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第244話 閉じ込められた(三)

評価、ブクマありがとうございます!


「なんで正座してるの?」

「正座と土下座は300年くらい前の落とし子が広めたんだ。謝罪をする時と説教を受ける時の作法だと。恐妻家なのに浮気をする子でね。お嫁さんに怒られる度に土下座して正座で説教を受けてたんだ」

 はい? 落とし子? 浮気? それってクズでは?

「その子は特許を広めたいと商業の神が君と同じ世界から招いたんだ。おかげで今は魔法神の愛し子が張りきってしまっているわけだけど」

 そうか、特許の考え方があまりにも前世の特許に似すぎているわけがわかった!

 すっきりした。土下座と正座の件も!!

 そして精霊王も認める特許活用をぶっちぎりで師匠がしてるのもわかった。

「あの、落とし子って異世界からの転生者?」

「神が呼んだ異世界の魂を持つ子だよ。君の言う転生者だね。君もそうだよ」

『私が呼んだ』

 涼やかな男性の声が割り込んだ。辺りに漂う神気が増す。


『げ、芸工神』

 魔法神がびくっと震えて呟く。

『そうだよ。魔法の。地上に神は手出しできないと、そういう理なのに愛し子の周りに手を出しているの、どういうことなんだい。私の落とし子に迷惑をかけるなんて……神界に戻ったら、覚悟しておいで』

 いきなり現れたきらきらした長い髪を持つ美青年。首と腕に凝った細工をしたネックレスとブレスレット。金糸の見事な刺繍が施された紺色の上着。ドレスシャツに刺繍が入った白のトラウザースに白の革靴。

 美を司る神のような美しい佇まい。まさしく芸術と工芸の神。

「芸工神様? 加護をいただいた……」

 きらきらしすぎて目が潰れそう。

『初めまして。私の落とし子。ガラスは作れているようだね』

「はい!」

 もちろん、作るなと言われても作っちゃうよ! 芸工神様。

『君は思う存分、ガラス作品を作りなさい。前世の心残りはちゃんと解消するように。見守っているからね』

「ありがとうございます!」

 芸工神様の神殿がなければ祭壇作ってもらって祀ろう! 毎日祈りを捧げるんだ!


『魔法の、落とし前はつけてもらうから』

 芸工神は俺に向けていた笑顔とは一転凄味のある視線で魔法神を射抜く。

『ひっ』

「芸工神様、よろしくお願いします。地上の管理を任されている我々の権限を侵さないで欲しいと切に」

 そう言う精霊王の魔法神を見る目が極寒だ。

「あ、あの! ケンダルの呪いを解いてもらうことは?」

『そうだね。本来神の呪いなんて、今の世界にあってはならないのだけど、呪いの解除条件というのが存在していてね』

 ぎろりと睨まれた魔法神は身を震わせた。

『愛し子と家族が許し合わないと、解けない』

「それ、当事者が死んだら解けないってこと?」

 魔法神が視線を逸らした。

「待って。確か父親が亡くなって嫡男が伯爵家を継いでいるはず……」

 精霊王様が青い顔で言う。

『魔法の、呪ったのは誰だ?』

 芸工神が笑ってるのに笑ってない顔で訊く。

『父親には別の神罰を与えたから呪った血筋は嫡男のだ』

 魔法神がさらりと怖いことを言った。

『まさか、死因に関係してるということはないだろうね』

 精霊王が怖い顔で詰め寄る。

『た、多少は?』

 精霊王と芸工神が頭を抱えた。

「あのね、それは絶対愛し子に知られないようにしなさい。ショックを受けるから」

 精霊王が諭すように言う。

『ショック?』

 きょとんとした様子で魔法神は言った。優しい師匠ならきっと自分との仲たがいで父親が死んだとなれば悲しむだろう。


「この人本当に神様? 邪神じゃない?」

 思わず言ってしまった。

「そうだねえ。ちょっと否定はできないね」

『愛し子可愛さにここまで暴走する例はそうそうないけど、神の愛し子というのは特別なんだよね。私も君が理不尽な目に遭ったらちょっと冷静ではいられないかもしれないね。でも、直接の手出しは禁止事項なんだよ。せいぜい加護を増すとか、スキルを与えるとか、その方向なら許される』

「私が与える祝福とか、そういうものだよ」

「いつもありがとうございます。精霊王様! 芸工神様ももしかして、アーティストっていうスキルをくださったんですか?」

『ああ。この世界は君のいた世界と違って危険だからね。戦えるスキルが必要だと授けたんだよ。ちょっと、強力すぎて創生神様から縛りを受けたけど、強力な召喚術みたいなものだから有意義に使ってほしい』

「ありがとうございます!」


 もうお二人、この場合は二柱というんだろうか? 感謝しかない!

 もう祈るしか!

 思わず跪いて祈る。

 いつもありがとうございます! 大好きです!

『落とし子、ありがとう。私の力が増した』

「私もだよ。愛し子」

 二人が頭を撫でてくれる。

(主……)

「ラヴァ。大好きに決まってるでしょ?」

(主~~)

 胸に飛び込むラヴァを抱きしめる。

 なんか、魔法神が羨ましそうに見てるけど。


「あの、魔法神様、一度、師匠と一緒の時に少しお話を師匠としていただけませんか?」

『えっ』

 その瞬間、精霊王と芸工神が睨んだ。

 蛇に睨まれた蛙のようになった、魔法神はおろおろしていた。

「魔法神様がそんなに師匠のこと、大切にしているなら師匠が知るべきだと思うんです。全然、師匠と触れ合っていませんよね?」

『神は遠くから見守るものだからな』

 推し活か! そしてストーカーだよ!

『それで拗らせてどうすんだ。魔法の』

 芸工神様が突っ込む。

『我、愛し子と話すとか無理』

 なんでだよ!? コミュ障か!?

 でもなんかそわそわしているな!?


「僕が間に入るから、ちゃんと話して。そしてケンダルの受けている呪い解除する方法を説明して」

 あ、声が冷たくなっちゃったよ。

『魔法の』

「魔法神」

 釘を刺すような低い声が精霊王と芸工神から放たれる。

『う、うむ』

「約束ですからね! 魔法契約書は金貨一枚です」

 こういうこともあろうかと、インベントリに二枚ほど、師匠から買ったのを持っているんだ。

「さすが、弟子だねえ」

『え……我金貨なぞ持っておらんぞ』

「え、マジで?」

 魔法神文無しかよ!!

「その辺は私が何とかしよう。君は今は精神だけ私の領域に呼んでいるから、ダンジョンを出て屋敷に戻ったら、私を呼んでおくれ。その時に魔法契約を結べばいい。まだ何日か、学院の演習があるのだろう? 少し呪い子には待ってもらうことになるが。もちろん魔法神の愛し子と一緒にね」

「わかりました! ありがとうございます」

『我の意見は……』

『当然却下だ。逃げるのもダメだよ』

 芸工神、頼りになる!

「もうお戻り。助けが来たよ」

 そう精霊王が言った途端、意識が遠のいた。

次の投稿は18時になります。


書籍第二巻ドラゴンノベルス様から発売中です!

特典SSペーパー付の店舗様もありますので

公式ページまたは作者のX(@sakuyan_08)をご覧ください。

今月発売のgood!アフタヌーン8号に樺ユキ先生のコミカライズ最新話が掲載されます!

マガポケ、コミックDAYSにも公開されますのでよろしくお願いします!

なお、コミックス第三巻が8月6日に発売決定です。

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