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ハジマリ

ーー何が起きているのかは分からない。


青年は目の前に広がる光景を目の当たりにし、困惑していた。


なぜなら、自分が今まで居た世界とは違う新しい世界、『異世界』が広がっていたのだからーーー。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



青年、如月零きさらぎ れいには、帰るべき家も、待ってくれている家族もいない。


9歳の夏だった。突如として襲った不慮の事故により、両親と年の離れた兄を一瞬にして亡くした。

天涯孤独の身となった零を待っていたのは、親戚たちの冷酷な視線だった。


「厄介者が増えた」


「お前があの時一緒にいれば」


そんな言葉を浴びせられ、あちこちの家にたらい回しにされる日々。


誰も自分を見てくれない。


誰も自分を必要としてくれない。


そんな息の詰まるような環境に耐えかね、中学を卒業すると同時に零はすべての縁を切り、

社会の片隅でひっそりと一人で生きることを選んだ。


まともな食事も摂らず、日雇いのアルバイトを掛け持ちして泥のように働く毎日。


今日だってそうだった。まともに食べられていない身体はとうに限界を迎えていた。

疲れ果て、重い足取りでトボトボと夜道を歩いていた、その時だ。


鴉の鳴き声が聞こえた。カア、カア、カア、カアと。


うるさいなと思いながら歩いていると、急に視界がぼやけた。


めまいがする。

空腹のせいだろうかと彼は目をこする。


しかし、めまいは止まらない。


吐き気がする。胃の奥になにか冷たい塊でもあるような感覚だ。


気持ち悪い。


苦しい。


痛い。


死ぬ。


ーー彼は意識を失った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


彼、キサラギ・レイが目を覚ますと、そこは見たことのない部屋であった。


「ここは…? どこだ…?」


俺はなにか手がかりになりそうなものを探そうとした。


部屋中を探し回る。鏡があった。


なんの気無しに鏡を見た。


しかし、鏡に写っていたのはみすぼらしい黒髪の日本人ーーではなく、

白髪で水色の目をした青年だった。


綺麗でさらさらなな白い髪。

星のように純粋に輝く水色の透き通るような眼。


「なんだこれ…。 こ…れが…おれ…か…?」


もう何もわからなくなる。

俺はドアを開けた。そして今の状況である。


外は現代日本とはまったく違う、「異世界」としか言えないものだった。


ドアの外に広がっていたのは、中世のヨーロッパを思わせる石畳の街並みだった。

しかし、決定的に違うのは、行き交う人々の中に獣の耳を持つ者や、きらびやかな衣装をまとった者たちが混ざっていること。

そして、空には二つの月がかすかに白く浮かんでいた。


「本当に……違う世界なのか?」


レイは自分の白い髪に触れ、呆然と立ち尽くす。

元の世界での孤独、冷遇、そして泥のように働く日々。

あの苦痛に満ちた意識の途切れが「死」だったのかは分からない。

しかし、鏡に映った新しい身体からは、あれほど苦しめられていた慢性的な胃の痛みも、身体を引きずっていた重い疲労感も、完全に消え去っていた。


その時、背後から声をかけられた。


「おい、そこのあんた。見ない顔だな」


振り返ると、そこには革の胸当てを身につけた恰幅の良い男が立っていた。

宿屋の主人か、あるいはこの建物の管理人だろうか。

男はレイの姿を上から下まで値踏みするように見つめ、驚いたように目を見開いた。


「いや……その白い髪に水色の眼……まさか、北の雪峰から来た氷晶の一族…フロストリアの生き残りか? 随分と綺麗な身なりをしているが、記憶でも失っているような顔だな」


氷晶の一族。フロストリア。

聞き覚えのない単語に、レイは自分の置かれた状況を察する。どうやらこの世界で、この身体はそれなりに珍しい存在、あるいは何かしらの背景を持つ姿らしい。


「あ、いや……」

言葉に詰まるレイに、男はふっと表情を和らげ、ぽんと肩を叩いた。


「まあいいさ、訳ありの旅人は珍しくない。行き倒れてるのをうちの若いのが見つけてな。動けるようになったなら、まずは一階の食堂へ来い。美味いスープがある」


男が去った後、レイは自分の胸に手を当てた。


元の世界では誰も自分を気にかけてくれなかった。誰も自分を必要としてくれなかった。

しかし今、新しい身体と、新しい世界が目の前に広がっている。


(ここでは、誰も俺の過去を知らない)


レイの心に、これまでにない奇妙な高揚感と、わずかな希望が芽生え始めていた。

彼はゆっくりと足を進め、新しい一歩を踏み出すために階段を降りていった。

はじめまして。

この小説を執筆しているねこりえと申します。

僕は今13歳の中学生です。小説の執筆に興味がありまして、この小説を執筆しました。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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