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第1話 ゲロから始まる異世界召喚

異世界転生作品です。よろしくお願いします

 壁に架かるロウソクの火だけの薄暗い部屋。


「オェェェェ~~~。ゲロゲロゲロ~~~、げぇぇぇ~~~」


 俺は昼に食べた物を胃の中から全部出していた。

 

これがTV放送しているなら間違いなくモザイク、またはキラキラとした物が口から出ている事になっているだろうね。

 見たこともない部屋。自分がなぜここに居るのか。

 

 そんな事はどうでもいい。

 

 とりあえずこの胸に溜まった気持ち悪さを何とかしたい。


「おいおい、物語の主人公がゲロで始まるなんて良くないと思うぞ。もう少しカッコいい所を見せた方が良いと思うのだが」


 隣に居る老人が何か戯言を言っている気がするが、そんな事を気にしている余裕は全くない。

 とりあえず出す物を全部出してすっきりしたい。今の気持ちはただそれだけ。


「まあ、ワシも経験したから気持ちは分かるが。しかし、そこまでゲロを吐くとは……お前、乗り物酔いするタイプか?」


「うるさいな。なんなんだよ、あんた! って、オエェェェ~~」


「まだ出るのか。本当に酔いやすいタイプじゃな。まあいい。で、名前は? いい加減にしないと本当にゲロ野郎と書かれる事になるぞ」


「お、俺の名前は、ま、真鳥麒麟まどりきりん。うっぷ!」


 やっとの思いで自分の名前を言った瞬間、また胃液が逆流してくる。

 しかし、その間隔は先ほどよりも長くなっていて、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。

 

 まだ青い顔をしていると自覚しながら、俺の様子を興味津々で見ていた老人にやっと話しかけることが出来るようになった。


「な、なあ、ここはどこなんだ?」


「お前、敬語という言葉を知らんのか? それともお前がいた時代には敬語がないのか?」


「ふぅ。ここはどこですか? 教えてください」


「初めからそのように素直な態度で尋ねてくれれば、こちらも素直に教えるはずだったのだが……そう言えば少し肩がこったかな?」


「ジジイ、いい加減にしろよ」


 元来、自分でいうのもなんだが、俺は怒りっぽい性格ではない。

 どちらかと言えばのんびり屋。そして色んな経験をしている老人には敬意を払うほうだと自負している。


 だが、このジジイ……もとい、このご老人には敬意を払う事が出来ない。さっきから続く気持ち悪さ&吐き気も絶対にこのご老人が関与しているに違いない。


 大体、ここがどこかも分からず、このご老人も誰かも分からない状況でいきなり敬えとか、俺はそこまで出来た人間ではない。


「早く答えろよ! ここはどこなんだよ!」


 そう言いながら俺は現在の状況を頭の中で整理してみた。


(確か、学校が終わって)


 そうだ、学校が終わってから友達とゲームセンターに行ったんだ。

 お金が無くなった俺は友達に先に帰ると伝えて、河川敷を歩いていた。

 そうしたらいきなり変な穴が現れて、俺はその穴に吸い込まれたんだ。


「なんじゃ、自分の状況が分かっているではないか。これなら説明はいらんの」


「いや、いるだろ! って、俺の考えている事が分かるのかよ!」


 本を読みながら淡々と話す老人にツッコミを入れる。すると老人は俺に本を見せて


「ほら、ここに書いてある」


 と、ドヤ顔でふんぞり返った。俺はその本をひったくると流し読みをする。


「な、な、なんじゃこりゃ~!」


「モノマネか? この本の読者はその凄かった名俳優は知らないと思うぞ」


「この流れでなぜモノマネをすると思うの?」


 名俳優のモノマネはどうでもいいが、その本には俺の個人情報、身長や体重はもちろん血液型や性格まで事細かく書いてある。


 しかも物語形式になっていて、俺の気持ちや心情、ここに至る経緯、現在いる場所から状況説明まで、ご丁寧に振り仮名付きで書いてあった。


「だから言ったのだ。お前が物語の主人公だと。ゲロから始まる物語、主人公になるぞと。まあ、これもインパクトがあって良いのかの」


「いいわけないだろ! 何も知らずに連れて来られて、何をどうしろっていうんだよ!」


「しょうがないの。あまり時間がないのでな。簡単に説明するぞ。勇者の教育係をしろ。わかったか?」


「短すぎるわ! というか、意味すら分からん。何がどうしてそうなった?」


 全く意味が分からない。

 時間がないと言いながら全然話が進まない。どうすれば話が進むのか。

 もう頭を抱えるしかなかった。そんな俺の様子を見た老人は大きくため息をつく。


 ……いや、こうなったのは誰のせいだよ。なんであんたが残念そうな目で俺を見るんだよ。


「ワシの名はファギー。でも忘れて良い。どうせワシの名前は、お前の物語の序盤にしかでないからの。とりあえずお前に渡しておく物がある」


 そう言いながら老人はサバイバルゲームで使うような拳銃を2丁、俺に手渡してきた。1つはハンドガン。

 もう1つはTVでよく見る軍隊などで使っているようなアサルトライフル。なぜこんな物を自分に渡してきたのか。

 

俺の頭の中は完全に理解の範疇を超えていた。

 

 そんな時、俺達のいる部屋が突然揺れ出した。

 今まで経験したことのない大きな揺れに俺とファギーと名乗るジジイ、もといご老人は思わず片膝を付いた。

 地震とは違って明らかに不自然な揺れ方。


「おうおう、本当にあまり時間が無いみたいじゃの。わしが教える事は2つじゃ。その銃はお前にしか使えない。そしてこの世界を救う手助けをしろ。以上だ」


「いや、本当に意味がわからん。とりあえず凄く嫌な予感しかしないんだが」


「うむ、その嫌な予感は当たると思うぞ。と言っている間に来たみたいじゃな」


 この部屋に続く廊下から明らかに走って近づいてくる足音が聞こえてくる。

 そして勢いよく部屋に飛び込んで来たのは俺と同じ歳位の少女だった。


「ファギー、そろそろここも崩れると思う」


「うむ、わかった。おう、こいつがそうじゃ。名前は麒麟だそうじゃ」


 走ってきた少女は無表情だがかなり可愛い。

 俺の顔が思わず赤くなるのが分かる。

 ストレートの長い銀髪。緑色の澄んだ瞳が特徴的な彼女はピタッとした鎧を着込み、スタイルもかなり良いのが見て取れる。

 走ってきたはずなのに息1つ乱さず、こっちを見ている少女は


「了解したわ」


 と、そう言いつつ、少しだけ顔を赤らめながらこっちに近づいてきた。

 そして後ろ襟を持たれるといきなり走り出し始める。


「な、何っ? うわっ!」

 

 人間とは思えないほどの速さで駆け出す少女。

 そしてそんな少女に引っ張られる俺。

 後ろ襟で締め付けられ息苦しさに悶えながらも、崩れ落ちる部屋の中を見ると優しい顔をしたファギーが微笑んでいた。


「おい、あのじいさん、死んじゃうぞ!」


「問題ないわ」


「ないわけないだろぉぉぉ~~!」



楽しんで頂けたら嬉しいです

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