第287話 王都の工房
「お帰りなさいませ」
スピネル他使用人一同が師匠と俺を迎えた。
師匠の屋敷は第二の俺の家になっている気がする。
使用人たちが荷ほどきをして、俺の部屋に運び込んでくれた。
着いたのは夕方だったので、お風呂に入って着替えてすぐ夕食だった。
「さて、明後日からまた前期が始まるが、研究室の論文を卒院の論文とするといい」
「え、それでいいの?」
「優秀な論文であれば、上級学院の推薦もつけられるぞ」
「上級学院か……僕、卒院したらルヴェールに戻るつもりだったから」
「領主様はまだまだ元気だ。上級学院を卒院する頃には成人になる。それまでいろいろと勉強もできるぞ。領経営とか、な。俺としては魔法学院を勧めたいが」
「師匠の弟子だから、どっちかというとそうだよね」
師匠は飛び級をして一年早く魔法学院に入学したから、弟子が師匠の後を追うならそうなんだよね。
「錬金術師として腕を磨いてほしいのもあるがな」
「論文と、単位の早期取得、上級学院への準備?」
「そんなところだろう。迷ったら相談してくれ。俺だけじゃなく、ご両親にもだぞ」
「はい」
師匠が優しい目で俺を見て微笑んだ。
それからガラスの話とか、メリーディエース領のその後とかの話をして、夕食は和やかに終わった。
翌日、俺は工房に向かった。
師匠の工房だけど、二年もガラスペンや切子をここで作ったから、もう俺のガラス工房王都支店でいいんじゃないかな?
上級学院に通うなら、まだルヴェールに帰れないしね。
転移魔法、覚える?
いやいや、そんな魔法簡単に覚えられないよ。
マジックバッグも作れるようにならないといけないし。マジックバッグは素材一つで、色々と変わるみたいだしね。ダンジョンで手に入るのかな。
ダンジョン……俺が行くと最下層にご招待されそうだからなあ。
入口の扉に手をかざして開錠する。
(主、ガラス作る?)
「そうだなあ。作りたいけど、まずは整理しようと思って。掃除もしないとね」
(掃除!)
「そうだよ~まずは掃除が大事。空気の入れ替えもしないとね」
ルヴェールの工房と同じようにまず大掃除から始めた。
道具の点検と、素材の点検。
師匠がいつも補充してくれているけれど、珪砂の在庫は常に把握しておかないとね。
今まで作ったガラスの作品も布で磨いておく。
素材用のガラス棒や砕いた再生用のガラスも、確認した。
埃が抜けた頃合いを見計らって窓を閉めた。途端に暗くなって、生活魔法のライトを使った。昼間なのに部屋の中は明るくないからなあ。
魔石の充填はできるから、魔道具のライトをもっと作るとか?
それとも、今の窓をガラスの窓にする?
屋敷の窓の一部にはステンドグラスが嵌っているから、少しずつ板ガラスを作って嵌めていってもらうのもいいかもなあ。
上級学院に行くなら、卒業までの課題にしようかな。
工房の窓は爆発対策もあって特別製だから、そこは師匠に相談だな。
強化ガラスや網ガラスという手もあるし、二重窓とかどうだろうか。
そう言えば、スキルのアーティスト用に持ち運びできる召喚用のプレートを作る?
あれから、新しい物は作ってないし。
鏡、トンボ玉、お酒のボトル、ガラスペン、切子グラス、ビアグラス。
実験用具、レトロガラス。
作ってないのはなんだっけ。扉にガラス彫刻を入れる?
花瓶や香水瓶?
それから、それから。
(主、楽しそう)
「楽しいよ!」
ガラスのことを考えるのはとっても!
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