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20/20

告白

桜が咲いていた。


去年もその前も変わらず咲いていたはずなのに、今年の桜は少し違って見えた。


私は書道教室へ向かっていた。


いつもの道。いつもの駅。いつもの教室。


でも、今日は少しだけ違う。


鞄の中にはノートが入っている。


懐かしの、あのノート。


高校生の婚活なんて、今考えると意味が分からない。


まりあさんに影響されて、同級生を評価して。


結婚相手としてどうかなんて考えて。


そして、そんなことをしているうちに、気付いたら好きになっていた。


結局、恋愛に分析は役立たなかった気がする。


好きになってから理由を探すものだった。


---


教室に着く。


先輩はもういた。


いつもの笑顔。


「こんにちは」


「こんにちは」


それだけで少し安心する。


墨の匂い、紙の音、先生の声。


何も変わらない、いつもの教室。


でも、今日で終わる。


今の関係は。


---


授業が終わり、当たり前のように一緒に帰る。


いつもの流れだ。


駅までのいつもの道。


沈黙が続く。


私が緊張して、いつものように喋れないからだった。


そして、その沈黙が更に私を緊張させる。


人生で一番、受験よりずっと緊張している。


改札が見えてくる。


今言わなければ、また来週になってしまう。


「先輩」


声が震えた。


先輩が振り返る。


「ん?」


私は深呼吸する。


怖い。でも、言いたい。


「話したいことがあります」


先輩が少し驚く。


「うん」


春の風が吹く。


桜の花びらがふわっと何枚か舞った。


「私」


心臓が痛い。


「先輩のことが好きです」


頭が真っ白になる。


逃げ出したい。消えたい。


でも、言った。


私はちゃんと言ったぞ。


しばらく沈黙が続く。


先輩は驚いている、のだと思う。


言ってから顔を上げられない。先輩の顔を見られない。


だから驚いているのか困っているのか、どんな衝撃を先輩に与えてしまったのかわからなかった。


やがて、先輩が口を開いた。


「ありがとう」


優しい声だった。


私は顔を上げる。


「正直」


先輩が少し困ったように笑う。


「全然気付いてなかった」


なぜか私もつられて少し笑ってしまう。


「でも」


先輩は続ける。


「すごく嬉しい、です」


胸が苦しくなる。


「ただ」


私は息を飲む。


「僕、春から大学で県外に行くんだ」


知っている。


「はい」


私は頷く。


「だから」


先輩が言葉を選ぶ。


「今すぐ付き合おうって簡単には言えない」


私は静かに聞く。


不思議だった。


きっと私は今振られているんだと思う。


だけど、悲しい気持ちにはならなかった。


「でも、大学に行っても、連絡取っていいかな」


私は固まった。


「え」


「寂しいって思ってた。進学したら、この時間がなくなること」


春の風が吹く。


桜が舞う。


「嫌?」


「嫌じゃないです!」


大きな声が出た。


先輩が笑う。


私も笑う。


涙が少し出た。


なんの涙なのかわからない。


でも、すっきりした。

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