金策と記憶にございません
遅れてごめんなさい(汗)
恐怖に震える心を無理矢理に震え立たせ、眼前にいる怒り狂う特攻鹿を前にして、背中の背嚢に引っかけてておいた通称、ゴブ銃を手に取ると、流れのままに構えて、……撃つ!
頭の角をふり回し、おそろしい早さだが、生憎脚回りには弾丸が通る。
目を瞑りそうになるが伊達で武道をしていた訳ではない。
パンッ!
軽い空気の破裂音がして、何かの金属弾が即座に特攻鹿の大腿部に届けられる。
それと同時に僕は片足を一歩だけ後退させるとその流れのままに体を沈みこませ、脚に蓄積された弾性エネルギーを開放する。
つまり、……突然の攻撃に足を縺れさせて転んだ特攻鹿の体を避ける為に死ぬ気で飛び跳ねた。
……恥ずかしいことだがゴブ銃を撃ったらその後でどうすればいいかを全く考えていなかった。
生物特有の肉が地面に打ちつけられる異音がして転んでしまった哀れなる獲物に対して、近すぎる我が身でどのようにすれば有効な攻撃を加えることができるか。
短槍は手もとから遠く離れた所に転がっている。
刀は近すぎるし抜く時間も惜しい。
ならばどうすればいいか?
簡単だ。
こうすればいい。
とっさの回避で崩れた重心を逆転させて一気果敢に飛びかかる。
そう。
文字通り跳びかかったのだ。
「ふんっ!」
跨げるくらいの鹿にしては小さめの胴体にに着地すると、すぐさま首に腕を回して体を密着される。
足で胴体を挟みこんで振り落とされないようにして、いやいやと振り回す角から逃れる。
腕は気道と頸動脈を絞めているだろうか?
きっと絞めている。
己を信じるのだ。
耳からはどくん!どくん!と生物的な鼓動が聴こえ、気道閉塞によって近づいてくる死の足音に全力で抗わんとがむしゃらにのたうちまわる。
顔の筋肉がひきつるように痛い。
ああ。
僕は今、笑っているのだろう。
骨は軋み筋肉は疲労し全身からは冷たくも宿熱の汗が溢れ出ることを、僕は止めることができない。
いや、止める気も無いのだ。
腹の丹田からは燃え上がる戦意が全身を巡り、頭はまるで熱にうなされるようで、ああ、とても止めることなど、頭の隅にも何処にもない。
「ははッ!」
***
僕は悪くない。
そう。
僭越ながら言わせていただきますが、一言。
「記憶にございません」
そう。
だから僕は何も見ていない。
目の前に泡吹いて痙攣している何かの死骸なんて、そう。
何も見ていないんだよーーーー!!!(魂の叫び)
何なんだ⁉
何なんだよ。これは⁉
え?これ、僕が殺ったの?
信じられない。
……マジでかー。
疲労はこの鹿がアドレナリンかエンドルフィン辺りと引き換えて持っていってくれたらしい。
やけに夜目がきくし体の痛みもさして感じなくなっている。
脳内快楽物質様様、と言ったところだろうが、こんな状態は長続きしない。
何故ならば常に100%の馬力を出せるエンジンが無いのと同じように、常に100%の人力を出せる人間もいないからだ。
例えば超記憶。
まあ、瞬間記憶能力とか云われているあれだが、常人よりも長い睡眠時間。
恒常的な頭痛やホルモンバランスの乱れに、何より先天的なものだから、おしめを替えてもらっていた時や痛かった中2辺りの記憶が消えて抹消出来なかったり、途にも画にも忘れることができないのだ。
例えばギフテッドマン。
その定義は定かではないものの、先天的に特定分野優れた能力を持つ人たちのことだ。
彼らは人と違う事に疑問を抱き、苦しむ事が多いそうだ。
また、ギフテッドマンとは違うけど、サヴァン症候群や精神疾患というのもあるだろう。
因みに、これらの症候群は能の一部分が発達できず、かわりに脳の別部位が発達するものだそうで、首都にあるオーバーライド装置という脳に記憶を転写する技術を流用して後天的になることができる。
ただし、今現在では修復不可能なロストテクノロジーなので、使うにはすごくえらい人達から許可を貰わなければ使えない。
見てみたいとは思うけど、脳を弄られるのは何だかなー。
と、あんまり使った人はいないそうだ。
残念過ぎる超技術である。
そして現実に立ち帰る訳だが、……
記憶にございません。
よし。
これで僕は何も知らない。
ゴブ達のテリトリーからはまだ出てないはずだから、脳内麻薬が出ているうちに、東門までスタこらさっさ、と逃げましょう。
そうしましょう。
***
「ギギッ(お、肉が転がってる。ラッキー!)」
「ギャ(やめとけ。ブービートラップでもあったらどうするんだ)」
「ギギー!(お前!そんな事言って、あとで一人占めする気だろ‼)」
朴ッ!
「グギャー!?(死ぬー)」
ゴブ、約1匹の戦力低下。
重要なお知らせ。
大変申し訳ありません。
ストーリー的矛盾。
キャラの性格性。
感情移入や意外性。
その他もろもろの問題から、ここで更新をストップさせていただきます。
また、同じ世界観で新しく連載させていただきますので、その際は読んでいただけると幸いです。




