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69.落ちる
- 落ちる -
歩むべき道は分かってる
でも、その先への一歩が重くて
ずっとその場で立ち尽くす
恐怖心で身体が硬直して
気怠さで前へ進む気力は薄れ
心が先へと向かう事を拒絶する
前へ前進しようとも
後ろへと後退しようとも
何も出来ずに苦しんで
気が付けば、浮遊感に襲われ
奈落のような深い穴の中に
私はゆっくりと落ちていく
どこまでも、どこまでも
地面にすら辿り着くことなく
落下していく
星の外へと落ちるように
私が私でなくなるように
記憶が少しずつ抜け落ちていく
耳元に聞こえる
『早く逢いに来て』と言う
少女の声に答えるように
私の瞼が重くなっていき
意識は泥沼に飲まれるように
奈落の底へと落ちる