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第47話 秘められた力

 ルドガーは、ジルベルトが問い掛けた言葉に僅かに表情を揺らすが何も口を開かない。

 その様子を暫く黙って見ていたジルベルトは、再度彼へ問い掛けた。


「貴様はレティシアの何を望んでいる?

 容姿か? 内面か? 王妃としての知識か?

 それとも………

 レティシアの()()力であるのか?」


 ジルベルトの言葉に、ルドガーは小さくピクリと反応する。

 その小さな反応を見逃さなかったジルベルトは、怒りが更に増しレティシアを抱き寄せている手に力が入った。


 ジルベルトが発したレティシアの『力』という言葉に反応したのは、ルドガーの他にレティシア本人とアランだけであり、他の者達はジルベルトの言葉の意図すらわからなかった。




 レティシアの『力』……

 公にされている彼女の魔力は、治癒魔力を持っている事であった。

 ただ、治癒魔力は国内で多くはないが他に持つ者もおり珍しい魔力ではない。

 他国の王族が危険を侵してまで、手に入れたいと望むような力ではなかった。

 では、何故ジルベルトはルドガーへレティシアの『力』を望んでいるのか? と、問い掛けたのか?

 その理由がわかる者は、国内でレティシアが『青の雫』への過度な反応を示すという事を知る者よりも、より僅かな者しかいない。

 ジルベルト自身がそのレティシアの『力』を知ったのは、本当に偶然の出来事であった。




 ───今から十年程前に遡る……


 王城に遊びに来ていたレティシアは、ジルベルトの事を探していた。

 その理由は、先程アランに付いて王城の鍛練場へ行った時の出来事を、彼女も目の当たりにしていたからだ。

 二人の思い出の池の畔に、ジルベルトが座っている姿を見つけたレティシアは、近寄っても良いのか迷いながらも、ゆっくりとジルベルトの側へ足を進める。


『……ジル………?』


 レティシアの声に振り向いたジルベルトは、何時もとは違う複雑な笑みをレティシアへ向けた。


『レティ、どうしたの?』


『あの……、大丈夫?』


 レティシアのその言葉に、ジルベルトは複雑な表情を浮かべる。


『ああ………、レティもさっき鍛練場にいたのか……

 格好悪い所を見られてしまったのだね……』


『そんな……』


 悔しさを滲ませたジルベルトは、レティシアにポツリと気持ちを溢してしまう。


『今日の手合いで、オスカーに立て続けに二回も負けてしまった……

 あの場では笑って「すごいね」なんて言っていたけれど、悔しさが込み上げて……

 あの場に居られず、ここに来ていたんだ

 って、レティの前でこんな弱音を溢して本当に格好悪いな……、私は……』


『ジルは格好悪くなんてない!』


 レティシアはそう言うと、ジルベルトの両手を握り締めた。

 そして次には、ジルベルトの全身がホワリと温かさで包まれる。


『レティ……? 何を……?』


 ジルベルトは初め、自分の身体の至るところに擦り傷があったので、レティシアの持っている魔力である治癒魔術で癒してくれているのかと思った。

 しかし、治癒魔術とは何かが違う事に気が付く。


『え……? レティ!? 何をしてるのだっ!?』


『ジルはとっても強いわ

 そんな悲しい顔をしないで?

 次はオスカー様にきっと勝てるから、ジルが勝てるようにお願い……してる……の──』


『お願い……?』


 レティシアとジルベルトをキラキラとした光が包み込んだ時、ジルベルトは膨大な魔力を自身の身体の中で感じた。

 その瞬間、自分の手を握っていたレティシアの手の力が弱まり、レティシアの身体が揺らぐ。

 ジルベルトは咄嗟に、倒れたレティシアを抱き止める。


『レティっ!?』


 ジルベルトは、その時はまだ何が自分に起きたのかよくわからなかったが、自分とレティシアの身体に何かが起きている事は感じとっていた。

 抱き止めたレティシアの息は荒く、全力疾走したような大量の汗をかいている事に、ジルベルトは焦りが大きくなり彼女を抱き上げ王城へ急いで戻ろうと自分の魔力を使った時に、自分の変化にジルベルトは気が付く。



 ◇*◇*◇




 レティシアの様子を侍医が診ている間、ジルベルトは国王の私室に居た。

 そこには、父親である国王、宰相でレティシアの父親であるハーヴィル公爵、そしてジルベルトの三人だけが集められ、護衛等は部屋の外の扉前ではなく、そよりも離れた廊下の先にある場所へ待機させられていた。

 何時もとは違う雰囲気であり、普段は冷静である宰相が臣下としての口調ではない荒々しい口調で、国王と言い合いをしていたのだ。


『レティシアを王室で預かるだと!?

 レティシアを政治利用する気か!?』


『そうではない!

 一番安全な場所で保護した方が良いのではないかと考えたのだ!』


『何が一番安全だ!

 一番危険な場所の間違いではないか!』


『だが、これ以上お前が娘にその力によって起こり得る事を伝えなければ、もっと危険な事にだって成りかねないのだぞ!

 人の持ち得る能力全てを増強出来る力など、幼い娘が抱えきれるものではないではないか!

 強欲な者に知られれば、その力を利用しようと狙われるだけだ!』



 国王と宰相の言い合いを聞きながら、ジルベルトは自分の手のひらをじっと見詰める。

 レティシアが自分の手を握り締め願った時に起こった事……

 己の魔力も身体能力や他の力も全てが鍛練をした訳でもないのに増大している事に気が付いた。

 宰相の話からすると、レティシアは今までに何度か無意識に事を起こした事があるらしい。

 初めは宰相達も気のせいだと思ったようだが、何度目かの時にレティシアの持ち合わせている力だと確信したとの事であった。

 レティシアが無意識にその『力』を使った相手が、両親や彼女の兄であるアランであった事も幸いし、そんな力をレティシアが持ち合わせている事はまだ誰も知らない事であった。

 他にその事を知っていたのは、宰相の再従兄弟であり古くからの友人でもある国王だけである。

 だが、今回その力をジルベルトにも使ってしまった事に、このまま内密に放っておく事は出来ないのではないかと感じた国王と、レティシアを危険に晒したくはない宰相が意見を違えていたのだ。


 専門的な機関で確認している訳ではないが、レティシアの『力』とは……

 相手の持ち合わせている全ての能力を、増強する事が出来るという力であった。

 だが、その力を使う度レティシア自身の身体には大きな負荷がかかる事も、再認識されたのだ。


 ジルベルトは宰相を見据える。

 国王と宰相の話に割り込む事は控えなければならない事は理解していたが、伝える時は今しかないと強く思い口を開いた。


『宰相、お願いがあります』


 突然のジルベルトの言葉に、言い合いをしていた国王と宰相はジルベルトへ顔を向ける。


『ジル突然何だ?』


『………殿下、何でありましょうか?』


『レティシアを、私の妃に望みたいと宰相に願います』


 宰相であるハーヴィル公爵は表情をさらに険しくし、ジルベルトへ鋭い視線を向けた。


『殿下、今の陛下と私の話を聞いておられなかったのですか?

 私は政治利用されるような立場に、レティシアは置きたくはありません

 殿下にとって、レティシアの『力』は手に入れたいものであるかもしれません

 ですが不敬だとされたとしても、父親としてそれだけは絶対に許す事は出来かねます!』


 宰相の言葉に、ジルベルトはずっと胸に秘めていた想いを言葉にした。


『宰相、私を見くびらないでください!

 レティシアの力を使って、自分の能力を強くしたいなど思える訳がないでしょう!?

 私に無意識に……

 いえ、レティシアの私へ向けた言葉からも、恐らく自分の力を既にある程度彼女は認識していたのでしょうね

 しかし、レティシアはその力を使ったせいで、今、高熱を出して動けない状態であります

 そんなレティシアの様子を見て、私がその力を欲するとでも?

 そんな力などなくとも、私自身の力でこの国を率いていける存在になる為の努力は惜しまない

 私が望んでいるのは、レティシアのその秘められた力などではなく、レティシア自身を望んでいるのです!

 ずっと以前から、レティシアへ私は想いを寄せていました

 時がきたらこの想いをレティシアに伝え、宰相に婚約の打診を願い出ようとずっと前から思っていたのです!』


 ジルベルトは強い気持ちで宰相と向き合った。

 これは、まだレティシアがジルベルトの筆頭婚約者となる以前の話である───



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