第282話 領都メリードの教会
それから毎日メリーディエース伯爵領内の畑の一定の範囲を浄化、復活させていった。
ペーテルのところも終わった。
麦畑などは収穫(ほとんど枯れていたそうだけど)が終わっていたのでそのまま土作りをした。
この土地は十月から十一月くらいに種まきをして六月ごろに収穫ということだった。
「ヒマワリでも植えるか」
師匠が繋ぎの作物を提案した。
「野菜の方がいいのでは? 麦も不作だったようですし。オリーヴがありますし、相性のいいトマトもおすすめです」
ラントも意見を出す。
「トマト? あれは観賞用だぞ?」
ペーテルが首を傾げる。
「うちの領地やルヴェールでは普通に食べているぞ」
師匠の領地のトマトは糖度が高くてフルーツトマトくらいになっている。
ルヴェールよりもトマトの栽培に向いてるみたい。
作物は生命線だし、村の代表やメインデルト、ペーテルも交えて相談中だ。精霊も大分戻ってきて不作にはならない気がする。
俺はそんな会議の脇でジュースを飲む。
農場はほぼラントが回してくれているから実際の作業は手伝い程度だし、こういう時は戦力にならない。
村ごとに作る作物を振り分けて種や苗の手配は師匠が行うことになった。
手間賃はちゃんと契約に盛り込んであった。
さすが師匠。
さす師。
光神教は何をしているんだとメインデルトがお怒りなので、師匠と共に今日は領都の教会にやってきた。領都はメリードと呼ばれている。
すごく豪華な建物に、俺はびっくりした。
ルヴェールの精霊教会はもっと素朴な感じだ。それに俺が光神教の教会に来るのは初めてだ。訪問しているのはメインデルト、師匠、俺という面子。転移魔法を使うから仕方ないね。カルヴァとラヴァもいるよ。
「鍵が閉まっている?」
メインデルトが正面の扉を開けようとしたが開かなかった。
呼んだが誰も出てこない。
「わかった。この土地はメリーディエース伯爵領だ。貸しているだけであって、光神教のものではない。立ち退き要求をする」
メインデルトがそう言って一旦解散となった。
そもそも手紙で訪問は打診していたが返信がなかったそうだ。
受け取りがなく、手紙自体が戻ってきていたので、突撃訪問したのが今日。
張り紙をし、返事がなければ撤去をするとのことだった。
そして精霊教会の祭司が建築工房の人たちと一緒にやってきた。
いつぞやの風景って感じだ。
メインデルトが調査した結果、光神教の司祭や神官が六月終わりごろに領都を出て行った記録があったが、入ってきた記録はなかった。
手に負えない瘴気を前に逃げ出したのではとメインデルトが判断した。
それなら、精霊教会の場所は光神教の教会跡地(まだ建物が建っているけれど)でいいと、メインデルトが判断した。張り紙の期限を過ぎても光神教から連絡がなかったからだ。
光神教が機能していない間の祝福の儀も滞っていて、改築で済むし、教会の場所が領民に浸透しているからこの場所でいいとなった。
ドワーフの職人が扉を壊し、中の残存物を外に出す。
書物や帳簿類はなく、祝福の儀に使う祭壇も装飾品や祭事の道具なども無くなっていた。大物の家具だけが残っていて、夜逃げした後みたいだった。
「よーし、やるぞ!」
ルヴェールに来ていた建築工房の工房主ソイルが指示をすると、わらわらとドワーフの職人が仕事にとりかかった。
精霊教の祭司も来ていて、俺にダッシュで向かってきた。
「ルオ様ですね! 兄がお世話になっております」
兄?
「フルクの弟で、ヘルクと申します」
「よろしくね」
「ええ、ええ! お役に立てますなら光栄です」
この人ちょっとエルフっぽいな。俺に対する態度がだけど。
「ヴァンデラー師のご実家だとか。誠心誠意努めさせていただきます」
「ヘルク祭司様、それは俺じゃなく、師匠のお兄さんに」
「そうでしたな」
ヘルク祭司はにこりと笑ってドワーフ特有の顎髭を撫で、メインデルトに向かって歩いて行った。
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思われましたら☆応援(評価)お願いします!
ブックマークもぜひ!




