そして幸せを手にする
本日三話目の投稿です。
前話、及び前前話をお読みでない方はそちらからお読み下さい。
いよいよ邪王との決戦が目前に迫った。
恐らく最終決戦ではレンを気遣い守る程の余裕はないだろうから、その身の安全の為、レンは最寄りの村に置いて行く事になった。
不安そうに俺にすがりつくレンを優しく抱き締め、『必ずレンの元へ帰ってくるよ。待っていて』と囁き、その額にキスを落とす。
すると、すがりついていた手から力が緩む。
顔を覗き込めば、レンは真っ赤な顔をして、目をパチパチとしきりに瞬いていた。
ああ、可愛い。
『じゃあ、行って来ます』とその頭をひと撫でしてから、邪王の城に向かって歩き出す。
戻って来たその時はきっと、レンは安堵の涙を流すだろう。
そしたらまた優しく抱き締めて、その涙を拭うんだ。
ソイ殿じゃなく、俺が。
出発時にレンがすがったのは、他の誰でもなく、俺なんだから。
★ ☆ ★ ☆ ★
無事に邪王を倒し、王都へと凱旋する、その帰路。
俺は大忙しだった。
邪王の城に赴く前は俺にすがりついてくれたのに、そこから戻った時でさえ俺の腕の中にいてくれたのに、今は隙あればレンはソイ殿に近づくのだ。
俺はその都度レンを抱き上げ、元いた場所へ連れて行く。
そしてその後はしっかり手を握り、離さない。
レンには悪いが、とにかく徹底阻止だ。
レンは誰にも渡さない。
そんなふうにソイ殿との交流阻止に精を出していた俺だったけれど、ある日それが徒労だった事を知る。
なんとレンは、ソイ殿の国に観光に行こうとしていただけらしい。
襲い掛かる脱力感と、勘違いによる行動からの羞恥心。
それならそうと俺に言ってくれれば、この旅が終わってからにはなるけど、レンが望むならどこにでも連れて行くのに……!!
……けれど、それなら、結婚後の新婚旅行先は決定だ。
きっとレンはソイ殿の国だけでなく、他の国にも観光に行きたいだろうから、間は空くだろうけど、きちんと休みを貰って、順に連れて行ってあげたい。
レンと二人きりで旅行かぁ……ああ、楽しみが増えたな。
花嫁姿も絶対可愛いし……うぅ、早く見たい。
心配していた事がただの勘違いとわかって心底安心した事も相まって、幸せな想像に気持ちが盛り上がってしまった俺は、ついレンを連れ出し、ちょっとだけ、味見をしてしまった。
顔を真っ赤にしてアワアワしているレンは、物凄く可愛いくて……味見だけで済ませるのに、かなりの努力を要してしまう。
そして。
王都へと凱旋した俺は、その半年後、世界一幸せな結婚式を上げたのだった。
いかがでしたでしょうか……ユゼの行動の謎がしっかり捕捉できていたならいいのですが。
これにて本当に完結です。
お読み戴き、ありがとうございました!