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万能やられ役小悪党ランピーチに転生しました 〜周りはβ版を遊んでいるのかもしれない  作者: バッド
6章 社長の小悪党

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199話 竜の世界と小悪党

 先程よりも大幅にイポスの力は高まっていた。ランピーチは竜のうちに秘められる恐ろしい力にゴクリとつばを呑み込む。


「これが、真の悪魔ってやつか」


『悪魔の真の姿は竜と伝承されているけど、そのとおりだね。ソルジャーと同等の力を持って………ちょっぴり敵の方が上かな?』


「誤魔化さなくても良いぜ、相手の方が俺よりも強い。これはスキルを特化して育てられる人間のレベルと全体の能力のみを上げるモンスターレベルの違いだ」


 はわわと震えるライブラに苦笑で返す。俺は体術特化だが、イポスはモンスター扱いされており、モンスターレベルを上げれば良いから、全体的なステータスは圧倒的に俺が負けている。


「『超越者』のスキル。レベルの限界突破を利用して体術を15まで上げたのはいいが、これはかなり厳しいな。せめて身体強化がレベル10になってればよかったんだがな」


 翼をはためかせて、空へと飛翔しようとするイポス。その風圧だけで、身体が押されて顔を歪めてしまう。魔力の籠もった風で自然あふれる草原の草木は枯れていき、サラサラと砂へと変わっていく。


「ははっ、さて、あたしの力を見せてやろうじゃないか。精霊王を2体も吸収したあたしの力をねぇぇっ!」


「当方、本社に持ち帰り、貴方様の力を拝見するか検討をさせて、させてくれよなっ!」


 高慢なる笑いで、竜の牙を見せてイポスが翼を畳むと、こちらへと矢のように飛んてくる。いや、矢など可愛いものではない。ミサイルのような迫力だ。


 風の壁を貫いて衝撃波が周囲へと広がり、爆発的な速さで肉薄してくるイポス。その口を大きく開けて、牙を閃かせる。


 竜らしく食い千切ろうとするのだろう。単純な攻撃であり、カウンターで鼻面でも蹴り飛ばせば良いはずなのだが——。


(嫌な予感がする。回避しておくか)


 爪先に超力を集中、エネルギーを瞬時に集めると、トンと軽く床を蹴る。重力と反発するようにランピーチの身体が消えて、竜のアギトを回避する。念の為にと見切りの間合いではなく、無駄に数十メートルの距離をとって、離れた場所でトンと足をつける。


『食い千切り』


 大きく開けた口をバクンと閉じて、イポスは地面をその胴体で抉りながら通り過ぎていく。閉じた口、喰われた空間が大きく歪み、漆黒の空間が生まれてブラックホールのように周囲の空間を吸い込んでいった。


「なんだありゃ? なんか空間が削られたぞ?」


『あの竜はこの空間の概念を食べたのです。本来の世界ならばそこまでの力は出せないですが、今のこの世界はイポスの創造した世界。概念は揺らぎ、高野豆腐レベルの硬さしかないんです。と、私の叡智が教えてくれるよ。後で肉豆腐を作ってください!』


「ライブラさんの頭脳が外付けになったのはわかったが、そうなると精霊障壁も完全なる能力を発揮できるか怪しいな」


 再び翼を広げて、イポスは直上に飛翔して、鋭角に機動し、こちらの隙を狙ってくる。


「クククハハハ、あたしの世界では能力は数倍になるのさ。たとえ、完全なる精霊戦士でも敵わない!」


 翼をはためかせて、風の刃を飛ばしながら笑うイポス。離れてはいるが、その刃には追尾能力が付与されているようで、駆け始めるランピーチ目指して軌道を変えて飛んでくる。


 極めた体術により、もはや足跡すら残さずに砂煙も舞い上がることもなく、繁茂する草を踏み潰すこともなく、ランピーチは走りながら風の刃が命中する瞬間にステップしてギリギリで回避する。


 躱した風の刃は地面に命中すると、まるで熱した包丁でアイスクリームを切るかのように地面を切断し、潜り込んで消えていく。恐るべき切れ味の風の刃。やはり精霊障壁頼りに戦うのは危険だ。


 イポスは翼をはためかせ続けて、風の刃は雨のように降り注いでくる。ランピーチが回避できないように段々と周りを埋めるように操り始めている。このまま躱すだけでは、いつかは捉えられるだろう。


「厄介だな! だが、こちらもその程度の攻撃は慣れているんだぜ」


 駆けながら迫りくる風の刃の群れへと人差し指を向ける。慣れた感覚、超力が水が流れるように集まり、超能力が発動する。


『サイキックレーザー』


 人差し指から放たれた光線が一条の線となり空間を切り裂く。クイッと人差し指を折り曲げると、光線が幾何学模様を描くように鋭角に軌道を描き飛んでいく。それは光の格子となり、ランピーチを守る障壁へと変わる。


 風の刃は光の格子にぶつかると霧散していき、その防御壁を貫くことはできない。


「やるじゃないか! それじゃ、こんな魔法はどうだい?」


『凍てつく氷の風は雷の如く敵を貫く』


 イポスの巻き起こす風が氷の風と変わり、氷の刃は雷を纏い、放電すると放たれる。


「くっ、こいつ!」


 光速の速さを持つ氷の刃は光の格子を突き破り、ランピーチへと命中してしまう。命中した箇所が切り裂かれて、激しい電撃が身体を巡り、切られた箇所が出血することもなく凍りついていく。


『まずいよ、ソルジャー! 凍らせる概念だがら、それは溶けることもなく一生自然回復はしないよ!』


『だと思った! 対抗する技は?』


『超能力しかありません、レベルを10にしてください。最後にして最強の『サイキック』を取得してください』


 もはや伝言板と化したライブラの言葉に頷き、急いでレベルを上げる。


『了解だ。超能力レベル10に! 取得する超能力は『テレポート』『念動障壁』『サイキック』だ!』


『超能力レベル10を取得しました。三つの特技を取得しました』


『サイキック:謎のエネルギー』

『テレポート:意図する場所に転移できる』

『念動障壁:ある程度のダメージを受け止める超能力のシールド』


 サイキックはゲームでも取得したが、効果が分からなかった技だ。使用しても「『サイキック』を使用しました」としか、表示されなくて、何も起きなかったんだよな。だが、ミラがいうなら間違いはないはず。


『サイキック』


 凍りついた箇所に掌を翳すと10レベルにして取得できる最後の超能力『サイキック』を使う。


「がっ! なんだこれ、いきなり殴られたように頭痛がしてきたぞ」


 使用した瞬間にガツンと殴られたかのように頭痛が走り、あまりもの痛みに身体がふらつきよろけると、体勢が崩れて走ることができなくなる。視界が朦朧として、飛来してくる氷の刃へと回避することもできない。


(まずいっ! 致命的な隙を見せちまった!)


『あわわ、ソルジャー!』


 精霊融合が解けた瞬間に、俺ではイポスに対抗できなくなる。死を待つだけとなってしまう。


「そうはいくかっ。ここにはメイたちも隠れてるんだよ!」


 意識を覚醒させて、無理矢理体勢を立て直そうとするが、意思の強さでは身体はついてこず、氷の刃により切り裂かれてしまうかとおもわれた。


 だが、迫る氷の刃が消え去っていく。雷光の速さを持つ氷の刃はランピーチに触れる寸前に霧に変わったかのように霧散していき、ランピーチを襲うことはなかった。それどころか、凍りついていた身体も元に戻っていき回復していった。


「これは?」


 明らかに『サイキック』の効果だと、ランピーチは驚き、いまいちよくわからないなと困惑してしまう。敵の魔法を無効化する超能力か?


 驚くランピーチだが、それ以上に驚愕したのがイポスである。殺したと確信した瞬間に、盤をひっくり返されたのだ。しかも魔力の痕跡を感じない謎の力だ。

 

 さらに信じられないのは——イポスが創造した世界が、自身の理想郷がランピーチを中心に消えていっていた。まるで劇に使われる書き割りのように、消えていった後には、白い空間が覗き、イポスの悪魔としての力を無効化していった。


『サイキックは世界の理を歪める最強の力。いかなる世界もこの力の前には意味をなくし、悪魔が作った脆弱な仮初めの世界など、この力を前にしては意味をなしません』


「なるほどな。たしかに最強すぎる力だ。ゲームでは使っても効果がわからないはずだよ。だが、この頭痛は?」


 ミラの説明に納得だ。どうやら世界が崩壊したことにより、通信が可能となったらしい。


『プーさんの魂がサイキックに耐えられないんです。1日2回が限度。それ以上使うと魂は傷つき、代わりにライブラがしばらく痛みで呻くことになるでしょう』


「いざという時にしか3回目は使えないということだな。まぁ、問題はないだろう」


『問題はあるよ!? ソルジャー、寝込んだらお粥を作ってあ~んしてね』


『私は鰹出汁のお粥でお願いします』


 二人の平然とした態度に苦笑しつつ、ため息もつきたくなる。


「『次元拳ディメンションフィスト』も『サイキック』も使用回数が決められているとは悲しいね。だが、それだけの力はあるか!」


 手を握りしめて、空を舞う竜へとニヤリと小悪党スマイルを送る。そのスマイルを見て、イポスは嫌な予感と恐れで身体を震わす。


 竜の本能が語っている。死の予感、自身の消滅の危機を。逃げなければならない。本来なら逃げることも可能だ。


 ——しかし逃げられない。なぜならばこの世界を構築する際に自身が柱となっている。逃げるには創造した世界を消す必要があり、消す際にはどうしても数秒の集中が必要だ。ランピーチがそんな隙を見逃すとは到底思えない。


「ググッ、そんな技を隠し持っていたとは迂闊だった。だが、あたしの切り札もまた存在するんだよ!」


 イポスが叫び、青空が夜空に瞬時に変わってしまう。満天の星空となり、淡い星の光が大地を照らす。


「わかるかい? 強力な儀式魔法を使う際に必要な星座の位置。それをあたしは自由に配置できる。運命を占い、星座の光にて貴様を殺すっ!」


 星の光がイポスの言葉に合わせて、星座を描いていき、空を覆う魔法陣が生まれる。莫大な星の魔力を受け取って、黄金竜の身体は燃えるように黄金の炎に覆われて、莫大なエネルギーを放ち、世界をも破壊する魔力を生み出す。


『おお、世界の理よ。星の光よ。運命の糸は世界に降りて、全ての存在を変えん』


『星空墜とし』


 最後の詠唱をすると、太陽のごとく高熱の体となったイポスがランピーチめがけて落ちてくる。


「やれやれだぜ。もう一度使わないといけないのかよ」


『神霊の籠手顕現』


 ランピーチはため息をつき、手のひらを握り締めると神々しい籠手が粒子が集まり形成される。そうして世界を破壊するもう一つの力を拳に宿して、落ちてくるイポスへと最後の言葉を送ってやる。


「これが世界の理を破壊する力。お前らの世界を消滅させる力だぁぁぁぁっ!」


世界崩壊サイキックブロー


 拳を振り上げて、自身の力を解き放つ。『次元拳ディメンションフィスト』を付与された拳は、空間を破壊し、次元にヒビを入れて、イポスへと津波のようなエネルギーをぶつけた。


 星空の力を借りたイポスは、絶対の力を信じていたが、放たれたランピーチのエネルギーにぶつかると、メシリとその体が歪む。


「そ、そんな。そんなぁぁ、アタシの副社長の座がぁぁっ!」


 そうして無敵を誇る竜の鱗はネジ曲がり、空間が歪むと呑み込まれるように消えていき、イポスは断末魔をあげて消滅するのだった。

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― 新着の感想 ―
前に読んだ作品もそうだが、クライマックスに近づくとどいつもこいつも銀の戦士みたいに戦闘力がハイパーインフレしてくる。 バトルが大味になる。スマブラで上手いガノンとテクいガノンの試合を見てる気分だ。
やはりいつでも頼りになるのはサイキックブロー
[良い点] 社長や会長では無く副社長、、、もしかして社長に横恋慕してたのか、会長や社長には逆らえないよう思考操作されてるのか 限界を超えた代償がライブラに行くのも何か怪しいと疑ってしまう [気に…
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