ガーネット、落とし穴にはまる。
破れてしまったガーネットの黒ローブ。それを、ランは10秒で直してしまった!
ガーネットは恥ずかしそうに、
「あ、ありがとございます……。ラン、さん」
「いえいえ、手先は器用なので」
さすがだっ! 手のすばやさ2000はダテじゃない!
早速、ガーネットは黒ローブを羽織る。
相変わらず、ミニスカートが恥ずかしいようだ。
黒ローブを装備したガーネットは、いつもの調子に戻った!
「ふはははっ、魔王の復活なのだっ! ランよ、ご苦労であったぞ!」
さっきと態度が天と地くらい違う!
それでもランは普段通りに、
「魔王・ガーネット様。また破れたら、直して差し上げます」
「うむ、頼むぞ!」
「お任せを。裁縫は好きなので!」
「そうか、よい趣味だな。……じゃ、じゃあ今度裁縫を教えて、下さい」
また弱気になった!
「いいですよ! 優しく、丁寧に教えてあげます」
まさか、アッチ系のことを教えないだろうな?
ガーネットは頭を下げて、
「よろしく頼む。いや、お願いします……。そ、それとランさん」
「何でしょう?」
「お、お料理は得意ですか?」
「ええ。裁縫は10秒。料理は30秒でできます!」
一家に一人はランがほしい!
近未来。量産されたメイド姿のランが、世界中の家庭に笑顔を届けるかもしれない!
などと、俺は想像している。その間、ガーネットはランのすごさに驚いていた。
「すごいっ! どうやったら、そうなれるのだ?」
「花嫁修業をしましたから!」
「花嫁修業……、魔王には解らぬ。それは、どんな修行なのだ? 教えてくれっ!」
「そうですね……。谷からバンジージャンプをして、木からりんごをもぎとったり」
「ふむふむ」
「大砲に入って空を飛び、海峡を横断。みんなが見てる中、巨大噴水に打たれて身を清める。後は……」
何の修行だっ! 世界でも救うつもりかっ!
俺がつっこみをいれている間に、ランの武勇伝は終わったようだ。
俺はみんなに呼びかける。
「黒ローブは直ったな! そろそろ、魔物建設(株)本社を目指そう!」
「おー!」
しばらく歩いていると、ランに呼びかけられた。
「勇者様、右手をご覧ください!」
「あっ、高層ビルが10棟も! まるで、小さな街のようだ!」
「あれが、魔物建設(株)の本社です」
「まさに、ムダな努力の結晶だな。一つのビルが倒れたら、ドミノ倒しになりそうだ!」
俺がそう言っている間に、ガーネットが走り出した!
「ムダな建築をしおって! 許せん!」
おおっ、魔王・ガーネットが珍しく正義の言葉を!
「余の城など、町民グラウンド程度の広さしかなかったんだぞっ!」
違う、逆恨みだっ!
「あの社長、余が死んだから調子に乗ったな!」
怒りで猪突猛進するガーネット! しかし、ランが注意を呼びかける!
「気をつけてっ! この辺りから、落とし穴のエリアですよっ!」
しかし、時すでに遅し。
「ぎゃふっ!」
ガーネットは、落とし穴に落ちてしまった!
「大丈夫かっ!」
心配になった俺が、穴の方へ行くとーー。
「ふええ……」
ガーネットは、頭から穴に落ちていた。ミニスカなのに、大股を開きながら。
股の間を手で覆い、ガーネットは力無い声を出す。
「だ、大丈夫なのら……」
俺は、ガーネットをお姫さまだっこして救出。そのまま、ランにたずねた。
「落とし穴は、どれだけあるんだ?」
「ざっと数えて、1000あると言われています!」
「この会社、いつかムダでギネスに載りそう!」
「しかも、私はこの辺りと聞いているだけ。穴の正確な場所は解りません……」
「マジかよ!」
「どうやら、落とし穴の中にはワナがあるみたいです!」
「どんな?」
「画びょうが落ちていたり、たこ焼きが焼かれていたり……」
「ムダもここまでくれば立派だなっ!」
「ただ中には地雷や針の山、毒沼もあるようです!」
「なんだって!? 簡単には通れないじゃないかっ!」
「はい、残念ながら……」
「どうすればいい!? どうすれば、街を救えるんだっ!」
「魔物建設(株)の従業員に、穴の位置を聞くしかないでしょう……」
「あそこはブラックだ! が、生活を人質にとられてたら内部事情を簡単には話せないだろ! ……悪い、ランに当たっても仕方ない」
「いえ、気にしないで下さい」
辺りが重い空気に包まれる。チートがあっても進めない。
俺が、ガキの頃に高難度ゲームを積んだことを思い出しているとーー。
「はあ。いつ、会社から追放されるかと不安でならない」
俺たちの横を、スケルトンが通りすぎた。
よほど思い詰めているらしく、俺たちには気づいてないようだ。
俺は小声でみんなに呼びかける。
「そっと、あいつの後をついて行こう!」
女の子たちはうなずいた!
こうして、俺たちは落とし穴エリアを抜けることができた!




