リリとドラの混乱
彼女はリリから剣を突き付けられていても平然とした顔でリリを見ていた。
「ずいぶん余裕みたいね?」
「そう見えるかしら? でも、上の男の子よりもあなたたちで良かったわ。だって単純で簡単そうだもの。こんな風にね」
彼女は一瞬で3本の投矢を放ち、その一本はコクリンさんへと命中する。
リリとドラは近距離からの攻撃を一瞬で判断し避けるが、彼女はそれを見て笑いながらリリたちを侮辱する。
「ハハハッ。あんなのに当たる人もそうだけど。今の避け方なに? 不器用なダンスみたい。やっぱりあなたたちのレベルの低さがわかるわね」
リリたちへの挑発にドラが反応した。
「何を言ってるんだ? リリはかなり強いぞ。それこそドラゴンの首筋に剣を突き付けられるくらいにはな!」
ドラからすれば油断をしていたとはいえ、リリの攻撃をくらいそうになったことがあり、リリの剣技を認めているということだろう。
「ドラありがとう。私もパックには勝てないと思っているけど、でもあなたに負けるつもりはないわ。大人しく降参しなさい。じゃないと本気で怒るわよ」
「あらあら。怒ってしまったならごめんなさい。でも、よっぽどそのドラゴンがアホだったのね。あなたレベルならそこらへんに沢山いるのに。本当に笑えるわ」
「そのドラゴンがアホなわけあるか! お前に何がわかるんだ」
「私レベルが沢山いる……。そう、それなら実際にやってみたらいいんじゃないかしら」
一番先に動いたのはドラだった。
ドラは飛びながら彼女へと突進していく。
ちょっとした挑発のはずだが、ドラはいつもよりも興奮しているようだ。
だが、ドラの攻撃は彼女にかすりともしない。
むしろ見当違いなところへ向かっているようにさえ思える。
リリも同じように彼女へと突進をしていく。
でも、彼女はそれが余裕であることをアピールするかのようにヒラリ、ヒラリとかわしながら口撃を繰り返す。
「やぁねぇ。あなたは彼に好かれたいようだけど、こんな凶暴な女の子じゃ彼もすぐに嫌気がさしてきちゃうわね」
「何を……パックはそんな男じゃないわよ!」
リリは少なからず動揺をしているのか、少し勢いが弱くなってしまった。
ダメだ。リリとの相性最悪だ。
「そこの飛んでるトカゲみたいな羽虫も、さっきから女の子の陰に隠れているばかりでなんの役にも立っていないわね。あなたはいったい何がしたいのかしら?」
「俺だって役に立ってるよ」
「えっ? どこが? かわいくもないし、戦闘ではあなたさっきからほとんど何もしていないじゃない。むしろ彼女の近くをブンブン飛び回っていることで気が散っているようだし」
わざと彼女は視線をリリの方へとむけ、まるでリリが同意をしているかのような口ぶりでいる。
「そっそんなことないわよ! ドラに変なこと言わないで!」
「リリ、なんで今噛んだんだ? もしかして本当は……?」
「ドラまで何を言ってるのよ。ドラがそんなことを言うなんて信じられない。仲間だと思っていたのに」
僕はドラとリリの間に飛び込む。
「二人ともごめん。スリープ」
二人は一瞬で夢の世界へと旅立ち僕は倒れないように二人を抱えこむ。
「私やっぱりあなたのこと嫌いだわ。あっさり仲間も容赦なく眠らせてしまうなんて。これからが見ものだったのに」
「何か特別な調合薬のようなものを使ってるね?」
「フフフッ……あなたには絶対に教えてあげない。だって、私あなたのこと大っ嫌いなんだもん。あなたみたいに何でも手に入ってしまう人を見ていると、あなたの周りから壊してあげたくなっちゃうの。うーん、ゾクゾクしちゃう」
「いいよ。そんなことを言ってられるのは今のうちだから。僕が君を倒す」
「そうね。あなたが非情になれればそれもできるでしょうね。でもね。あなたは私には勝てないの。だって、あなたには守りたいものが沢山あるでしょ? 失うものがある人間は弱いものよ。こんな風にね」
彼女は手をふると、そこから粉のようなものが空中にまかれる。
その粉は一瞬で僕たちをおおっていった。
僕はクリーンの魔法で空気を浄化し、キュアで解毒するが鼻の奥に一瞬刺激臭がする。
「彼女たちを助けるのと、私を追うのあなたならどっちを選ぶかしら? 優しいあなたなら決まっているわよね。さて私はそろそろ撤退させてもらうわね。頑張ってね。早く彼女たちを助けないとあなたのお友達死んでしまうわよ」
「待てっ!」
僕は彼女に向って剣を投げつけるが、彼女は陽炎のように部屋から消えていった。
いつの間にか一階の窓が開いている。
幻覚を見せられていたのか?
あとで、彼女が撒いた粉を調べてみる必要がある。
それよりも今はドラとリリだ。
僕がドラとリリの方を見ると、二人ともただぐっすり眠っているだけだった。
二人は……僕が自分で眠らせたままだった。
特に毒などを受けたわけではなさそうだ。
「騙された!」
彼女が粉を巻いたことと彼女の発言、それに僕への強い刺激でリリとドラに毒の粉が撒かれてしまったと思い込んでいた。
先入観はすてなきゃダメなのに。
僕が窓の外を見るともうすでに彼女の姿は見えなかった。
僕たちは完全に彼女の手のひらで転がされていたようだ。
子供たちをこれから救出へ向かうというのに幸先が悪すぎる。
リリ「パックって時々手段を選ばないわよね?」
パック「そんなことないよ」
リリ(私のこともそれくらいきて熱心にきてくれてもいいんだからね?)
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