独占欲
今回は観月ちゃんヤンデレ回です。
この子は回を重ねるごとに病んでいく‥‥。
「ーーふざけるなぁぁぁぁ!!!」
不意に、彼女の絶叫が聞こえた。
その声に、先程の肩の痛みを思い出し、思わず体を震わせる。
「‥‥なんのよう? 今、君に構っている暇ないんだけど。後にしてくれない? 後でたっぷり構ってあげるから。」
観月を縛っていた縄をほどきながら、どうでもよさげに千尋は言葉を返した。
「‥‥ダメ。」
気がつくと、観月はそう言っていた。
「‥‥? 観月?」
「ダメ‥‥。」
解かれた手で兄の背中に腕をまわす。
兄の肩に顔を埋めて囁いた。
「千尋兄さんに、私以外の人のこと、触って欲しくない‥‥。」
ほんの少しだけ腕に力を込めながら、観月は続ける。
「兄さんが、あの女の人を蹴ったときも、嫌だった。‥‥触られた時も、凄く嫌だった。ーー兄さんにしか、触られたくない。そう、思った。」
恥ずかしくて、満足に喋ることができなかったが、何とか言い切ることが出来たとほうっと息をはく。
‥‥一方の千尋は歓喜だか忍耐だかの狭間で固まってしまっているが。
「な、ん‥‥!?」
目を見開いて、絶句してしまった人吉だが、次の瞬間には再び吼え始める。
「‥‥!! 貴方は知らないみたいだけどね!! その男は貴方のお父さんと、自分の母親を殺しているのよ!?」
その言葉に、千尋は不快そうに眉を上げ、観月は目を見開いた。
「‥‥証拠は?」
至極どうでもよさげに千尋は問いかける。
「貴方が前日に犯人の家を訪ねていることと、彼女の父親の携帯の最後の通話相手が貴方だということは、とっくに調べがついているのよ!!」
「だから、証拠は?」
「‥‥は?」
「俺が義父さん達を殺したという証拠は?」
「なっ‥‥!?」
ないんでしょ?
そう鼻で嗤って千尋は観月に微笑みかける。
「ねえ、観月? 俺とあの女、どっちを信じる?」
頭を撫でられながら観月は目を瞬かせる。
そんなの、決まっている。
「千尋兄さん。」
「!?」
「よかった。」
驚きで息を呑んでいる人吉を見向きもせず、観月は言いきった。
本当に嬉しそうに微笑みながら、千尋は観月を抱きかかえる。
「じゃあ、帰ろうか。いい加減観月もここにいたくないよね?」
「うん。」
「問題は、この女だけど、どうしようか?」
じっと人吉を千尋は睥睨して考える。
人吉が体を恐怖で震わした、その時だった。
「俺に任してくれませんかねぇ? 先輩?」
「‥‥誰?」
怯えながら、でも不思議そうに、観月は首をかしげた。
それを見て、千尋は不快そうに鼻を鳴らした。
「‥‥観月を見ないでくれるかな。狭間君。」
にっこりと、男、狭間新太は微笑んだ。
待ってました新太君!!
個人的に書きやすくて大好きです。




