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織田家のアナザー・ジャパン  作者: 青い水


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第15章 ロシア兵掃討

いよいろ敵の基地を急襲するよ

「おーい、信宏、そろそろ隠居しろよ。もう1635年だぞ。おまえ50歳だろ。信長は人生50年って言ってたぞ。」


「そうですね、孫も10歳になりましたし、そろそろ潮時でしょう。息子の信吉をよろしくお願いします。」


「信吉って、女好きなんだっけか?」


「はい、でも息子や娘がたくさんできたらすっかり子煩悩になったようです。」


「それはなにより。歳を取ってからの色狂いは始末に負えないからな。」


「何かアドバイスはいただけますか?」


「うん、信吉に直接言うわ。隠居したら餅つきと盆踊りの祭りを忘れないことだ。」


 この年、日本に多大な貢献をした織田信宏は、隠居記念の祭りで喉に餅を詰まらせて50歳の生涯を閉じた。日本国は全国に向けて老人に餅を食べさせる危険について注意喚起を行った。


「おーい、信吉、元気か?親父さんは気の毒な死に方をしたな。」


「あ、青水だ、初めまして。信吉だよ。」


「なんか軽い奴だな。アドバイスが欲しいか?」


「うん、欲しい。」


「石炭は十分に採掘できてるか?これからの世の中は石炭の火力で動く。これを十分に意識しろ。俺からはそんなところだ。何か質問はあるか?」


「そうだなあ。歌や踊りの娯楽に国が金を出すってのはどうかなと思うんだけど、どうかな?」


「それは悪くないな。日本は南北に長い。人の気持ちがまとまるのが難しい。歌や踊りは誰にでも通じるし、良い思いつきだ。やってみろ。」


 1635年、尾張の製鉄所。

「なあ、石炭がどんどん入ってくるが、使い方が難しいな。」製鉄所の主任、安藤森鉄は同僚たちに語った。「火力が半端ないから鋳鉄のの中で燃やすと容器が溶ける。鉄の材質を改善しないと使い物にならんぞ。」

「たたらの皆さんにもっと研究していただきましょう。」

「うむ、それと竈も溶けたり割れたりするので、熱に強いレンガが必要だな。」

「ならば、陶器製造で土に詳しい金竜疾風の開発部と国土建設省のみなさんで共同研究をしていただきましょう。」


 1635年、大阪の演芸場。

「なあ、座元の旦那、尾張からお客さん来てまっせ。」

「そうか、ほな通しなはれ。」


「こんにちは、旦那さん、日本国娯楽省の猿渡と申します。」

「こんにちは、今日はどないな用事でっか?」

「お金を持ってきたんですよ。働いてもらおうと思って。」

「はぁ?」

「日本国では、北はカムチャッカから南は台湾まで、同じ娯楽を皆で楽しもう、という企画を初めましてね、おたくの劇団に目を付けたわけです。」

「はあ、そりゃどうも。」

「おたくの劇団に脚本、つまり小芝居や話芸や歌など一連の出し物のネタを作ってもらい、それを北から南までの芸人たちに練習してもらい、完成したら一挙に発表です。各地の練習にはおたくから指導者が行ってもらいます。いかがでしょうか?」

「そりゃすごい計画でんな。でもうちら、関西のお客さんしか相手にしたことがないから、そんな蝦夷地とか台湾でウケるかどうかわかりまへんのや。」

「そこで、予行演習と現地視察です。3ヶ月ほど地方巡業に出てもらって、各地の状況を身をもって感じて来てください。それによって南北に長くて多様な日本人の心を掴むコツはどこにあるか調査してください。」

「なかなか大変なお仕事ですけれど、お国のためというのを今までやったことがないので、やらせていただきまひょ。」


 1635年、ハバロフスクの金竜疾風の出張所。

「はいはーい、ここに並んで自己紹介してくださいね。」

「俺は銀河、尾張生まれの生粋の金竜疾風です。」

「俺は蔵王、奥羽の金竜疾風だ。」

「私は美月、関東の里から来ました。」

「私は京香、畿内の里から来ました。」

「はい、では手を出してね。粉雪特性蜂蜜飴でーす!」

みんな驚いて手のひらの飴を見つめた。

「私、粉雪と申します。5年前にここで作戦に参加して、すっかりここが気に入ってしまったので、里に申し入れて残ることにしちゃいました。現地の言葉も覚えたしね。もともと樺太生まれだから、あまり違和感がないの。これからここにルーシエが攻めてくるので、現地の人たちに協力しましょう。もうすぐ日本から武器が届くので、それを村の人々に配付して使い方を教えてください。言葉が通じないからってイライラしちゃだめですよ。皆さんもあちらから見れば、同じく言葉が通じないやつらですからね。」



「おい信吉よ、ロシアとやり合うつもりか?」


「そうだね、とりあえずアムール川沿いの人々が虫けらのように殺される状況は看過できないんで、鉄砲を渡して抵抗できるようにするし、日本海沿岸には陸軍を展開して、場合によっては介入させる。こっち来んなって感じ。」


「まあ確かにこっちに来ると樺太やカムチャッカもやばくなるし。」


「大陸沿岸部に展開した陸軍は、危機が去れば撤退するよ。また危なそうなときに駆けつけるねって約束して。」


「ああ、それが賢明だ。これ以上の領土拡大は国にとって大きな負担となる。」



 ハバロフスクには続々と最新式の燧銃が集まっていた。樺太の港からアムール川の河口へ入り、流れに逆らって上流へ進みつつ、途中の集落にも武器を手渡しながらハバロフスクを目指す。この作戦のために設計された輸送船は駆逐艦を改良して小型化したもので、川を上流へ進むため帆と手こぎを併用して進む。漕ぎ手を中心にした乗組員は80人。これは海軍から派遣された。燧銃と弾薬その他は5000丁、最終的にハバロフスクへ搬入されるのは2500丁だ。初回の戦闘の結果を見て、必要とあれば2度目の輸送も検討する。


 粉雪はこの5年の間、精力的にアムール川河口からハバロフスクを往復し、複数の現地の言葉(その中には樺太生まれの彼女に馴染みあるものもあった)を覚え、金竜疾風の技術で作った薬剤を配付して回っていた。そんな彼女を現地の人々は「甘い薬師の戦乙女」と称えていた。


 アムール川の左岸から北方に広がる土地とアムール川の上流でロシア人による被害が出ていた。彼らは毛皮を求めて侵入してきたようで、集落を見つけると有無を言わさず「ヤサーク」と言って、まるで税を徴収するように毛皮を奪い取るらしい。抵抗して全滅した集落も数多くあったらしい。粉雪はアムール川の上流にまで気を配ることができなかったことを悔いた。同時に、1人の力には限界があることを痛いほど思い知った。いや、後悔では終わらせない。鉄砲が届いたら上流に居座るルーシエに犯した蛮行の報いを受けさせてやる。粉雪は唇をかみしめた。



 この頃、後に満州と呼ばれることになる地域には、信長が口入れ屋を通して非公式に派遣した侍の子孫が多数残っていた。最初は10000人もの大勢力で明に雇われていた彼らも、ある程度金ができると故郷に帰り、新たに来る者の数も減り、今は3000人ほどに減っていた。彼らは一カ所にまとまって生活していたわけではなく、雇い主がいる場所に分散して放浪生活をしていた。黒田竜之介は現地生まれの3代目で、日本語は話せたが、別に日本食が好きというわけではない。好物は麻婆豆腐と酢豚だ。


 祖父は日本で死にたいと老いてから帰国し、帰国後すぐに亡くなったらしい。祖母は中国人で、家の女中だったらしい。祖父が帰国するとき、自分も中国の実家へ帰った。父は祖父の葬儀のために1度帰国し、日本で結婚して戻ってきた。かつては明に雇われていた侍傭兵だが、今は明が滅びそうなので、みんな新興の金の傭兵になっていた。竜之介もその1人で、ハルビンに住む。この町はアムール河畔の大きな町で、竜之介は明の残党やモンゴルからの侵略者と戦っていた。


 この時代、もう刀や弓の時代ではなくなりつつあったので、竜之介も鉄砲を所有していた。日本製だ。日本はこの頃アジア最大の武器生産国で、鉄砲は重要な輸出物だった。かつては尾張に集中していた武器生産は、迅速な配備の必要から、北は樺太南は台湾まで、8カ所に分散されていた。日本の銃は中古品でも高く売れたので、日本軍は型落ちの中古品を外国に売り、兵には常に最新装備を配給した。竜之介は比較的新しい中古品を闇の武器屋から仕入れていたのである。


 ある日、竜之介が仲間と哨戒任務に就いていると、これまで見たことがない兵士の一団がアムール川を船で東へ向かうのを見つけた。その背丈、遠目にも6寸近くあり、風貌もこのあたりの人間とはまるで異なっていた。「あれが金の武人が言ってたルーシエか。組み手は遠慮したいな。」竜之介は銃を抱える手に力を込めた。



「おーい、船が来るぞ!」下流のほうで見張りに立っていた現地人が叫んだ。大きな輸送船が流れに逆らって力強く近づいてきた。

「粉雪―!」甲板で手を振る男女がいる。雪乃、氷雨、寒蔵、凍吉、冷矢の5人だった。

「久しぶりだな、粉雪、元気にしていたか?日本から土産に飴をたくさん持ってきたぞ。日本全国の味だ。南国の果実の飴、ミカン飴、小豆飴、ずんだ飴、リンゴ飴、蝦夷の牛乳飴。全部食って良いぞ。」冷矢が微笑んだ。

「わぁー、ありがとう、すごく嬉しい。ゆっくり食べるわ。」粉雪はそう言いながらずんだ飴をさっそく頬張った。

「最新式の燧銃2500丁、1年間戦える量の弾と火薬、準備はこれで万全だな。本当は5000丁積んできたんだが、河口からここに来るまでに流域の集落に少しずつ渡してきたので、半分になった。銃を渡した集落には海軍の軍人さんが1人残って、使い方を教える。輸送船が帰るとき軍人さんを拾って行くことになっている。俺たちと船の乗組員の半分はここに残っていっしょに戦うぜ。」

「ええ、頼りにしてるわ。敵は大きいから良い的になるでしょう。」


 現地人の代表たちに銃の使い方を教えていた銀河、蔵王、美月、京香が、指導を終えて戻ってきた。「先輩方、おつかれさまです。これだけ金竜疾風が揃うと圧巻ですね。」銀河が上気した顔で目を輝かせた。

「現地の方々、鉄砲の撃ち方を覚えたの?」

「とりあえず引き金を引くまでの手順は教えました。」

「では次は実際に的を撃ってもらいましょう。ほら、こんなに鉄砲があるのよ。」

「うわ、これだけあればこの付近に住む人たちみんなに行き渡るわね。」

「ここの人たちは字を読む習慣もないし、小さいころから鳥獣を狩って暮らしているので目が良いのよ。きっと射撃もすぐに上達すると思うわ。それでね、みんな。」粉雪は居住まいを正して皆を見つめた。

「それでね、みんな、来たばかりで悪いけど、この川の上流にルーシエが巣くっているらしいの。やつらは上流の人々を襲って毛皮を奪い、女子どももすべて殺したとここの人たちが言っていた。私と雪乃、氷雨、寒蔵、凍吉、冷矢の6人、それから仲間を殺されたこの村の人々10名、合計16名で討伐に行きましょう。斥候の話では、敵は40人程度らしい。」

「おう、長い船旅で身体がうずうずしてたところだ。派手にぶちかましてやろうぜ。」

「川の左岸と右岸で二手に分かれて襲撃しましょう。」


 粉雪は同行する村人を慎重に選んだ。みな復讐心をたぎらせているが、ここは冷静に動ける人間でなければ危険だ。初戦で犠牲者は出したくない。村人たちは射程の外に待機して、戦闘から逃げ出して射程に入った敵を撃つ、という方針に決まった。


 討伐隊は木の枝で偽装してアムール川の左岸と右岸を上流に向けて進んだ。4里ほど進んだところに粗末な小屋が見えた。遠目の聞く忍びたちには敵の姿も確認できた。


「あそこだ。手配通りに行くわよ。」

「おう。」


 金竜疾風の6人は、右岸と左岸から文字通り疾風のように小屋に到達して煙り玉を投げた。突然の襲撃に右往左往して銃に弾込めを始める兵士たちにくないや手裏剣が容赦なく突き刺さる。銃を諦めて剣や槍で白兵戦を挑む敵は忍刀で腕や指を切り落とされ、出血して小屋から敗走する。そして、村人たちの容赦ない射撃の餌食となる。戦闘は開始準備を合わせても1時間もかからなかった。しかし、小屋の裏口から逃げ出した兵がいたことに粉雪たちは気づかなかった。

挿絵(By みてみん)

 小屋の中にめぼしいものは残されていなかった。敵が残した武器は性能調査のために鹵獲した。誰もロシア語がわかる者がいなかったので、残された書類は謎だらけだったが、これも今後のために保存して持ち帰る。壁に貼ってある当番表らしきものを見て、粉雪は首をかしげた。転がっている死体と数が合わない。寒蔵が浦口を発見した。「ここから逃げたか。」


アムール川流域はどうなっちゃうのでしょう?

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