〜ご討伐〜
勢いだったとはいえ、面倒なことを請け負った気がする。
女の色仕掛けと、時計の機械仕掛けに、男は弱いからね!
なんて、バカなことを考えてても仕方ない。
とりあえず草原を抜けて城に向おう。
「ミカさん、一つ聞きたいんですけど、そのモンスターというか、危ない生き物っているんですか?」
「いるよー!」
「…やっぱりいるんだ。…戦わないとダメかな?けど、ケンカ嫌いだし…」
「何ブツブツ言ってるのさー!?だいじょーぶ!全然怖くない!だってお芝居だもん」
いやいやいや!怖いよ!
根拠もまったくないし、まずその自信はどこからくるの?
だいたい、説得の時使った「お芝居」ってフレーズかなり気にいってんだろ!
もし襲いかかってきたらどうすんのよ?
武器もないし、服も寝巻きのジャージだし。
不安を感じながら、草原を歩いていると
「陽くん!ほらっ!あれ見て!」
ミカさんが大きな声をあげながら、何かを指差した。
指差した方向を見ると、焼け焦げた木が2本並んでいた。燃え落ちたのか木は短く、左右に残った枝も黒くなっていた。
「悲惨ですね。辺りにもぽつぽつあるみたいですがこれもアドリブのきかない魔王の影響ですか?」
「そうなの!魔王の影響でね…ところどころにいるの」
「いるっていうのはどういうことです?」
「あれ!?陽くん、違和感なかった?草原なのに焦げた木があって、同じのが他のところにもいくつかある。不自然じゃない?」
「確かに。言われてみればおかしいですね。
となると、どういうことです?」
「だーかーら!あれは…」
ガサッガザッ
突然、2本の木が動き出した。細い根を器用に動かしこちらに向かってくる。
さっきまで、まったく動かなかった木がものすごい勢いで迫ってくる。
怖い。表情もなく迫ってくる。
近づいてきた1体の木が俺に向かって枝を突き刺してきた。
とっさに身を伏せたが、かわしきれず首に鋭い痛みが走った。
「…っつぅ」
思わず声が出る。
首元に暖かいものが流れるのを感じる。
触らないし、敢えて確認しない。怖いから。
まずはどうするか、だ。
見上げると、木は肘を曲げるかのように枝をしならせ、突きを繰り出す構えをしていた。
もう、頭が真っ白になって周りの様子が目に入らなくなった。覚悟を決め俺は地面を思いっきり蹴り、木に向かって突進した。
ばきっという渇いた音がなり、同時に木が真っ二つに折れ、動きが止まった。
俺は突進の勢いで芝生を転がり背中から落ちるように大の字になった。
「ハァハァ…まじか、あれ」
全身から汗が出る、呼吸が乱れ息をするのもしんどい。ずっと寝そべっていたい、そう思った。
ガサッ…
嫌な音が聞こえ、体が反射的に飛び上がる。
見るともう一体の木が前に立っていた。
思わず後ずさる。
動けるよう少し前傾になり構えるが、さっきの突進でかなり体力を使ったので正直きつい。肩で息をするのが精一杯だ。突きの攻撃なんて避けれる自信がない。
どうする?逃げるか?
いや、体力的に無理だ。
逃げ切れても、そのあとどうする?
それよりミカさんは?
奴らに必死で様子を見る余裕なんてなかったからな。
それより、こいつは何なんだ?
ミカさんが言ってた危ない生き物?
てか、攻撃してこない?
「ハァ…ハァ…」
五分ほどたった気がする。呼吸も落ち着いてきた。しかし、攻撃してこない。1体目はいきなり突きだったのに。ずっと、体をくねくねしている。
「…ふぅ」
十分ほどたったと思う。完全に呼吸も戻りだいぶ楽になった。けど、こいつはずっとくねくねしてる。踊って挑発してる?
「……ウゼェー!!」
十五分くらいたったくらいで限界がきた。
ずっと緊張しながら相手を様子見、しかし相手はずっとくねくねくねくね、馬鹿馬鹿しくなって、飛び蹴りした。
「バキッ」
渇いた音がなり、木は真っ二つになった。
くねくねしていた木は動かなくなった。
「なんだったんだよ、こいつ…」
思わず口にしてしまう。1体目に比べるとすごく安全だったが拍子抜けな気がする。
木だけにね。
なんて、バカなことを言ってる場合じゃない。ミカさんはどこにいったんだ?
「おーい!陽くん!だいじょーぶだった?」
「なんとか、大丈夫でした。それよりミカさんどこに居たんですか?」
「お城の近くまで!様子見に!」
え?なにそれ?助ける気なかったパターン?
お城に助けを求めにいったとかじゃないんだ。お城の様子見なんだ…。
「助けてくれないんですね」
「無事に倒せたし、大丈夫だったから良いよね!命が一番!」
でた、言い訳してるのかわからないけど勢いで乗り切るミカさん独特のパターン。
「まぁ、確かにそうですけど…」
「よし!もうお城はちかいよー!れっつごー!」
勢いすげぇなこの人。




