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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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204話 アスモデウスと小悪党

 月面基地は大混乱であった。それはそうだ、突如として現れた艦隊は保有している自軍の艦隊の30倍以上。既に大半の艦は無人艦だとは判明しているが、それは安心出来る内容ではない。ハンターギルドの艦隊は信じられないことに、悪魔艦隊の性能を大きく凌いでおり、無人艦ですら敵わない。もはや篭城して他の軍基地からの援軍を待つしか手はなかった。


 幸いにして、月面基地の障壁は最高レベルであり、たとえ10万隻の艦隊の艦砲射撃を受けてもビクともしなかったので安堵していたのだが——。


「司令官。敵、基地内に侵入! 防衛線にて防いでおりますが………。床を………床を破壊しながら下降してくる敵がいます!」


「馬鹿なことを言うなっ! あの床は装甲ではないのだぞ? 自然の岩盤に硬化付与しているだけだが、それだけに分厚くバンカーミサイルでも貫通できないのだ。なのに破壊しながら入ってくるだと?」


 震える声のオペレーターに、アスモデウスは苛立ちながらテーブルを叩く。もはや顔は真っ青であり、額には汗をかき、司令官であるのに、あからさまに焦っていた。


「本当なのです! 既に20層を突破。最下層までの推定到達時間約14分!」


 作戦室のモニターに映る月面基地のマップ。階層全体を映し出す内容で、一つの光点が岩盤を破壊しながら、少しずつ下降していくのが表示されていた。


 アスモデウスは敵の強引すぎる行動に目を剥いて身体を震わすが、その滑稽にも思われる慌てぶりを見せながらも、それでも指示を出す。このままでは、滅ぼされるとの予感に背中を押されて。


「各軍基地に連絡を入れろ! すぐに月面基地に救援を寄越せとな! ここが攻略されたら、地球の軍基地など丸裸になるようなものだとも付け加えるんだ!」


「そ、それが大半の軍基地からは艦隊が出撃しております。しかしながら敵艦隊数多し! 戦いにもならない様子で撃沈をしているんです」

 

 悲鳴を上げるかのような報告に、アスモデウスは椅子にドサリと座り込むと、覇気のない声で呟くと、頭を抱えて、ようやっと事態を把握した。


「シトリーの言っていることは本当だったのか! 戦力を回復してきている? そんなレベルではない、かつての戦力よりも遥かに艦隊を揃えているではないか。正確に報告せんから、我らは現状を把握できなかったのだ! そうだ、儂のせいではない。儂の責任ではない。シトリーが全ての元凶なのだ」


 あくまでも自身の責任だとは思いたくないアスモデウスはシトリーの責任だと思い込もうとする。これが平和な時代ならば、根回しをして一人の責任として追いやっていただろう。そのような責任転嫁はアスモデウスの得意とするところであり、出世してきた理由の一つでもある。


 だが、それは平和な時代。力で片をつけることのない時代の方法だった。


 アスモデウスが頭を抱えて呟いている間にも基地内は揺れ始めて、段々とその震源は近づいて来ていた。


 テーブルに置かれているコップが揺れで床に落ち、大地震のように立っているのも苦労する揺れと共に天井へヒビが入っていく。


「司令官! 最下層に接近しております。敵はすぐ上です」


「ひ、ひいっ! アークデーモンたちよ、侵入してくる敵を倒すのだ。我らの生き残る道はそれしかない!」


 護衛にして最精鋭の最高位レベルの悪魔たちが天井のヒビを中心に円を描き落ちてくる敵を包囲できるように陣形を組む。


 隠すつもりはないのだろう、上からはシェルター壁が砕けていく轟音が響き、じわじわとその音は大きくなってきている。近づいているのだ。


「くそぅ、くそぅ、シトリーの役立たずめ。あの女が正確な情報を与えてくれば、駆け引きなど考えずに協力したというのに。いや、会長が、会長が硬直した命令を出していなければ、戦略的撤退を選ぶというのに」


 アスモデウスは会長たる悪魔王の眷属だ。全ての悪魔は会長に従っている。そして、それは建前ではなく、魂から従属しているのだ。それは死ねと会長に命じられたら、どんなに抗っても自殺を選ぶくらいに絶対の強度を持っていた。


 そして、アスモデウスが命じられているのは簡単明瞭。月面基地に居住して、空間封印システムを命を懸けて守り抜け、だ。


 なので、ことここにいたり、アスモデウスは曲解も許されずに、絶対の戦力差がわかっていてもここを守り抜くしかなかった。


「怯むな、怯むなよ、侵入してきた瞬間に全員の最大魔法を食らわすのだ! 消し炭にしてやれ!」


 自身の身体を変態させて、蛙の化け物へと姿を変える。いかに戦闘経験はなく、エアコンの中で戦況を数値としてしか読んでいなくても、ソロモンの悪魔の中でも最強格。金属製の床がアスモデウスの解き放つ魔力に侵食されて溶けていく。瘴気が足元からドライアイスの霧のように流れていき、部下たちの身体に絡みつく。


 その瘴気を吸収した部下の悪魔たちの肌が赤く染まっていき、その肌に血管が浮き出て狂気に顔が染まり、身体能力を大幅に強化していった。


 アスモデウスの欲望を高める能力。悪魔に使えば欲望を原動力とするために、数倍の力へと増幅させるのだ。


 本来は砕けぬはずの天井が激しい揺れとともにヒビが入っていき、そのヒビは微細なヒビから、大きな溝へと変わり、パラパラと砂埃が落ちる。


 そして天井が崩れ落ちる。一つ一つの破片が車よりも大きな物であり、もはや瓦礫などという生温いものではなく、巨大な隕石が落ちてきたかのようだ。


 アークデーモンたちはアイコンタクトにて頷くとその赤銅色の手に魔力を凝縮させていく。その魔力は人間など消し炭すら残らない力を内包しているのだが、アークデーモンたちに余裕の表情は一切なく、緊張と恐怖で歪んでいる。


 ゴスンと岩山のような破片が落下し、作戦室のデスクなどを押し潰す。多くの瓦礫が落ちてきて、砂埃にて視界が通りにくい状態となる中で、銀髪の男が着地するのが垣間見えた。


「い、いまだぁたたたけけけけところせ」


 戦場に立つことはないが、その身体能力はこの場の誰よりも高いアスモデウスが、どもりながら真っ先に叫ぶ。アークデーモンたちはその言葉を合図に、降りてきた人間へと魔法を解き放つ。


『地獄の炎、燃え尽きぬ悪よ。敵を罪の炎で魂すらも焼き尽くさん!』


 漆黒の焰が一斉に放たれて、人影を覆い尽くす。作戦室内の室温が人が存在不可能なレベルにまで熱せられて、デスクや椅子は燃え溶けていく。瓦礫すらも焰に巻かれると溶けていきガラス状に変質していき、溶岩となって地下の床を流れていく焦熱地獄へと変わっていた。


「やったか! やっただろ? 儂の冷静にして的確な指示のおかげだ。貴様ら感謝しろよ?」


 戦士としてのセンスが欠片もないアスモデウスは今の一撃で侵入者を倒せたと確信し高らかに哄笑する。


「地獄の炎はたとえ防げても消えることはない。1ミリでも火傷を負えば、その火傷から炎は入り込み、体内を燃やしていく。悪魔の魔法の中でも、必殺の炎魔法なのだ。フハハハ」


 戦闘センスはないが、アスモデウスは資料は読んでいた。その資料内にある高位悪魔の使う炎魔法。その力を読んで恐ろしさに慄然とした記憶があったのである。


 あとは炎に覆われた侵入者が体内から炎を吹き出し、焦げた死体になるのを待つだけだと、ニマニマと醜悪な笑みで今か今かと待っていたが。


 炎に包まれた人影は、溶岩と化した床の上を燃えることなく歩き出す。足跡は残らずに、空を歩くかのように、散歩でもするかのように進むその姿にアスモデウスたちは目を疑う。


「地獄の炎か。ゼロダメージの時はあれかな。消えることのない炎をエンチャントしたことになるのか?」


 炎の中で火傷一つない銀髪の男が笑いながら、薙ぐように軽く手を振る。


「あぺ」


 それだけで一番近くにいたアークデーモンの頭が風船でも割れたかのように破裂して、ぐらりと身体を傾けて倒れる。


「な、なんだこいつ?」

「燃えることがない?」

「我らの魔法を完全抵抗しただと?」


 アークデーモンたちは悪魔たちのなかでも高位悪魔だ。圧倒的な力を持ち、生物としてもピラミッドの頂点に立っている。敵は強いと思っていたが、それでもダメージを与えることはできると考えていた。


 だが、笑いながら進む男の狡猾そうな悪巧みをしていそうな小悪党スマイルを見て、気圧されて後退り始める。


「まぁ……運がなかったな」

  

 恐怖している悪魔たちを見て、男は苦笑いで告げる。


「俺の名はランピーチ・コーザ。知ってると思うが、閻魔様にも伝えておいてくれよ。お客をどんどん送り込んでいくから、楽しんでくれとな」


 そう口にした瞬間に、ランピーチの姿が消える。そして、アークデーモンたちが不可視の砲弾に当たったかのように押されて、破裂して倒れていく。パンパンと風船の割れるような音が響き、アークデーモンたちの身体は次々と破裂していき、アスモデウスたちは恐慌する。


「そ、そいつは高速で移動しているだけだ! 目で追えない速さだ、デバフを使え、高速移動を妨げる弱体魔法を——」

  

 混乱するアークデーモンへと、なんとかランピーチの姿を追うことのできたアスモデウスは叫ぶ。アスモデウスには見えていた。ランピーチは単純にアークデーモンへと飛翔すると、蹴りを繰り出し踏み台にしているだけだ。


 だが、たったそれだけなのに、踏み台にするような蹴りともいえない攻撃であるのに、その衝撃に耐えることができずに破裂していた。


 その光景を見て、なんとか防ごうとするアスモデウスだが——。


「お前がここの司令官か? 蛙?」


 叫んだ時には、アークデーモンたちは全て破裂して死骸が床に広がり、ランピーチはアスモデウスの目の前に立っていた。


「空間封印の機械を止めに来た。どこにあるか案内してもらえないか?」


 ちょっと道案内をしてくれというような軽さ。ランピーチは飄々とした顔でアスモデウスを見てくる。


 敵わないどころではない。相手にすらならないだろう。アスモデウスは迫りくる死の予感に、慌てて土下座をする。その姿は蛙がうつ伏せになったかのような不様さだ。


「へへぇ〜、申し訳ない。く、空間封印の機械はこの先にございます。えーと、この鍵を使えば入れると、とっと」


 土下座をしながら鍵を取り出すアスモデウスだが、恐怖に腕が震えて、セキュリティキーを取り落とし、カランカランとランピーチの後ろまで転がっていく。


「あぁ、申し訳ありません。その鍵を拾ってもらえますか?」


 不様なる姿を見せて、平身低頭の姿でアスモデウスは媚びる。


「ふぅん。この鍵が目的地を封印している部屋のものなのか?」


 ランピーチが拾おうとしゃがみ込み——アスモデウスの瞳が邪悪に光る。


「げこー! 油断したな! この儂の切り札を喰らえぇぇい! 『堕落した魂を毒として敵を腐らせん!』」


 土下座していたアスモデウスの蛙の背中がパクリと開くと大口が現れて舌をべろりと出す。完全に不意をつき、ランピーチを噛み砕こうと背中から覆いかぶさり——。


「え、あん? も、亡者の魂を集めて、は?」


 ランピーチの身体に噛みつき、毒を流し込もうとしていたアスモデウスは空中でバラバラとなっていた。不意をつくことには成功したが、それでも尚ランピーチの方が先手を打てるくらいに速かったのだ。


「こ、このアスモデウス………不良品………リコールは誰の責任にすれば………」


 バラバラの肉片がサラサラと消滅していく中でアスモデウスはまだ他人に責任転嫁を行おうとして消滅するのであった。


「さて、では空間封印の機械がある部屋に向かうとしますか」


「そうですね。きっと奥には私の本体が待っていることでしょう」


 全ての敵が死んだ静寂の支配する部屋で、ランピーチは手に入れた鍵をチャラリと鳴らし、ミラと共に奥に進むのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無双良いぞ~これ
[一言] 封印解いて大丈夫?食糧食い尽くされない?(罠の心配よりそっちかよ)
[良い点] どこぞの使徒を思わせる進撃 残るイベントは 社長&ミラさんと会長の復活ぐらいかな ルナティックライブラは擬人化実体化するかもだけど シトリーは地上に置いてきたこれからの戦いについてこら…
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