……!」
眉を寄せ、彼女はさらに連続で斬り掛かった。
まるで、踊るような足取りに、振り回されながらも釘付けになる。
……速い。
しかし。
ズオオォォッ!!
再び、大蛇が鎌首を穴から引っこ抜いた。
爛々とした眼は明らかな怒りを湛え、突き刺した双剣を握り締めた俺を捉える。
赤い体には纏わり付いた土。
それが、ぼろぼろと崩れて落ちた。
ディティアは続けて刃を振り抜くけど、駄目だ。
びくともしない。
「くそ……!!」
逃げようにも、突き刺したままの双剣はしっかりと奥深くまで沈んでいて。
引っ張っても抜けなくて。
それでも、放して逃げなかったのは、信じていたからだ。
必ず、大丈夫と。
「なら……ここは!!」
ディティアが踏み切る。
顔を俺に向けていた大蛇は、無意識に頭を低くしていたため、彼女は風のように駆け抜ける。
それは、ディティアに気付いた大蛇が、俺から意識を逸らした瞬間のことだ。
「行きます!!」
ザンッ!!
―ディティアの鮮やかな一閃が、大蛇の片眼を切り裂いた。
1日分の投稿です。
遅くなりました……!
よろしくお願いします!!




