第34話 貢献度ガチャの敵を討つ為に成せ!
次々と邪魔をする為に現れる悪魔達をそれぞれ一撃でぶっ飛ばし、チャコ達は螺旋状の巨大な階段を駆け上る。
ここは精霊城の巨大な中央塔内部。チャコ達の駆け上る螺旋階段は、その外周に沿って作られており、塔の中心部は一番下の床まで吹き抜けだ。
吹き飛ばされた悪魔達は、真っ逆さまに落ちていく。
ようやくたどり着いた長い長い階段の頂上には、豪奢な彫刻の施された巨大な門が持っていた。
門の前でちょこんと小さくなった巨大な鎧、ガウェインが開門のパスコードを入力している間に、ポン太が提案する。
『【サタン】で行くポン。この先に首謀者がいるなら《《アレ》》で目的を吐かせるポン』
「私としてはガチャの落とし前を付けさせれるなら、なんでも良いですよ?」
『面倒臭がりなベルフェゴールが自ら動いている時点で嫌な予感がするポン』
「ポン太がそこまで言うなら、《《アレ》》をやっておきますか。【サタン】!」
首謀者と思われる悪魔へのポン太の嫌な信頼に、自分も嫌な予感がしてきたチャコは、その提案を受け入れてロバ耳魔王の姿から巨大なコウモリの羽を生やし角の如き王冠をかぶった姿へ変身した。
手に持っていた鉄杖は短剣に姿を変え、その短剣の表面を無数の白い文字が這いまわり真っ白にする。
「皆準備は良いか? ……開門である!」
振り返り確認をするガウェインに全員が力強く頷いて返事をすると、巨大な鎧の宣言で同じく巨大な門がゆっくりと開いていく。
門をくぐった先は精霊城の中枢区画だ。
中枢区画は巨大な塔の最上階全てを使った広間で、ドーム状の巨大な屋根を壁の代わりに外周に一定の間隔で立つ円柱が支えているので、開放的で不思議な空間となっている。
広間の中心には巨大な塔のモニュメントが輝いており、そこには華奢な白い少女が、入ってきたチャコ達に背を向けて立っていた。
少女がゆっくりと振り返り、頬を上げて嗤う。
「やはり来たでありますか。まあ、もう遅いのでありますが」
「何が遅いのです?」『ベルフェゴール、勝手に自己完結されても意味不明ポン』
少女の嗤いながらの独白に、チャコとポン太のツッコミが入った。
「この襲撃の目的は吾輩の権能であります【怠惰】の効果範囲を精霊城の翻訳システムであるバベルの裏機能によって全世界に拡大し、人類の生きる気力を奪い滅ぼす事だったのでありますがっ「【悪魔の技】! 言葉の鎖!」っと! 話の途中に攻撃とは、そちらから聞いたのに失礼でありますよ?」
とんでもないことを長々とした説明口調で語る白い少女姿の悪魔へ、相手の狙いに気が付いたチャコが短剣を振るって白い文字の連なる鎖を繰りだした。
音も無く光の鎖がモニュメント周辺を舐める。
その場から飛び退く事でチャコの一撃から逃れた少女姿の悪魔は、胸の前で腕を組みプクーっと頬を膨らませる事で怒っていますアピールをしている。
「時間稼ぎですね! そうはいきません!」
『敵の悪魔と会話をするなんて時間の無駄ポン。《《アレ》》で聞き出せばいいポン』
「バレたでありますか。面倒でありますが、人類を滅亡させるまでの余興には丁度いいでありますな……! 【悪魔の聖杯】よ!」
時間稼ぎを見破られた悪魔は、その手に白い物体を具現化させて構える。
その白い物体は流線型で丸みを帯びた形状をしており、下部から伸びるトリガー付きの持ち手を少女姿の悪魔が両手で握る事で構えられている。
「と……トイレっすか?」『ミニチュアのトイレだナー』
余りに奇抜なその形状にフィオナの声が漏れた。
その言葉を聞きとがめたベルフェゴールはビシッとフィオナを指差し、少し顔を赤くさせつつ早口で言い訳を述べる。
「人類の想像力で現れた吾輩たちは、その想像に近い形状と相性が良いのであります。この形状も決して吾輩の趣味と言う訳では無いのでありますからして、そこの所をよろしく頼むであります」
「ア、ハイっす」『妙な姿で想像されてる奴は大変だナー』
悪魔の妙な気迫のこもった言い訳に対し、つい引き気味になってしまうフィオナ。そんな彼女とは対照的に歴戦の魔法少女であるチャコと巨兵さんは、真剣な表情で悪魔の動きを見守っている。
「フィオナ、絶対に油断しちゃダメです」『見た目無視のガチ装備ということポン』
「絶対にイヤ~な相手だよっ!」「油断大敵である」
そんな二人の反応に気を取りなおして持ち手付きのトイレを構えた悪魔は、持ち手についたトリガーを絞りながら願う。
「【悪魔の聖杯】よ! 力を見せるであります!」
□了解! 【上位光学術式・多重化】□
「!!! 【悪魔の技】! 言葉の壁!」
悪魔の願いに電子音声で応えたトイレは更に多重化した術式を発動させ、少し開いたフタの隙間から光が奔る。
警戒していた為にチャコの宣言は光の迸る一瞬前に間に合った。
チャコ達と悪魔との間を短剣から漏れ出た白く光る文字が流れていく。
フタの隙間から放たれる無数の閃光は、光る文字の流れと激突して文字を砕き舞い散らせた。大きすぎるガウェインは上半身を吹き飛ばされて兜だけが高い天井へとクルクルと飛んで行く。
「ガウェイ〜ン!?」
「ガウェインさーん!?」『貫通力の強い術式で面制圧はヤバいナー』
文字の壁によって守られたフィオナは、ガウェインの惨状に緑の目を見開き驚いた。
弟子と違いガウェインのやられ芸に慣れているチャコは、気にすること無く【サタン】の姿になった目的である悪魔の技を発動する。
「【悪魔の技】! 悪魔の言葉!『ベルフェゴール、お前の目的と計画を話すポン』」
どこからともなく聞こえてきたポン太の質問に、ベルフェゴールが順を追って答え始める。
「吾輩の目的は人類の家畜化であります。悪魔も精霊も種の存続や勢力の拡大の事ばかり考えているでありますが、皆人間の事を甘く見過ぎであります。危険生物への対応なんて人類の歴史が証明しているのだから、めんどくさい事になる前に先手を打ち、人類には吾輩の人類家畜化計画でお世話をされるだけの想像力サーバーになってもらうであります。人類家畜化計画は三段階に分かれており、一段階目は暇そうな悪魔に専用アバターを無償で与える事によって暴走させ、人類から悪魔への認識を災害級の危険として認識させる事で悪魔全体の強化をしつつ、暴走による協定違反の罰則で困窮した悪魔を援助する代わりに契約で手駒としたのであります。ゼェゼェ、ハァハァ」
□アゥチ! ノォ!□
口に手を当てたり、チャコに攻撃したりして止めようとするが、何らかの力が口元に手を当てるのを妨害してしまう上、チャコへの攻撃は答えることを強制されている為に悪魔の聖杯とやらでぶん殴るなどの拙い攻撃に終始し、その攻撃も光る文字の壁が防いでしまう。
ようやく落ちてきたガウェインの兜が、上半身を失った下半身の近くに転がる。
「計画の二段階目は手駒にした悪魔により世界全体に対する同時攻撃を仕掛ける事で、人類から悪魔への認識を統制された災害として認識させる事でさらに悪魔全体を強化しつつ、強化された悪魔の軍勢と吾輩で手薄になった精霊城を襲撃して中枢に設置されているバベルを確保したのであります。カヒュー……カヒュー……」
「【修理】! 大丈夫ですか? ガウェイン」「ありがとう。エリス」
息継ぎすら許されない説明地獄で地面に倒れ込んだベルフェゴールを他所に、巨兵さんが下半身だけになってしまっていた相棒を直してあげれば、ニョキっと生えてきた首なし鎧が転がっている兜を拾いつつ定位置に戻して暢気に礼を言った。
「計画の、三段階目は、確保したバベルと……ぐふぅ……」□オゥノゥ……□
過酷な説明の強要により非業の死を遂げた少女姿の悪魔が消えていく。
「ひどいモノを見たっす」『容赦ないナー』
「最後まで話してもらえないと気になりますね」『根性の無い奴ポン』
[根性が無くて悪かったでありますなぁ……!]
どこからともなく聞こえる非業の死を遂げたはずの少女の声に、その場にいる全員がキョロキョロと周囲を見回す。
「予備のアバターですか?」『次のアバターにも話死てもらうポン』
『あー! アレだナー!』「えっ、またトイレっすか? 実は好きなんじゃ……?」
ネロが爪も無いぬいぐるみな腕で指し示した先では、塔のモニュメントが変わり果てた姿になっていた。その姿は白く輝く流線形で構成されており、平たく言えばフィオナの言う通りトイレだ。
フィオナの言葉を受けた巨大なトイレは、焦ったように本体をロボの様に変形させてフタを中心で割り左右に開く事で肩装甲のように展開した。
最後に肩装甲の間から頭部がクルリと現れるとツインアイを光り輝かせる。
[今のは無しであります! 吾輩は人類を破滅させるスーパーなロボであります!! トイレじゃないであります!!!]
「【悪魔の技】! 悪魔の言葉!『ベルフェゴール、その姿の事を話死てもらうポン』」
[フハハハハ! 効かないでありますよ〜だ! 精霊と悪魔の総力を結集して作られたバベル。これと一体化した今の吾輩はあらゆる干渉を多分(小声)受けないスーパーなロボ、バベルフェゴールであります! このまま、効果範囲が拡大化された吾輩の権能で、世界中の人類ごとフニャフニャになってしまえであります!!!]
チャコの容赦ない【悪魔の技】による干渉を大体弾いてみせた本悪魔曰く、バベルフェゴールが堂々と広間の中心に立つ。
『う~ん、世界の危機になってしまったポン。これは仕方が無いポン』
「えぇ……。あの魔法は後で色々と疲れるから嫌なのです……」
ベルフェゴールの自白から現状を世界の危機と判断したポン太の言葉に、チャコが渋々ながらも【サタン】を解いて短刀の消え失せたガチャレバーを構える。
『世界の危機以外での発動を契約で禁じていた《《チャコの魔法》》を許可するポン』
「ガチャレーヴァテイン……。ううううう! 【鬼籍の再演】です……!」
チャコの宣言により現れたのは、煌びやかな金装飾で縁取られた彼女よりも大きな紫色の棺だ。
紫色の棺はチャコのやけっぱち気味な追加宣言により、光り輝く。




