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必殺学生人  作者: 神保知己夫
レポート用紙 3冊目
32/42

こちらスネーク

 おばはんは戻ってきてドタドタ掃除とかしてたみたいだけど、しばらくしたらどっかに出て行った。押し入れから出ていろいろ見て回ったけど、べつに普通の両親と娘一人の三人家族ってとこみたいだった。スポーツバッグからジーパンとジャンパー出して着替えてさっそく仕事に取りかかった。プランの最初のやつはダメになったから、天井裏這っていくしかない。ありがちなのは押し入れの天井が開くようになってるってのだけど、釘で打っ付けてあって駄目。次にトイレの天井にハッチがあるってのだけど、これもない。しかたないから押し入れの天井のベニヤこじ開けることにした。釘抜きが要るから家の中じゅうを探した。ベランダの汚い棚の工具入れの中にあった。こじ開けるのにデカい音出せないし一時間位かかったけど、無駄だった。このマンションっていうか、どこでもそうかもしれないけど部屋ごとに天井裏もコンクリートの仕切りがあって他の部屋に行けないようになってた。どっと疲れたけど収穫ゼロで帰る気にもなれなかった。実は清春は最初からクロロホルムもないんだし、いま組長殺しを実行するのはヤメにして昨日買った電話盗聴機を使うのを主張してた。三万円くらいのやつ。そこらへんの予算が増えたのは三村に必要経費をもらってるからだ。会うたんびに二万ずつくらいくれる。そんなことより俺はうまくいけばここで山野殺すつもりだったから清春無視したんだけど、こうなったらここで殺すのはあきらめなきゃなんないだろう。でも急にやる気がうせて、寒くなったからエアコンつけてテレビぼーっと観てたりしたら清春がせっついた。

“さぼってないで電話回線さがせよ。”

「こういうとこのってどうなってるんだろうな。」

“各部屋ごとに引いてあるんだったらベランダだろうな。”

「各部屋じゃなかったら?」

“各階か建物一個で一本引いて中で分岐してるかどっちかだろうな。”

「各階だったらめんどくさいな。この部屋からだったら反対側が見えないし。」

“屋上に行けばわかるじゃねえか。”

「ここ屋上に入れるのかなあ。」

“行きゃあわかるよ。こんなとこに座ってないで、まずベランダから見ろよ。早く!”

 清春にせかされてベランダに出た。回線は来てない。屋上は洗濯物干す場所になってたので入れたけど、各階に入ってるような電線はなかった。ということはどこかに分波器があるはずだ。

“まず配電盤みたいな扉さがすことだな。”

 こういうの?とか心で言ってエレベーター降りた正面にあった灰色の鉄の扉開けたらいきなりドンピシャだったけど、びっくりしたのはもうすでに盗聴機が二、三個ぶら下がってたことだ。ひとつは俺の買ったやつとそっくりのやつだから間違いない。でもまあいいやと思って部屋に帰って盗聴機をとってきて、さきに付けてあるのを参考にしておんなじように取り付けた。途中で一人後ろを通ったけどジャンパーが灰色で作業服みたいだったし、帽子かぶって横に工具箱置いて当然て感じでやってたから問題なかったようだ。ヤクザかどうかは後ろ見なかったからわからない。部屋に戻って持ってきてたFMラジオつけたけどそれらしいのがいくつか入って、もうどれが俺の盗聴機の周波数だかわからなかった。で、気がついたら昼近くなっていた。ここのおばはんがパートだったら午後に帰ってくるおそれはある。盗聴ってのはじっくり腰を落ち着けてやる必要があるから、ずっとここにいるわけにはいかない。でも離れすぎると盗聴機の電波が届かなくなるし、この近くだったらおまわりがウヨウヨだろうからかえってヤバい。そこでとりあえずベランダに出た。部屋ごとのベランダはコンクリートの仕切りがしてあるけどドアが付いてる。鍵は掛かってないけど開けらんないように針金が巻いてあった。こんなものは楽勝ではずして隣を覗いた。ヤクザがコタツでゴロゴロしてる。ダメだ。反対側の隣はなんにもなくて、いかにも無人の部屋だった。サッシも開いてたので中に入ったら隅っこに食い物のゴミがビニール袋に入ったやつが何個かあった。前に人がいたらしいけど、この前の手入れで連れてかれたのかもしれない。一応ドアは鍵が掛かってるし大丈夫だろう。もし何人か来ても二、三人だったら騒がさないで殺せるだろう。ということでこの部屋でじっくり盗聴しながら、ついでにこのレポート書いている。でもここはなんにもないからあんまり寒いんで、おばはんの部屋から毛布を一枚失敬してきた。もう夕方になったから電気つけられないし、この辺で書くのをやめよう。盗聴はいつまでかかるかわからない。


参考)https://www.jp-only-you.net/item/ut-600

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