誤解
リリは加減をしながらも襲いかかってくる人を高速で倒していっている。
ドラはリリの死角に回りながらリリのことを守っている。
前の時よりも二人の連携が上手く取れている気がする。
結果的に、先ほどの女性との戦いがリリとドラとの連携をさらに強化させてくれたようだ。自分たちだけでは気が付けない改善するべきことというのは意外とある。
意識が変わることで見えるものが変わるのはよくあることだ。
それよりも……倉庫の中から男たちの数が少しずつ減っていっている。
天使の湧き水の人たちと戦っている奴らもいるが、箱を持った男たちの数が異様に少ない。抜け道があるのか徐々に倉庫から消えているようだ。
どこへ行ったんだ?
辺りを見回すと、倉庫の端にある小さな扉へ男たちが身を隠すように入っていった。
あそこが抜け道か。
「エディあの扉の先はどうなっているんだ?」
「あの扉の先は……俺も入ったことがないです」
「なら乗り込むしかないな」
僕たちが扉へ向かおうとすると、天使の湧き水のメンバーからいきなり斬り付けられる。
「盗賊め! 大人しく捕まりなさい!」
相手にしている時間がもったいないので、その人を一瞬でスリープの魔法で寝かしつけ、頭を打たないように優しく抱きかかえ床へ寝かしつける。
ビキニアーマーを着た女戦士の人だが、いきなり眠って頭を打ったら大変だ。
こんなんで怪我をされて問題にしたくない。
盗賊の方は…そこまで気を使わなくていいだろう。
やっぱりスリープの魔法は全体へかけるよりも個人にかける方が効果が絶大だ。
油断していると思って襲い掛かってきた人たちををそのまま寝かしつける。
「パックさんいいんですか? このままだと天使の湧き水と敵対してしまうんじゃ……」
「大丈夫だよ。あとでコクリンさんに説明してもらえば何とかなるよ。それよりも早く子供たちを助けに行こう。あそこの扉の中に人が入って行ったからあそこが怪しいと思う」
男たちがあの扉の中に消えていったまま誰もあそこからでてきてはない。
そう思っているとまた一人箱を持った男が扉にはいっていった。
僕はリリの方へ視線を動かすと、リリと視線があう。
リリは口をパクパクさせて、
『若い女の子なに抱きしめてるのよ!』
と言った感じで文句を言っているような気がするがスルーしておこう。
『鼻の下伸びてるわよ』
リリの声は聞こえないが多分そんな感じのことを言っている。
僕はそのままハンドサインで進む方向を指し示すとリリは頷き、僕が向かう扉へと走り始めた。合流してからが怖いが……今はそれどころではない。
もともとの実力差があるためか、リリに追いつける人間は誰もいなかった。
だけど、リリは扉に向かいながらも器用に盗賊の頭を脚ではじいて気絶させていく。
少しでも敵を減らしてくれているんだろう。
僕の方は……襲ってくる人間だけをスリープの魔法で寝かしつけていく。
遠目に見たら僕が歩くだけで人が倒れているように見えるだろう。
扉が近づくにつれ段々と襲ってくる人数が減り、僕が歩いていくだけで道が開けていく。
逃げていく人はわざわざ追いかけない。こっちは天使の湧き水に任せても大丈夫だろう。
「いったい……なんなのあいつは……」
遠くの方でそんな声が聞こえるがきっとリリのことだな。
リリは踊るように華麗に盗賊を蹴りつけ地面に沈めていった。
扉へ向かう途中、子供が入っていた箱が無造作に置いてあった。きっと箱を持ってまで逃げるのは諦めたのだろう。僕が横を素通りしようとすると中から何かうめき声のようなものが聞こえる。
「うっ……」
子供だけを連れて逃げたのかと思ったが、子供ごと置いて逃げたようだ。
「パックさんどうしたんですか?」
「箱の中に子供が入ってるみたいだ。エディ、この子を助けていくよ」
「はい! でも急いだ方がよさそうですよ。だいぶ人数が減ってきてますから」
「わかってる」
箱を開けると中には狐族の女の子が入っていた。
長時間閉じ込められていたせいか、むわっと汗と汚れた臭いがする。それにだいぶ衰弱しているようだ。無理矢理寝かしつけられてずっと箱の中に閉じ込められていたんだろう。
箱からだして回復薬を飲ませてあげる。
こんな小さな子が……早く元凶をどうにかしなければならない。
「もう大丈夫だよ。後はここの救護院が助けてくれるからね」
狐族の子がパチっと目を覚まし辺りを見回して状況を確認してから話しかけてくる。
さすが誘拐されるだけはある。小さいのにかなり落ち着いた子だ。
「お兄ちゃんが助けてくれたの?」
「そうだよ。ここにいれば安全だからね。ここで待ってて」
「ありがとう。でも一人で待つのは嫌」
しっかりはしているようだが、彼女は不安からか手が震え僕の服を掴むと離さない。
こんなところに一人にさせたくはないが……でも、彼女を連れてはいけない。
「大丈夫だよ。ゆっくり目をつぶって。次に起きるときは優しい人たちが助けてくれるからね。おやすみ」
僕は彼女に新しい回復薬の瓶を握らせスリープの魔法をかけて抱きかかえる。。
「よし。行こう」
僕たちは途中で会った天使の湧き水のメンバーになかば強引に子供を預ける。少し敵対されそうだったが意外と物わかりのいい人がいて助かった。
子供を守りたいって気持ちは僕たちも一緒だからね。
扉に着くと、ほぼ同時にリリも扉の前についた。
「パック大丈夫? 外で待っていたら救護院が入って行ったから私たちも入ってきたの」
「大丈夫だよ。来てくれて助かったよ。ありがとう。それよりも急がないとこの先に子供たちがいるはずなんだ」
「うん。急ぎましょ。あっさっきのビキニアーマーの人を抱きしめながら鼻の下を伸ばしていた理由はあとでゆっくり聞かせてね。あの人だけやけに優しく対応してたみたいだから」
「……はい」
リリが満面の笑みでいってくるが、こういう時の笑みはダメな時が多い。
変な誤解をうけたままだと大変だからね。身の潔白を証明しないと。
でも、ここで言い訳をしてもいいことはない。
こういう時はリリの頭が少し冷えてからの方がいいのだ。




