第35話 世界を守る為にLRガチャを回せ! 前編
輝く棺の中心に配置されたガチャレバーをチャコがゆっくりと回転させていく。
[何をしようと無駄でありますが、隙アリであります! 悪魔の聖杯よ!]
□オーケーボス! 【上位光学術式・多重化】□
「このガウェイン。同じ手を何度も食らうような無様は晒さん」
バベルフェゴールもチャコの行動の邪魔する為、砲口の突き出した腕を向けて先ほどと同じく強力な術式を発動するが、間に入った巨大な鎧が輝く玉を地面に叩きつけると周囲に光の粒子が舞い散った。
光の粒子によって明らかに減衰した術式は、ガウェインの装甲に受け止められた。
チャコがガチャレバーを回しきると、紫色の棺はゆっくりと開いていき中から眩い光が溢れだす。
その光の中から誰かが飛び出してくる。
「おじさんが来たからには、もう大丈夫だよ茶々子」
出てきたのは淡い灰色の髪をバレッタでまとめた輝く蒼い目の少女だ。
自らの事をおじさんと名乗る少女は、チャコの本名を呼びながら自信満々に微笑んだ。
「拳聖さんですか……。今回の相手は固いので相性が悪いのです」『ハズレポン』
「えぇ!? 何なのさぁ、その反応は!? おじさんは繊細なんだから、もっと優しくして?」
残念そうな反応にマントと同じく黒色の金属小手に包まれた両手を上下にブンブンと振り回しつつ、小手と同じ色のグリーブで地団太を踏んで抗議するチャコ曰く拳聖さん。
自称繊細な彼女の腕が振り回されるたびに強風が吹き荒れ、強烈な足踏みにより結界で強化されているはずの精霊城中枢の床にヒビが入っていく。
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チャコの魔法である【鬼籍の再演】は肉体を失っても存在できるほど鍛えられた者の魂に、疑似的なアバターを与える事で一時的な蘇生を行う魔法だ。
故に呼び出すのは…………過去に死んだ強者。
理外の魔法だが、当然いくつかのデメリットや条件があり、その一つはチャコがいつも半目で過ごしている理由だったりする。
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「あの大きな鎧への加勢をよろしくお願いしますね拳聖さん」
「ちょっと押され気味だから、ガウェインの事をよろしくね」
「うん、おじさんに任せてよ! 【影の衣】」
なんとかチャコによって落ち着いた拳聖さんは軽くステップすると、宣言と共に体に纏わりついた黒いマントのフードをバサリとかぶり親指を立てて消え去った。
次の瞬間、激しい打撃音が連続でしたと思えば、ガウェインを押していたバベルフェゴールが体勢を崩す。その体にはクモの巣状のヒビが複数発生していた。
[何事でありますか!? 姿を現すであります! 悪魔の聖杯よ!]
□了解! 【極位光学術式】□
動揺した敵の誰何の声により、一体化した忠実なる僕が周辺を光でまとめて薙ぎ払った。
すると、ガウェインとバベルフェゴールの中間辺りが歪み、紫電の走る黒い障壁を展開した拳聖さんが現れる。
「これは確かにおじさんと相性が悪いかもね」
サッと障壁をマントに戻した拳聖さんが、白い巨体に残像を残す速さで迫り、ラッシュで巨体の足にヒビを入れていく。反撃に振り下ろされた腕を足場にした彼女が、ロボ悪魔の体を駆け上り頭部に強烈な一撃を食らわせた。
「この妙な攻撃の通り辛さが無ければ、すぐにスクラップにしてあげるんだけど」
強烈な一撃で倒れ込む敵を背景に、黒い小手に覆われた拳を見つめる拳聖さん。
そんな彼女にガウェインが注意を促す。
「気を付けろ! すぐに再生してくるぞ」
「硬いってそういう事かぁ……。おじさんは手数派だからね……」
起き上がったバベルフェゴールは怒り心頭の様子で叫んだ。
[事前に収集した情報に無い、吾輩の耐性を貫通するほど強力な魔法少女! 精霊連中に謀られたでありますか!?]
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拳聖さんが巨体同士の戦いに強烈なちょっかいを出して翻弄している頃、チャコは腰の黒いカードケースから雑魚悪魔のカードを取り出して空の棺に放り込んだ。
その隣では邪魔になってしまう為に後方待機となったフィオナが、チャコのやってることに既視感を覚えてしまい顔を両手で隠している。
「次は必殺の剣聖さんか勇者さんに来て欲しいのです」『賢者や道化でも可ポン』
「ついに師匠が戦いでもガチャを始めてしまったっす」『予見出来ないナー……』
棺に想像力をチャージしてある初回以外でガチャる為には、代償として多くの想像力が必要なので、悪魔のアバターを奪って作成するこのカードはLRガチャを回すのに丁度いいのだ。
勢いよく棺を閉じたチャコが再びガチャレバーを回転させれば、光り輝いた紫の棺が独りでに開き中から目を閉じた金髪の少女が祈るように手を合わせて出てきた。
「支援と回復は任せてください。茶々子さんは怪我をしていませんか?」
見開いたその目は拳聖さんと同じく蒼く輝いている。
「う~ん、聖女さんですか……」『またまたハズレポン』
「こら! 茶々子さん! 人を見て残念そうな顔をするとは、何事ですか?」
聖女さんと呼ばれた金髪の少女からゲンコツを貰ったチャコは、頭を押さえて痛がる。
「うぅ……。痛いのです」『チャコも懲りないポン』
「ポン太さんにも、後でお話があります」『ポン……』
拳聖さんの時もだがLRのデメリットの一つでもある自由意志により、ある意味で反逆可能ともいえる。
嫌がることをやらせることは出来ないのだ。
好むことは進んでしてくれるので一長一短だが。
魔法少女相手にゲンコツで痛がらせるその腕力は相当なもの。
わざとらしさを感じさせるその一撃は良い感じに想像力の守りを貫通し、痛がらせるだけで傷つけない絶妙な塩梅である。
「痛くしてごめんね。でも、この魔法の扱いには気を付けて。【祝福の祈り】君に幸あれ」
「自分の魔法の危なさを忘れるなんて不覚なのです」『僕も調子に乗っていたポン』
周囲を見回して状況を判断した聖女さんは、労わる様にチャコの頭を撫でながら幸運を祈ると前線の支援に向かった。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
長くなりすぎた為、今回は前後に分割しました。




