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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第30話 ベーリング海

いよいよ北方から北アメリカ大陸へ進みます。

 カムチャッカ半島の東海岸、ベーリング海につながるカラガ港に、2隻の中型駆逐艦が停泊している。海軍の高速偽装蒸気船だ。乗員は100人。擬装用の帆柱と帆は徹底した軽量化が図られ、実用にはほとんど役立たない。武装も甲板上に可動域の広い小型大砲2門だけだ。


 粉雪と竜之介が2人の船長に挨拶している。


「このたびは部隊輸送の任務、ありがとうございます。」

「はっ、日本海軍高速機動作戦艇、飛龍と雷鳴です。金竜疾風のみなさんを目的地まで2週間以内に送り届けます。」

「よろしくお願いします。それでは各隊の隊員をご紹介します。アリューシャン列島を経由する島嶼組は、雪菜、エルニカ、凍雨。ベーリング海峡を経由する極北組は、犬風、オムリーネ、雪蔵。それぞれ以後アー組、べー組と呼称します。それぞれ自己紹介するように。」


「はい、アー組の雪菜です。蝦夷地出身です。祖父と祖母は、かつて粉雪様と活命訓練を経てアムール川流域を探索し、ハバロフスクでロシアと戦いました。」

「同じくアー組のエルニカです。甘雪出身でチュクチ族です。戦争のときに粉雪様の導きで樺太の義務学校に入学し、そのまま樺太の金竜疾風に入りました。」

「アー組の弦矢です。尾張の出身で、父と母は引退後に軍隊学校と外国語学校の教師になりました。よろしくお願いします。」

「べー組の犬風です。皆と違って、俺は北国の生まれではありません。父と母はハルピンに潜入していて、清とロシアの条約のネタを掴み、ハバロフスクの粉雪様に知らせました。その後、帰国して奥州で薬の稼業と情報収集をしたあとで、掟が変わって里を抜ける許しが得られたので、2人で演芸の仕事をしていたそうです。よろしくお願いします。」

「べー組のオムリーネです。エルニカと同じく甘雪出身でチュクチ族です。粉雪様の導きで樺太の義務学校に入学し、そのまま樺太の金竜疾風に入りました。よろしくお願いします。」

「べー組の凍雨です。雪菜と同じく、祖父と祖母は金竜疾風として粉雪様とともに戦いました。祖父は凍吉、祖母は氷雨です。2人は蝦夷の里で結婚し、母を産んで、えーと、長くなるので省略します。よろしくお願いします。」

「お孫さんとお子さん、2世代がいるのですね。」粉雪は微笑んだ。

「私たち孫勢は、なんかこらえ性のない家系みたいで少し恥ずかしい。」と雪菜。

「ふとした弾みで世代交代の規則に傷を付けている気がする。」と凍雨。

「私が天馬と安寿を産んだのが26~7なので、その10年前に産もうと思えば産めましたね。そうすると安寿はいま36歳になるので、20年前に子どもを産んでいれば、私も立派なお婆さんですよ。早く次の世代が産まれるのは別に恥ずかしいことではありません。こうして同じ作戦に、親子の系譜が重なり合うみなさんが参加できるのはむしろ喜ばしいことです。次の世代に夢をつなぐためにも、これから親になる皆さんも頑張りましょう。」


 海軍の高速機動作戦艇、つまり偽装蒸気駆逐艦改良型、いや「つまり」のあとのほうが長ったらしい、やはり元に戻して、高速機動作戦艇は、信じがたい速度でベーリング海を進む。沿岸には珍しい海洋生物が認められたが、帰還時の海軍に調査は一任しよう。アー組の船は4日でアリューシャン列島の東端に到達し、雪菜たちは北米大陸につながる長い半島の先端に降り立った。


「ここはカムチャッカ北部と風景が似ているわね。」雪菜は額に手をかざして付近を眺めた。

「湿った草地と低木。でも夏だからか花も咲いている。」エルニカは土壌と植生を調べる。

「海にはアザラシやラッコもいるな。」弦矢は道中の狩りを考えた。

「ここから半島を延々と北東に進むのね。船なら早いのに。」雪菜は顔をしかめた。

「調査が目的ですから、ずるして早く着いても意味はありませんよ。」エルニカは微笑んだ。

「そうね、特に現地の人々と接触するのが一番の目的だからね。」

「それじゃ出発しよう。」



 カムチャッカを出て5日後にべー組の船はベーリング海峡に到着した。甲板から望遠鏡でチュクチ海を観測すると、真っ白で巨大な熊が氷塊の上に寝そべっていた。もう5月だというのに、海には氷塊、なかには氷山と形容してもおかしくないくらい巨大な氷が浮かんでいた。


「ここが私たちの種族と同じ名前を持つ海なのね。」オムリーネは感慨深そうに言った。

「この海を北の果てまで進むとどこに着くのかしら?」望遠鏡を眼に当てて凍雨がつぶやいた。

「地球は丸いらしいから、裏側に行くんじゃないか?」犬嵐はさして興味がなさそうに棒飴をかじった。

「そうじゃなくて、裏側に回る前のてっぺんのことよ。何があるのかなって。」

「海が凍っているだけだろ。」

「つまらないわね。北の大魔王でもいれば良いのに。」

「大魔王なのにひとりぼっちで氷に閉ざされて震えているなんてかわいそうすぎるだろ。」

「あの熊、強そうね。」凍雨から望遠鏡を受け取ったオムリーネが言った。

「おい、熊には挑むなって里で教わっただろ。」

「戦いませんよ、私は逃げ足だけは速いんです。」

挿絵(By みてみん)

 

 現地の人々はこのあたりの土地、あるいはこの村をサンモニと呼んでいた。サンモニでは、吾具が屠った獣の解体が行われていた。皮は貴重な素材だ。丁寧に剥ぎ取られ洗浄される。肉は腐らないようにその日のうちに宴で振る舞われた。見たことがない獣の肉を食べることに少しためらいはあったが、紫影と銀天は思い切ってかぶりついてみると、赤身の肉は鹿肉のような食感で、なかなか旨かった。奔吾は、自分が蹴り殺した獣をどうしても食べる気にならないようだったが、「屠った獣の魂を受け継ぐのが戦士の勤めだ」とアハシトに言われ、目をつぶって肉に齧り付いた。


「ねえ、アハシト、このあたりにあなたたちと同じような人間は住んでいるの?」肉を噛みながら紫煙が尋ねた。

「あっちとあっちに集落がある。縄張りがあるので、狩りをするときは気をつけなければならない。勝手に遠くで狩りをするな。」

「もっと遠くに行ったら?」

「山のほうにはタタヴィアがおる。近づくな。長い槍で襲われる。」

「戦ったことがあるの?」

「10人殺された。逃げて住む場所を変えた。」


「タタヴィア、調査が必要ね。」

「ああ、夜のうちに出発して、集落を見つけたら距離を保って野営し、朝になったら接近を試みよう。それと奔吾、うかつに攻撃するなよ。」

「わかってる。俺も忍びだ。わきまえている。」


カリフォルニア組は他種族の調査に向かうけど、どうなるのでしょう?

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