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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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202/214

202話 艦隊戦と小悪党

 宇宙戦艦のブリッジ内で月面基地を見ながら、ランピーチは思う。宇宙に遊弋する艦隊は、宇宙の星の光よりも多く見え、その威容は味方ならば心強く、敵であれば降伏を考えるだろう。


 そして、今さらながらに気づく。


「なぁ、俺の経験値って、ものすごく中抜きされていないかな? なんでこんな数を用意できてるのかな?」


 数が多すぎます。どう考えても端数の経験値では建造できない数です。くるりと振り返って、ブリッジに一緒にいるミラへとジト目を向けて尋ねる。尋ねるというか確認作業だ。絶対に中抜きしてただろ。


「ふははは、うさの軍は圧倒的に有利ではないか。これこそがテテの待ち望んでいた姿うさ」


 テテはもう大興奮である。遂に待ち望んでいた大艦隊の提督になったのだから、その気持ちもわかる。そして、取り巻きに扮するミラさん。


「きゃ~、テテさんステーキ! ステーキはレアでお願いします。私は鶏でも豚でも牛でも兎でもなんでも美味しく食べますよ」


「きゃ~! 黒い悪魔うさよ!」

「前々からうさたちを見る目が怪しいと思っていたうさ」

「この間、ジビエの美味しい料理レシピ本を読んでたうさ」


 フハハハと提督席で高笑いするテテを棒読みで褒めるミラ。そして、その発言にオペレーターうさぎたちの何羽かが、俺の脚に震えながらしがみついてきた。


 なるほど、中抜きは決定。コントで誤魔化すつもりだな。

 

 こんにゃろーと、ベテラン刑事並みに追求をしようとするランピーチだが、オペレーターうさぎが真剣な声を上げる。


「親分、月面基地から敵の艦隊が発進。うさたちと戦闘をするつもりうさね」


「は~ん。降伏すると思いきや、月面基地を守れと命令されてるんだな」


 顎を撫でながら、現れた敵の艦隊を見て気の毒に思う。どう考えても勝てない数だ。数だけではない。この艦隊は『ランピーチシステム』が搭載されている。悪魔たちはもはや不滅ではないのだ。


「まぁ、同情はすれど手加減はしないがな。テテ、敵を殲滅しろ」


 もはやためらう必要はない。敵は殲滅あるのみだ。俺の言葉にぴょんと飛び跳ねると、テテはかぶっている軍帽の位置をちょんと直して人差し指を突き出す。


「オペレーター全艦に通達、50キロ間隔、ひまわりの陣をとるうさ!」


「ラジャー。こちらは旗艦テテステーキ。全艦に告げる。50キロ間隔でひまわりの陣。繰り返す………」


 オペレーターうさぎたちが耳につけているインカムに手を添えて、一斉に連絡を始める。通信を始めて、俄に騒々しくなるブリッジ。カチカチと端末を叩く音が合奏し、モニターに映る各艦の艦長が指示通りに艦を動き始める。


 前面モニターに映る宇宙艦隊100000隻。とはいえ、操作しているのは千隻。他はそれぞれの艦長が操作するシップビットだが、だからこそ整然とした動きで、まるでひまわりの花のように漆黒の宇宙に広がっていく。


「なんかドキドキするね、ソルジャー。月面基地は今まで場所はわかっても手出しのできない敵の基地だったんだよ。あの基地を撃破すれば、地球の各軍事基地も動けなくなるに違いないよ!」


 大興奮のライブラが、俺の腕にしがみついて、ふんふんと鼻息荒い。そして柔らかい。まぁ、気持ちはわかる。わかるけど………一つ疑問があるな?


「なぁ、あの基地が『ルナティックライブラリ』じゃないのか? あそこを倒せば敵の動きを止められるんだろ?」


 てっきりそうだと思ってたんだが、違うのか? ここを最優先に破壊しようとミラが言ってきたのに。


 ちらりと見る俺の視線にミラが気づいて真剣な顔で頷くと、裾を掴んで甘えてくる。甘えてくる?


「プーさん、やはりポップコーンとサイダーが必要だと思うんですが」


「真面目に答えてくれると、バスケットに入れたサンドイッチで一休みしようか考えるんだけど」


「『ルナティックライブラリ』は月面基地にはありません。『月』は『ルナ』。『ルナティック』は『狂気』ですよ。で、バスケットはどこです? ビニールシートを敷いておけば良いですか?」


「たしかにそう言われたらそうだけど……でも月にあると思うじゃん? それなら『ルナティックライブラリ』はどこに………いやいやいや、待て待て! わかったぞ、どこに『ルナティックライブラリ』があるのか!」


 いそいそとビニールシートを敷き始めるミラのセリフはたしかにその通りだった。そして、ピンときました。名前から既に推測していて然るべきだったのだ。たくさんのヒントがあったのに、俺はずっと月にあると思っていた。


 なぜならば、『地球図書館アースライブラリ』は地球に。『宇宙図書館スペースライブラリ』はコロニーに。ならば三機めの図書館は月にあると思うだろう。ルナティックはルナとかけていたんだろうと思っていたが………素直にその名前を受け取るととわかる。考えすぎていたのだ。


「『ルナティックライブラリ』のある場所は——」


「全艦配置に就いたうさ!」


 俺のポケットに手を突っ込むミラに勢い込んで推測を伝えようとするが、オペレーターの言葉に阻まれる。そして、テテがデスクの上に仁王立すると、スンスンと鼻を鳴らす。


「よし。では、ライオンラビットカノン改。目標月面基地。射線上にいる障害物、敵艦隊、全てを吹き飛ばすうさーっ! 残った敵は形骸に過ぎない。今からセリフを考えるうさよ」


 いつもならば、ブーブー文句を言うオペレーターうさぎも、今回ばかりは真面目に連絡を始めている。皆が緊張して、冷たくピンと張った空気が漂い、ライブラも凛々しい顔で前面モニターを見つめている。正座をして幸せそうにサンドイッチをもぐもぐ食べているマイペース娘など目に入りません。

 

 ひまわり状に広がって、まるで大輪が咲くように星の光よりも多くの光を全艦隊が放つ。光条が流星雨のように宇宙をかけて、月面基地に向かっていく。


 敵艦隊も迎撃に移るが、所詮は蟷螂の斧。僅かな光はうさぎ艦隊の放った光にあっさりと呑み込まれると、その後ろに展開していた悪魔の艦隊も単なる障害物のように打ち払い、消滅させていった。そうして、光雨は月面基地に衝突して、新星が爆発するかのように閃光を放つ。


 真空でなければ爆発音が戦艦まで届いたかもしれない。月に新たなるクレーターが生まれて、砂煙が吹き上がり、離れた艦隊からも視認できる巨大な砂柱が月から宇宙へと伸びていく。


「ヒャッハー、やったうさ。これこそがうさのパワー。大艦巨砲主義バンザーイ!」


 ご機嫌テテは、デスクの上でお尻をふりふり尻尾をブンブン、耳をゆらゆらと可愛らしいラビットダンスをしてタップを踏む。


「やったかうさ?」

「この一撃で終わりうさよ」

「最強の攻撃を前に散るうさ」


 オペレーターうさぎたちも喜び跳ねてタップダンス。そのセリフを前にダンスを止めて、スンスンと鼻を鳴らして真面目な顔になるテテ。


 俺もため息を吐いて前面モニターを見る。だいたい想像できたが、その結果はというと——。


「見てみてソルジャー、月面基地中心は無傷だよ外郭は吹き飛んだみたいだけど!」


 ライブラが指差す先、砂煙の中に垣間見える月面基地はほとんど吹き飛んではいるが、中心は障壁が展開されており無傷であった。


「むきゃー! エヌジーワードを言って、テテに嫌がらせしたうさね! もはや堪忍袋の緒が切れたうさ。天誅ーっ!」


「イカサマで提督になったからうさよ!」

「フハハ、敵は灯台下暗しうさ!」

「きゅー、きゅー、きゅー」


 泣き顔のテテがオペレーターうさぎへとピコピコハンマーを振り上げて襲いかかり、やはり文句のあったオペレーターうさぎたちもピコピコハンマーを取り出してピコピコ打ち合う。もはや、艦隊行動はとれそうもない。


「月面基地には空間封印の装置があるはずです。それを破壊すれば、私たちは『ルナティックライブラリ』への道が開けるでしょう」


「『ルナティックライブラリ』の場所は知っているんだもんな」


 バスケットに入っていた大量のサンドイッチを食べ終えて、指についたバターをペロリと舐めると、ミラが立ち上がる。


「建造から稼働まで毎日ニュースになっていましたしね。それでは、月面基地に侵入しましょう。古来より無敵の月基地には生身で潜入するか、ミラージュステルスで姿を消して忍び込むのが常套手段なので」


「あ~っ! 地球方面から発進した艦隊を確認。各自自己判断で流動的に迎撃するうさ!」


 ピコピコハンマー大戦をしていないオペレーターうさぎがレーダーに探知された艦隊に気づいて軍帽をかぶると指示を出す。提督はリコールされたみたいだ。


 各自と命令をしてはいるが、地球から出撃し始めている艦隊を迎撃しようと、うさぎ艦隊は練習したかのように整然としてグループを作り航行していく。


 敵は多くとも五千隻程度。こちらはシップビットを引き連れた艦隊だが、それでも20倍。負けることはないだろう。


 それなら俺たちのやることは決まっている。


「それじゃ、月面基地に突入するとしますか。ライブラ、融合していくぞ。ミラ、しっかりとついてこいよ」


「わかったよ、ソルジャー。ここで決めちゃおう!」


「私の本体を解放するためです。ついていきますよ」


「ミミたちも行くのぅ」

「親分にくっつけー」

「登るうさよ」

「きゅー、ぎゅー」


 神霊融合を終えてニヒルに嗤うと、ミラが隣に立ち、ミミが頭の上に、他多数の戦士うさぎたちがよじよじと身体に登ってきて張り付く。なのであっという間に白い毛玉となりました。


 なんかもふもふの謎の存在になっちゃったけど、まぁ、良いか。


「さて、この超能力を使う時だな」


『テレポート』


 目に入る景色がブリッジ内から、一瞬で移り変わり、月面基地の障壁前に移動する。真空のみで、生命に必要な空気はない。だが、俺にはもはや意味はない。状態異常無効は空気をも必要としない。ミミたちも精霊鎧を着込み、完全装備だ。


「ではでは、初めて訪れる家には挨拶をしないとな」


 拳を握り締めると、呼気を整える。体内の超力を整えて、最大効率で最高の効果を生み出す為に、ライブラの超演算を使う。


「すいませーん。この地域の営業担当になったので、一度ご挨拶をしたいと思いましてお伺いしました〜」


次元拳ディメンションフィスト


 拳の周囲の空間が揺れて、ピシリと世界にヒビが入り始める。


 そうして、ランピーチは障壁に拳を叩き込むとあっさりと砕き、月面基地に侵入を果たすのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 旗艦テテステーキw 丸焼きになる未来しか見えない……w
[良い点]  数こそ正義!と言わんばかりの大艦隊で襲い掛かるランピーチ艦隊、その戦力差、実に百対壱!( ̄∀ ̄)普通こーゆーのは敵がやるもんなんだけど「勝てば良かろうもん」ですから読者は許します♪ラスト…
[良い点] 圧倒的ではないか我軍は ルナじゃなくてルナティックですもんね 狂気から演算された予測に従うって考えると怖いなぁ このままミラさん本体解放して最終決戦かな? 地下街区無人疑惑とか、ちょい…
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