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レガシークエスト  作者: 鯣烏賊
殺し屋、娑婆に舞い戻る
14/25

死屍累々

「っぷ.....っ!」


「アロ君...大丈夫?無理してない?」


「アロのそれはいつものことだから気にすんな、ベロキ。そいつも慣れてる」


「はいはい、その辺にしといてください。空港、見えてきましたよ」


『バタバタバタバタン!!』


 俺たちを乗せた飛行機が、モンゴルの空港に着地した。

誰も乗っていないガラガラの飛行機は、フラフラとした怖めの運転で無事に任務を終えた。

離陸のときに周りの椅子の背もたれが全部「ガタン!」と起き上がったことと、着地のときに「バタン!」と倒れたことには少し恐怖を覚えたけどね。

それに空調もガッタガタ。さも当たり前かのように機内食は出なかったし、窓も軽く小突いた位で割れてしまいそうだった。

いくらなんでも酷い機体だ。

いや、怒ってないからね、うん。

まあ、エンジンがガソリンじゃなかっただけ良かっただろう。


「ミクロさん、なんでこんな安物の飛行機なんですか?モンゴルにも大手あるでしょ?」


「かさ増し。ウチ結構カツカツなんだぞ?」


 なるほど?

つまり、補助金が沢山出てるから、その補助金を少しでも懐におさめるために大手の信頼できる飛行会社じゃなくて、安いけど信頼は出来ない飛行会社にしたと。

いや、最低じゃん。二つの意味で。

そんなことを考えていると、飛行機の出口が

見えてきた。


 その後は大変だった。

危険物を見つけるために使うゲートをくぐった直後にアロ君が乗り物酔いで脱落。

俺は急いで乗り物酔いで死にかけてるアロ君のために水を買ったり、吐きそうになったアロ君をミクロさんがトイレの個室に連れて行ったり、それでも酔いが覚めなかったアロ君のためにリンさんが酔いに効く薬を....いやいや、アロ君乗り物酔いに弱すぎるでしょ。

そんなことをしていると30分近くが過ぎ、ようやくアロ君が人類らしい二足歩行を取り戻すまで回復したところで、俺たちは町長さんが待っているらしい出口へと向かった。

元々食堂、コンビニ、トイレ、エアポートがひとつある程度のそこまで大きい空港ではなかったこともあって、そこにはすぐに到着した。

だって出入口が正面玄関のひとつしかないんだもん。


「お待ちしておりました」


 出入口から外に出ると、いかにも「偉い人です」という顔をしたご老人が待っていた。

背はあまり高くないし、腰も曲がっている老人たが、高そうな服を着ていたり、装飾の凝った杖を携えていたり、そもそも左右にガードマンがついていたりと格式高く見える。

かれたこえから発せられたその言葉は、予約制の店や宿でよく聞くものだった。

しかし、シャレにならない時間待たせてしまっている事もあってか、俺にはその言葉は随分重たく聞こえる。


「いえいえこちらこそお待たせしました。数日よろしくお願いします」


「そんなお願いするのは私等のほうです、ささ、お荷物はこちらに」


 老人のそんな言葉を合図にしてガードマンが俺たちの荷物を奪い取り、全てを車のトランクに詰める。

老人たち3人と俺たち4人が乗ってもまだすぺーすが余るほどの広い車内に案内され、置く荷物もない寂しさに駆られながら席に着く。

車は音も立てず発進し、中に浮かんで空路を往く。

田舎の小さな空港の上空に辿り着くと、自然に囲まれた街がみえる。


「あそこが目的地です」


 老人が案内をしてくれる。

....いや、近すぎるでしょ。これなら徒歩でも行ける。

いや、本当にあの小さい街が疫病に侵された街だって言うのか...?

パンデミックと聞くと大きな街が思われるけど...いや逆か。

そこまで大きくないからこそ、この短期間で追い込まれたんだ。

広さが広くなければ、会う人も限定されていく。

会う人が限定されていると、相手が感染していたらその感染がどんどん広まっていく。

まあ、仮説だけれど。


 俺たちを乗せた車は少しずつ高度を下げていき、少しずつ地面に近づいていく。

地面に近づいていくと段々街の様子が見えるようになっていき、どんな構造をしてるのか、とかがわかるようになってくる。

......ああ、そういうことか。

病院がひとつしか見えない。

話によれば、疫病にかかった人は数百人単位でいるらしい。

風邪を病院に行こうとしても、キャパシティが足りなくて受診できなかったら?

もしその風邪が今までに知らない、見たこともないような症状だったら?

その風邪の症状がどんどん悪化していって。終いには...。

あまり病気にかかることがない俺でも、試しに怪我に置き換えて考えるだけでも、理解は容易だった。

考えるだけでも、怖い。


 車は地面に降り立ち、ドアが開けられる。

開けられたドアの隙間から日差しが目に向かって襲ってくる。

思わず片目を閉じ、前が見えにくい状態で車から降りる。

もさっとした芝生に足裏がつき、自分が地面に立った事を確認して目を開ける。


「......。」

 

 俺たちは街のはずれにいた。

ガードマンから荷物を受け取り、肩に下げる。

他の3人も荷物を受け取り、そのタイミングでご老人...恐らく町長が声をかけてきた。


「まずは、病院に行っていただきたいです」


「わかりました」


 アロ君が返事をし、俺たちは病院へと足を運び始めた。

ん?なんで病院まで車で行かないのかって?

なんで車をわざわざ街のはずれに停めたのかって?

答えは簡単だ。街を少し歩けば嫌でもわかる。わかりたくないけど。

道中には倒れて動けない人が沢山いるからだ。

彼ら、彼女らを轢いてしまうからだ。

アロ君は毎回嘔吐するので、ミクロはいつも集合時間の30分前に目的地に到着するようにしている。

なお、町長に謝らなくてもいいのかベロキがこのことを知るのはまだ先のこと。

具体的に言うと今夜である。

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