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6.心が壊れていく音 【完】


長女が小学校五年生の時、

私の元へ来ることになった。


元旦那が、

暴力を振るっていたことがわかったからだ。


あの時、

胸の奥がぐちゃぐちゃだった。


助けられてよかった。


でも同時に、

「どうしてもっと早く気づけなかったんだろう」

という罪悪感も消えなかった。


両親は、

そんな長女を急に溺愛し始めた。


まるで、

“かわいそうな孫”を守る自分たちに酔っているみたいだった。


私は複雑だった。


でも、

波風を立てないように、

また黙った。


その頃、旦那さんと子供達と相談して

私は四人目を妊娠していた。


初めて自分から望んだ子だった。


でも切迫早産になった。


動かない方がいいと医師に言われていた。

薬を処方され、自宅安静を指示された。


それでも父は言った。


「なんで家事をしない」


「家事しないならその腹蹴り飛ばすぞ」


「それでお前らがどうなろうと知らんがな」


私は、

何も言い返せなかった。


怖かった。


ずっと昔から、

恐怖で従うことしか知らなかったから。


なんとか出産した後

長女が中学生になり、

反抗期が来た。


家にいたくないと言って、

頻繁に実家へ行っていたらしい。


ある日、

両親が突然家へ来た。


そして、

一時間半ずっと私を罵倒した。


「ちゃんと話をしろ」


でも、

話しかけても娘は無視した。


どうしたらよかったのか、

私にはわからなかった。


「なんでそう思うんかね」


私が考えを言えばそれは即座に否定された。


「実際何もできてない」


「他の人見てみろ」


「全然できてない」


何をしても、

“できてない人間”にされた


私は昔から、

ずっとそうだった。


家事をしても、

頑張っても、

賞を取っても、

耐えても、

認められたことがない。


小学校の頃から、

ずっと奴隷みたいに生きてきた。


「両親が来たら守ってね」そう約束したのに

旦那さんも沈黙して私を庇ってくれなかった。


気づけば、

もう限界だった。


ある日、

私は死のうとした。


でも、

未遂に終わった。


死ねなかった。


助かった、

というより、

終われなかった、

という感覚に近かった。


旦那さんと子供に泣かれた。

「守れなくてごめん」

「生きて欲しい」

「ママ居なくならないで」


何も感じなかった。ただ涙が溢れ続けた

だけだった。


その後、

精神的に限界になり、

次女の小学校卒業を機に引っ越した。


市役所に保護措置もしてもらった。


やっと逃げられる。


そう思った。


でも、

心はもう壊れていた。


長女が実家と繋がっている。


その事実だけで、

父がいつ来るかわからない恐怖が消えなかった。


外へ出るのが怖くなった。


父と同じ車種を見るだけで、

動悸がして吐き気がする。


人の視線が怖い。


後ろを振り返ってしまう。


それで、

仕事へ行けなくなった。


家事もできなくなった。


お風呂にも入れなくなった。


旦那さんが、

私の頭や身体を洗ってくれる。


申し訳なかった。


情けなかった。


食欲も減った。


少しのことで泣くようになった。


二歳の子どもの世話すら、

しんどくなった。


好きだったゲームも、

できなくなった。


それが一番苦しかった。


好きなものを、

好きと思えなくなっていたから。


何のために生きているのか、

わからなかった。


ただ、

ぼーっと時間だけが過ぎていく。


旦那さんが、

家事も育児もしてくれる。


優しくしてくれる。


なのに私は、

何も返せない。


「私なんか居ない方が、

みんな楽なんじゃないか」


そう思う日が増えた。


消えてしまいたい。


苦しい。


もう終わりたい。


そんなことばかり考えるようになった。


それでも、

旦那さんや子どもたちは、

生きていてほしいと言う。


だから私は、

今日も拷問のように感じながら

ただ生きている。


なぜ生きているか意味はまだ、

わからないままだけど。

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