不穏な気配
「いやぁ、それにしても、災難だったよねぇアイリス」
「なによ、そんなことを言うためだけに連れてきたのかしら?」
ケラケラと楽しげに生意気口をつくのはうさぎ、ルビナである。
事のあらすじはこうだ。
あれから無事に森を抜け学園に戻ってこれた私たちはまず、学園長、その他諸々に各自の親、保護者にこっぴどく叱られた。
まぁ、そりゃそうだ、先生たちが来るまで待てなかったのだから。
あのままじゃ何人かが死んでいたかもしれないなんて意味のわからないことも言えるわけがない。
そして平和が戻りつつあるあれから数日がたった日の事。
いつも通り学校が終わり疲れ果てて眠りに着いたところ、ふと目が覚めて見た光景は学園内にある中庭。
以前ルビナに呼ばれた場所だった。
「ん…う…」
「やぁ♪」
「うわぁっ!?…ちょ、急に現れないでよ!」
「元気だねぇ~、相当疲れが溜まっているみたいだ、前より冷静さが欠けてない?」
「余計なお世話よ」
「いやぁ、それにしても、災難だったねぇアイリス」
「なによ、そんなことを言うためだけに連れてきたのかしら?」
と、いうわけです。
けれど多分こんなとこにわざわざ連れてこられたのだから、何かがあるはずだ。
ましてやご丁寧にそこそこ強力な結界まで貼って厳重に。
「あ、戻った。いつものアイリスだ」
「用がないなら部屋に戻るわよ。ただでさえ時間外の外出は禁止されてるのだから」
「いいのかなぁ、君の今後の命に関わることなのに~」
「……命…?」
「うん♪いやぁ、このままだとアイリス死んじゃうよ~、ってね?」
「なっっ!?」
何を言っているのこの子は。
「何を言っているんだ、って顔してるね?
ん~、でもほんとだよ?僕ね、占いが本業でもあってさぁ、今日見えちゃったんだよね。
アイリス、君が死んでしまう光景を。」
「…どういう事?……ここまで呼んだのだから、詳しく教えてくれるのよね。」
「ほんと、君って冷静だね。気持ち悪いくらいに。
ま、いいけど。君を殺す者は何通りかあるんだよ。一つは、君の先輩、パンセ。もう1人は君の従者、シオン。もう1人はまだ君と話したことないだろうけど、アルセリア・シリアス。あとは、デイジー、っていう君と同い年の子。」
やはり、それらが出てくるとは思った。
ガザニアがいないのはまぁ、何となく納得出来る気がする。
デイジーが殺しにくるとは思っていなかったから正直びっくりしている。
シオンが出てきたのは1番ショックだったかもしれない
「……そ、ぅ」
「やっぱり、君はつまらないよ。なんでそんなに冷静なのさ」
ズズズ、といつの間にか目の前にルビナの顔があった。思わず息を詰める。
ス、と目を細めると小さく彼の唇が開かれた
「君は、何を知っているんだい?
僕の知らない何かを、知っているんだろう?じゃなきゃそんな冷静ではいられないはずだよ?」
少なくとも、前までの君はね。
私を気に食わないとでも言うように見構えるルビナが瞳でそう、言ったように思えた。
まるで、ずっとアイリスを見ていたかのように────。
「ルビナ、あなたは…何者なの?貴方は…なに。」
「君は僕とあったことがあるはずだよ」
ジリジリと壁際に詰め寄られる。
あったことがある?私が、ルビナと…?何を馬鹿なことを言っているの…?
確かにゲーム内でアイリスがルビナとか変わってる場面なんて見た事がない、けれど現に関わりがあるのはフラグを少しずつ回収して話が変わりつつあるからではないの?
アイリスの表情は困惑に充ちていた
「っ…」
「僕のアイリスを返して────。」
ぱっちりと開いた大きな瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちた。
その涙を、私はどこかで見た気がした。もしかして。
「貴方は、暗殺者…?」
肩を揺らしなんとも言えないような無表情になるルビナにそれ以上何も言えなかった。
ただ、無意識にアイリスは涙を零しこちらを無表情に見つめるその頬へ手を添えた。
「頭のキレる君の事だから…直ぐに気づかれるとおもってた…暗殺者って気付かなくても、僕自身には気づいてくれると、思っていたのに」
君は僕を忘れていた。
その言葉を聞いた途端、脳裏にある記憶が蘇りまるで走馬灯のように駆け巡った。




