盗賊マッシュの告白
「やぁこんにちはマッシュ」
久しぶりに見たマッシュは俺たちを見た瞬間頭を地面にこすりつける。
「どうか、このまま殺してください」
かなり物騒なことを言ってくる。
もちろん、そんなつもりはないのに。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
リリが話しかけただけで身体をビクッとさせる。
「はいっ、なんでしょうか?」
「ラリッサの街に盗みに入ったのを覚えている?」
「はい。覚えています」
「そこから銅像を盗んだと思うんだけど、それはどうしたの?」
「勇者の銅像でしょうか? あれは洞窟の中に置いて来たままになっています」
置いてきたまま……?
確かによく思い出して見ると回収した財宝の中に変な銅像があった気がする。
あれのことだろうか?
「どんな銅像なのかな? 教えてもらえる?」
「はい。変な男が空に向かって折れた剣をかかげて足元にゴブリンがいる銅像です」
うん。確かにそんな感じの銅像があった気がする。
後で確認をしてみよう。
「それで、なんでそれを盗んだの?」
「はい。町長から依頼を受けて盗みました」
「えっ!? 町長から?」
僕とリリは顔を見合わせる。
さすがに、それは予想外のことだった。
「はい。なにか博物館の中の物で欲しいものがあるとかなんとか言ってました。なので他の物は盗まないようにって。別に俺たちは報酬がもらえるなら何でも良かったんでそれ以上詳しいことはきいていないんですけど」
「おいっそれはどういうことだ?」
俺たちの後ろで聞いていた兵士がマッシュに声をかけるが、マッシュは何も答えなかった。
そのままの体勢で小刻みに震えている。
「どういうこと?」
改めてリリが聞くとマッシュは、かぶせ気味で答えてくる。
「はっはい。町長は俺たちと組んでいたんです。町長が襲う村や街の警備情報などを渡すかわりに町長にとって邪魔な人を消したり、金品の一部を渡すなどでお互いに協力をしていました」
どうやら町長は盗賊と繋がっていたらしい。
これで謎は解けた。
だから、あれほどまで盗賊たちが大きくなったのになかなか捕まらなかったわけだ。
町長を捕まえて、領主へ突き出してやるしかない。
ただ、こいつの言うことが信用されるかという問題がある。
「どうやって指示をもらっていたんだ?」
「町長から指示がある場合にはこちらから、ラリッサの街の噴水の北側にある木の枝に紐をくくり付けて置くんです。それを見た町長から連絡がくるようになっています」
「どうやって連絡がくるんだ?」
「ラリッサの街の墓地が今は荒地になっているので日が沈んでからそこで待っていると連絡係がくるようになっていました」
確かに夜の墓地で荒地になっているような場所なら誰も来たりはしない。
来たとしてもヴァンパイアくらいだ。
「ところでお前ここまで話して大丈夫なのか?」
「俺たちは大きくなりすぎて、あの洞窟から去ることになっていたんです。なのでまだ町長は他の土地に移ったと思っているだけで捕まったのは知らないと思いますが、もし捕まったのがわかったら殺されてしまうと思います。でも、それだけの悪いことをしたので仕方がないと思います」
マッシュは顔を上げると心を入れ替えたのかどこか清々しい顔をしている。
「兵士さんマッシュの発言で町長を捕まえられる可能性はどのくらいありますか?」
「そうだな……ほとんどないな。こいつと町長の関係を上層部に証明できればいいが、証拠がない以上知らを切られて終わりだろう」
やっぱり証拠をつきつけてやるしかないようだ。
「マッシュをここから出すことはできないですよね?」
「それは……協力はしてやりたいが難しいだろう。それこそ、それなりに地位のある人が身元の引受人にでもなってくれれば別だけどな」
確かに俺たちではその役は難しそうだ。
「パック、そう言えばラリッサの救護院のトップがここに来ているってノーマンが言っていなかったっけ?」
「あぁ確か回復薬の交渉だか何だかって言ってたな」
ラリッサの救護院は今経済状態がダメになった上に回復薬が高騰したとかでこの街に来ていたはずだ。もし協力ができるなら……。
そういえば……救護院も襲われたと言っていた。
「マッシュ、ラリッサの街の救護院を襲ったのもお前たちだな?」
「はいもちろんです。町長は救護院も自分の配下に置きたかったみたいです。でも今の新しいトップになってから、前の馬鹿のように使えず残念だって言ってました。それで金銭難の救護院を襲うように指示をだされました」
どうやら救護院を潰そうとしたのも町長が絡んでいるらしい。
やはりこのまま放置しておくことはできそうもない。
自分の力を強くするためには手段を選ばないとは。
「兵士さん、マッシュを今この街に来ていると思われるラリッサの救護院トップと会わせたいんですが、それは可能ですか?」
「あぁそれはもちろんだ。それにその人が証人になってくれるならこいつを牢から出すことだってできるだろうよ」
「わかりました。ありがとうございます。リリよし。それじゃ救護院のトップを探して連れてこよう」
「うん」
「マッシュもう一度今の話をしてもらうけど大丈夫か?」
「もちろんです」
僕たちは急いで留置所をでてこの街の救護院を目指した。
できればあまり近づきたくないと思っていたが、こうなってしまっては仕方がない。
たった数日離れていただけなのに救護院はなぜか、非常に懐かしく感じる。
「パックどうする? 緊張しているようだけど中に入るのが嫌なら私が行って話を聞いてくるわよ」
「ありがとうリリ。でも大丈夫だよ。まさかこんなに早く来るとは思ってなかったらか少し緊張しているけど大丈夫だよ」
僕たちが救護院の扉を開けようと近づくと中から怒鳴り声が聞こえてくる。
「だから、こっちも回復薬の数が少なくて回すことはできないんだよ。何回来てもらってもダメだ。帰ってくれ」
目の前で急に扉が開き、中からはボロボロのマントを着た冴えない感じのおじさんが放り出されてきた。おじさんは放り出された勢いで転倒してしまい、お尻を地面にぶつけ、その勢いで後頭部を地面にぶつける。
「イテテッ!」
「大丈夫ですか?」
「あぁ悪いね。空はこんなにも青く綺麗なのになかなか人生は上手くいかないものだ」
おじさんは倒れたまま空を見つめそうつぶやく。
頭を打ってだいぶまいってしまったのだろうか。
なかなか起き上がりそうにない。
僕は手を差し出し起こしてあげる。
「大丈夫ですか?」
「君は優しいんだね。助けてくれてありがとう」
彼が僕の手を取り引き上げると、彼の胸にあるブローチが見えた。
それは救護院のトップを表すブローチだった。
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