第279話 家族との夕食
ラヴァの指摘に複雑な気分になったけど、俺の体から自然と漏れている魔力を食べているとのことで、それくらいならという気持ちになった。
俺は首にある痣を手で触った。これがラヴァとの繋がりの証。
「ラヴァと僕とは特別なんだから、他の精霊さんのことはちょっとなら許してあげて」
(むぅ……ちょっとなら)
「精霊さんに目を借りることもあるし、いろいろしてくれてると思うから、ね?」
(わかった)
「ラヴァはいい子だなあ」
ぎゅむっと抱きしめて頭を撫でた。
それから、身綺麗にして夕食だ。
久しぶりに会う家族との夕食!
「お帰り。ルオ」
「お帰りなさい、ルオ」
父と母がにっこり笑っていってくれる。
「お帰りなさいませ」
ローワン、ネリア、ギード、カリーヌが頭を下げながら言ってくれた。
もう、師匠とは会話を交わしたあとみたいで、師匠は目礼だけだった。
テーブルにはエリックが腕を揮った料理。
湯気が立つそれに父の言葉を待って手を伸ばした。
「美味しい!!」
俺が思わず叫ぶとギードたちの傍に立っていたエリックが嬉しそうに微笑む。
「今日の夕食はルオ様の農場からとれたての野菜と旦那様の仕留めたボアをローストした物をメインにしました。それとコメをパンの代わりにいたしました」
そう! 俺の農場ではトマト、コーン、枝豆なども作っている。
コメの耕作面積は精霊王様のおかげで広大になってはいるが、最初はジャガイモとコーン、コメの実験農場だったんだ。
コーンスープに、村で採れたレタス、俺の農場で採れたトマト、枝豆をオリーブオイルとワインビネガーのドレッシングで和えてある。メインのボアのローストに使われている塩は塩でも師匠の領地のミネラルを残した塩だった。
それといろいろなハーブで味付けしてあった。隠し味に少し醤油かな?
生姜焼きも好きだけど、これも美味しい。肉の味がよくわかる味付けだ。
脂身も甘く、肉を食べたって満足感がする。
メリーディエース伯爵領のダンジョンでコショウとか、スパイス系の採取ができないだろうか。
今度ダンジョンの精霊さんに聞いてみよう。
きっと手に入ったらエリックが美味しく調理してくれるはず。
皿に盛られたコメは艶々で、米粒が立っている。
ローストを食べた後にコメを食べると、そのハーモニーが絶妙!
コメは噛むたびに甘く感じて前世で食べた美味しいコメを凌駕する味だった。
そうだよなあ。もう栽培始めて7年くらい経つ?
ラントの品種改良のスキルは凄いなあ。
「コメ、ほんとに美味しい」
俺がポツリと呟くとみんなが頷いた。
「この塩も美味しい。コメを握ってこの塩だけでもきっと美味しい」
いわゆる塩むすびって奴だね。
みんなの動きが止まった。
「失礼ですがルオ様、それはずいぶん前にお弁当にしたものでしたね?」
エリックが遠慮がちに訊いてきた。
「そうそうコメをこう、手で固めて、塩を振って、入試の時、お弁当にしてもらったやつ」
俺がおにぎりを作る動作を手でした。
「中に焼き魚みたいの、入れてくれたけど、なくても美味しいだろうなーって」
「なるほど、携帯食か」
父が頷く。
「そういえばあの時はコメブームだったな。そんな弁当、作ってもらってたのか」
ふむと、師匠は思い出すように顎に手をやった。
「ダンジョンに行く時に大量にマジックバッグに入れて持っていったらいいかもしれないわね。干し肉と違って痛むだろうから時間停止機能がないと困るかもしれないし」
母の基準はピクニックとかじゃなくダンジョンなのだろうか。マジックバッグかあ。母の所有のマジックバッグってあったっけ?
ちらちらと母が父と師匠の顔を見ている。二人は母から視線を逸らした。
「中に入れるのは肉でも美味しいと思う。畑に行く時、お腹が空いた時食べられるように持っていったらいいかもね」
俺もちょっと言ってみる。
「それはいいかもな。パンより腹にたまる気がする」
父が頷いた。マジックバッグから話を逸らしたいのかもしれない。
うちの村ではコメはお酒の材料的なイメージのようで、相変わらず硬いパンが村人の主食のようだった。柔らかいパンは収穫祭の時に父がご馳走を振舞う時に口にするくらいだったと思う。
もっともっと領民が豊かになって、余分なものを手に入れる余力が出来て、ガラス製品を買える時が来るように俺も頑張らないと。
領民の家に窓ガラスが嵌るように。
それから話題は俺の学院の話や、村の話、イオの祝福の儀の話などに移って、和やかに食事は終わったのだった。
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