39.聖地にはアクスタとともに
私と梢さんは、おじいさんから頼まれた初仕事の猫探しに向かう。
「ネコ、ネコ、、、そもそも、秋葉原にネコなんているかな?私、秋葉原でネコを見かけたことなんてないよ。もしかして、私が知らないだけで、ネコって何かの隠語とか?秋葉原では、メイド喫茶のメイドさんのことをネコと呼ぶとか?」
マンションを出てとりあえず駅方面に歩きながら、隣にいる梢さんはあっさりと答える。
「いや、人探しとかじゃなく、単純に猫で間違いないみたいや。ほら、じいちゃんから対象の写真、今さっき送られてきたで。黒猫やな」
梢さんのスマホに映された猫の写真をまじまじと見る。
「ほんとだ。普通の黒猫だ。可愛い!いや、そうじゃなくて、なんで猫探しを魔法使いに依頼するの?おじいさんは特に教えてくれなかったけど、依頼主って誰なのかな?」
「一応、正式に依頼文があるみたいで、写真と一緒に送られてきたわ。依頼主は、ふれあい橋を渡ってすぐの神社やって」
「神社?なんで神社が魔法使いの協会に依頼を出すの?というか、なんで魔法協会の存在を知ってるの?」
「神社や寺は、魔法と近い業界やし、昔から相互につながりがあったんやて。じいちゃんから聞いたことあるわ。それに、魔法協会への依頼やからって、魔法関係の依頼とは限らんで。うちなんて、依頼先の神社に行ったら、ただの巫女バイトやらされたことあるわ」
「なんじゃそら。じゃあ、今回も魔法とは無関係で、だから私の初仕事にぴったりってことなのかな」
魔法関係の依頼かと思っていたから、ちょっと残念だな。でも、魔法まだ何も使えないし、仕事だって、小さいことからコツコツ積み重ねないといけないよね。
「梢さん、どこから探そうか。ネコのいそうな所、しらみつぶしに歩いてみる?」
「せやなあ、上空から飛び回って探したら早そうやけど、こんな都会で跳んだら目撃者多数であかんし」
「残念~飛ぶの教えて欲しかったなあ!それじゃあ、高いビルの屋上から当たり一帯を見下ろして探すのがいいんじゃない?」
ということで、私たちは、駅前にあるラジオ会館ビルの屋上へ上がった。
「眩しい!めっちゃ良い天気!屋上最高!」
「これは気持ちええな!ここら一帯見渡せるし、薰、良い目のつけどころやな!ここの屋上に上れるなんて、知らなかったわ」
「そうでしょう?たしか、一年のうち、屋上を解放してるのは数日だけんなだよ!ここって、私の大好きなとあるアニメの聖地でね。ここの事、去年知って、一度来てみたかったんだよね!高すぎず、歩いてる人まで見える高さだから、道にいるネコもどうにか見えそうで、丁度いいでしょ?」
「お手柄や!じゃあ、うちはあっち側から見ていくから、薰は反対側から見てきてくれる?」
「了解!」
私と梢さんは手分けして、屋上から道を見下ろしてネコを探す。
「その前にちょっとだけ」
ごそごそとポケットを探り、あるものを取り出す。それは、さっき言ったこの屋上が聖地のとあるアニメのキャラクター達のアクスタ。いつもは自分の部屋の本棚の上に飾っているのだけれど、引っ越しにあたり、新居に初日から飾りたかったので、ポケットに入れて持ってきていた。
聖地を背景に、アクスタと写真を撮るなんて、至福の時間で幸せすぎる。スマホを取り出して、何枚か角度を変えて写真を撮る。
ん?今、なにか、足下にふわっとした感触がしたような。柔らかくて温かいなにかが。
「あ、ネコ見つけた」
下を見ると、ついさっき写真で見た黒猫が、私の足にじゃれついている。どういうこと?なぜ屋上にネコがいるの?」
「梢さーん、なんか、よく分からないけど、ネコ見つけたよ!」
梢さんに大声で呼びかけて周囲を見渡して、ふと気がつく。いつの間にか、屋上には誰もいない。それに、さっきまで眩しいくらいの青空が広がっていたのに、いつの間にか夕日が射している。




